理解を促し需要を高めるためのデジタル活用

濱野:認知とアウェアネスは同じように捉えられがちですが、知るだけなのか、理解して需要が高まるかという違いがあります。知るだけならテレビで十分ですがアウェアネスの部分、深い情報や利用シーンの提案はWebのほうが強いですね。
深田:メーカーの担当者と話していると、テレビCMをしないと店舗の棚が取れない。この点に対し、デジタルメディアはどう貢献できるのか。という悩みを聞きます。デジタルメディアができることはあるのでしょうか。
濱野:例えば、レシピサービスのトレンド分析の結果を踏まえて、メーカーに店舗の棚作り提案をする事例が存在します。テレビは知るきっかけに過ぎず、ユーザーの需要がわかる強いタッチポイントはデジタルであり、かつ現場に活かせる例といえます。テレビは消費者のことを知らないけれど、デジタルメディアはユーザのことをデータで知っている。データから購買の理由が分かれば、必要なマーケティングの方法論もわかってきますよね。
深田:見られなくなっているテレビよりも、見られているデジタルメディアで、どういった文脈で作るか、という話ですよね。楽天さんでは、楽天レシピでカテゴリマスを持っていますがそこも狙っているのでしょうか。
濱野:調味料を売るときに、調味料の説明をいくらしても意味がなくて、興味がある人に料理の完成形、使い方を情報として提供するといったことですね。ただ、調味料のブランドサイトはユーザーがわざわざ見に行かないので、タッチポイントになりにくい。ユーザーが集まる楽天レシピのようなメディアに情報を置く必要がありますね。
情報の伝達には漫画コンテンツも有効
深田:メーカーが自社サイトでユーザーに向けた情報を出せていない、という課題もあるように感じます。どうすれば情報は届けられるとお考えですか。
濱野:少しアプローチが異なりますが、人に伝える手段として漫画の力が大きいと思っています。楽天では通勤電車で読める「漫画ニュース」というサービスを2年前から提供しています。これは通勤電車での閲覧というタッチポイントを意識していて、時事ネタとか過去の恐怖の事件簿を漫画にして毎日更新しているんですよ。
深田:書きおろしで毎日更新ですか? それはすごいですね。
濱野:先日は「おにぎりダイエット」がテーマの漫画が公開されていて、なぜおにぎりがいいのか、ひたすた語られていました。それを読んだらもうランチはおにぎりしかないな、という気になってしまいました(笑)。漫画は気軽に読める上に、態度変容を起こしやすいわけです。この実績から、楽天スーパセールの紹介や楽天の部署の紹介にも漫画を取り入れはじめました。

深田:個人的に、楽天さんはメディア作りにフォーカスがあるようには思っていなかったのですが、非常にこだわったメディア作りをされていますね。
濱野:そうですね。楽天マーケティングがどうありたいのかを議論する機会があったのですが、目指すべき姿のひとつにメディアカンパニーが挙がりました。ユーザーからは、楽天市場がコンテンツだとは思われないかもしれません。ですが、店舗一つひとつに目を向けると、お店が商品の情報を工夫して掲載している。どの情報をどこにレイアウトするか考えるということは、コンテンツ作りをしているに等しいですよね。ですから楽天は情報の流通となるプラットフォームであり、メディアカンパニーといえるのです。