オンラインコミュニティを開設、さらなるサポートの充実へ
2014年4月に日本法人を立ち上げたマルケトは、ユーザーコミュニティーの活性化に注力している。昨年8月、12月に続き、第3回となるユーザー会をこのほど開催した。会場は、ユーザー会の幹事企業に加わったウイングアーク1stのセミナールーム。
これまで、ユーザー会の幹事はトレジャーデータ1社が務めていたが、ユーザー会のメンバーが150名を超える規模へと伸長している状況を受け、グロービス、ビズリーチ、ウイングアーク1stの3社が新たに幹事に加わった。トレジャーデータの堀内健后氏はユーザー会冒頭、「今後は分科会などを設置して、マルケトと相談しながら、より各社の課題に合わせた情報交換をしていきたい」と語り、コミュニティの充実を印象付けた。
続いてマルケトの福田康隆代表取締役社長より、直近の動きが紹介された。現在、マルケトの国内導入企業は130社強。事業拡大に伴い、東京本社を六本木ヒルズへ移転、また大阪支社も立ち上げた。人員面でもカスタマーサポートの体制を充実させ、さらには「日本製品との連携を進める上でずっと探していた」(福田氏)という、開発に直結するプロダクトマネージャーの参画を発表した。
福田氏によると、今後はマルケト東京本社にて、コンサルタントによる事例紹介や質問会を毎月開催する予定。500社近い連携パートナーのソリューション紹介にも注力していく。「ご要望が多かった技術資料の日本語化は、急ピッチで進めています。オンラインコミュニティも開設しましたので、ぜひ積極的に参加いただければ」と期待が語られた。
製品面では、同社の三橋秀太氏より、数ある新機能のなかから特徴的な2点が紹介された。ひとつはコーポレートブランディングの観点で役に立つ、「ガイド型ランディングページ」。従来提供していたランディングページのテンプレートは自由度が高いが故に、実運用に際してレイアウト崩れ等の問題が発生していた。今回提供されたものは、ある程度の制限が可能でかつ、フルレスポンシブ対応となっている。2つ目は、より精緻なセグメントをユーザー自ら行える「カスタムオブジェクト」だ。こちらは10月にリリース予定だという。
5部門が参画、アンリツのMA導入プロジェクト
続いて、進行はユーザー会のメインコンテンツである事例紹介へ。1社目には、グローバルで電子機器や関連ソリューションを提供するBtoB企業のアンリツから、マーケティングコミュニケーションを担う駒井寛氏と高橋千明氏が登壇した。
海外市場での売上が全体の70%を占める同社では、米国拠点を主体として、2012年ごろにマーケティングオートメーション(以下、MA)ツールを導入。日本でもその流れで導入し、しばらくはグローバルでの一括ライセンスによる活用が続いたが、今春になって地域ごとの最適化などの面から日本独自の選択が可能になったという。
「受注へ直結するために最適なツールを選びたい。その観点で、すでに使っていたCRMとの親和性と、直感的に使える操作性、そして価格が決め手となってマルケトを採択しました」と駒井氏は語る。
MA導入プロジェクトには、マーケティングコミュニケーションに加えてインサイドセールス、営業、営業戦略、そしてITの計5部門が参画。営業本部長をリーダーとし、さらにパートナー企業も加わってチームが編成された。「各部門が達成したい項目を整理して、ゴールを『MAツールを活用して国内マーケティング・営業活動の新たな業務モデルを確立、早期に成果を上げること』としました」(駒井氏)。
インサイドセールス、営業へのリード展開に効果
手始めに、4月に出展した展示会の来場者へのメール配信から、マルケトの活用を開始した。マーケティングからインサイドセールスおよび営業でのフォローへとつなげると同時に、この展示会を皮切りに既存の特定分野のお客様を含めたナーチャリングを行った。
現場を担当した高橋氏は、「最初なので他の環境との同期などに多少の複雑さがありましたが、既存のメルマガ会員と顧客データベースの統合によって、定期接触可能な配信数が1.7倍になりました。今回得た改善点を反映させながら、今後はリードナーチャリングを活用することで、よりよい結果を得られるのではと考えています」と話す。
インサイドセールス、そして営業部門へも、これまでより多くのMQL(Marketing Qualified Lead:マーケティング活動によって創出された案件)をお客様の興味がある分野を絞り込んだ形で引き継ぐことで営業効率の向上につながっているという。単純に電話をかけるのではなく、やはり人の目でお客様が興味をもつ分野などを確認してから話をする方が、より効果が上がるそうだ。
駒井氏はマルケト導入について、部門横断的にプロジェクトチームを編成したこと、またパートナー企業の存在も大きかったと語る。「今後、マーケティングコミュニケーションではコンテンツや施策の効果測定を実施し、全体での成果の拡大へつなげたいですね」駒井氏は今後のマルケト活用に意欲を見せる。
IT投資により3年で売上が3倍に、クレストのマルケト活用
次に登壇したのは、クレストの取締役執行責任者 永井俊輔氏。同社は屋外広告の制作やショーウィンドウのVMD(Visual Merchan Dising)といったサイン&ディスプレイのBtoB事業を展開する傍ら、数年前からガーデニングショップ「IN NATURAL」を展開、BtoC事業にも乗り出している。
名立たるアパレル企業をはじめ、サイン&ディスプレイ事業のクライアントは4000社を超えるが、近年の売上は約10億円で横ばいを続けていた。そこで2012年、IT投資の一貫としてセールスフォースを導入。すると同年の売上は15億円、2014年には24億円と急激に伸長した。「ただ、このまま右肩上がりが続くとも思えなかった」と永井氏。そこでこの伸びを継続させるため、2014年にマルケトを導入し、早くも今年は31億円の売上見込みだという。
「当社は全体で100人弱の企業で、インサイドセールスのような概念や部署はありません。マルケト導入以前は、見込み客リストの上から順に営業がどんどん電話し、アポが取れれば商談、見積もり、受注へとつなげる昔ながらのスタイルでした。それがマルケトを導入し、コールドコールの前にマーケティングするというプロセスが加わったことで、効率が大幅に改善しました。見込み客への電話件数は4割減り、かつ最終的には高確率で受注できるようになったのです」(永井氏)。
リーチ率・成約率が急上昇、その秘訣とは
マルケトを活用したクレストのマーケティング活動は、「それまではLPの概念も知らなかった」(永井氏)という状況からは想像もつかないほど徹底的に行われている。まず、自社サイトを整備しブログを開設。これらへのタグ埋め込みによるサイト訪問、メルマガのリンクのクリック、YouTubeにアップしている商品動画の閲覧など、特定済みリードのあらゆる行動を捉え、営業へ逐一アラートが飛ぶようにした。
顧客の側からすると、ちょうど商品情報を見ているタイミングで営業から電話がかかってくるわけだ。当然、アポも取りやすい。さらに永井氏は、独自の手法を開発している。例えば「Hot D2D」は、Hot ドアtoドア。「要は『立ち寄れるなら電話ではなく即訪問しろ』と(笑)。この手法も効率が良く、実際に受注につながっています」(永井氏)。
ほかにも、特定商材に興味があると分かった顧客にそのサンプルを送り、割引クーポンを得られるLPのアドレスを添えておく「OtoOtoO」——オンラインからオフライン、さらにオンラインへとつなげる手法も奏功している。
マルケトを導入して、営業部門からは「どんなパターンのカスタマージャーニーも手のうちにある。最高の環境」といった声が聞かれ、同部門長は「売上をあげられないのは努力が足りないといった精神論から一転、効率重視の科学的なマネジメントが可能になった」と手応えを得ているそうだ。「今後はBtoCのガーデニング事業へも応用したい」と永井氏は展望を語った。
マルケト連携ソリューション、続々登場
ユーザー会の最終パートでは、冒頭で福田氏が注力事項として語った、パートナー企業のソリューションが紹介された。
マルケトユーザーでもあるウイングアーク1stは、帳簿ツールやBIツールの領域で国内シェアNo.1を誇る。同社のBIダッシュボード「モーションボードクラウド」は、マルケトとの連携を標準搭載しており、分析した結果を可視化し分かりやすくレポートすることが可能だ。「現在、マルケトユーザーに使いやすいテンプレートを開発中です。ユーザーコミュニティーからのフィードバックを元に、継続的に改善していく予定です」と、同社 石橋史啓氏。
また、リターゲティング広告のプラットフォームを展開するAdRollは、8月下旬にマルケトとの直接連携を発表したばかり。マルケトからAdRollのダッシュボードへログインし、マルケトに蓄積した顧客データを使ってROIの高いキャンペーンを展開することが可能になった。
リターゲティングは、一度接触した顧客や興味が顕在化したユーザーへのアプローチと思われがちだ。しかしAdRollでは、同社が世界規模で有する10億ものプロファイルデータを活用して、ターゲットを拡張することができ、新規顧客の発掘も行える。同社中村晃氏は「ユーザーの関心度に合わせて最適なメッセージを訴求する、フルファネルでの広告展開が実現できます。iAdやFacebook広告との連携も、ぜひ活用いただければ」と強調した。
半日に及んだ充実のユーザー会。セミナーパートの後は、懇親会で活発な情報交換が行われた。2回目のユーザー会にて「最も重要な事はユーザーコミュニティーの成長と活性化」と福田氏が語った通り、オンライン/オフラインでの知見共有が可能となり、着実にコミュニティーの広がりが生まれつつある。今後、マルケトおよびユーザーコミュニティーがどのような展開を見せるのか。これからの動向に期待の高まるイベントとなった。