次世代メディアに必要とされる「人・モノ・金」とは?
こうしたメディアの活動を支えるために、マネタイズはどのようになっているのか。新井氏は近年の動向として「ネイティブアドやスポンサード型の広告が収益全体の25%程度にまでなってきている」と紹介する。
ネイティブアドやスポンサード型の広告は、広告色の強いタイアップ記事とは一線を画し、編集性が高く情報としてのコンテンツ価値を高めた広告だという。メディアとしてのブランド力と編集力という強みを活かせる商品として期待されている。
「読者はWIREDから見てその製品・サービスを取り巻く世界がどう見えるのか、そこに興味を持っている。それがメディアとしてのブランドへの信頼につながっていく」と新井氏は解説する。
そこに明確な線引きを行っているのが「東洋経済オンライン」だ。広告記事は編集部ではなく広告部で作成する。その理由を山田氏は「報道としての中立性を担保するため」と語る。
さらに「記事広告が増えていくことは必然」としながらも、個人的には「まずは純広告」のスタンスは守っていくという。純広告の利益率が高いことに加え、「製品や広告のための制作」ではなく、「報道のための制作」の比重を高める必要があるからだ。広告記事のスペースを設け、埋めることが目的化するのでは本末転倒にもなりかねない。
こうした広告におけるマネタイズモデルや、出店型のような運営形態など、メディアは様々に形を変え、試行錯誤を行う“過渡期”にあるように思われる。そんな時代に必要な人材とは、どのような能力を持った人材なのか。

求められる人材像
新井氏は「フェーズによって異なる」としながら、自身の経験から立ち上げから現在に至るまでの組織強化の道のりを紹介。「稼げないとコストがかさんでいくだけ」との判断から、まず最初はセールス部門を強化した。
次に強化したのが、ブレーンの役目となるWebディレクター。「開発は外部に協力を仰ぐことができるが、要件定義をまとめ、社内調整をして、プロジェクトをリードできる人材は社内の人間でないとできない」(新井氏)。同時に、エディターやデザイナーなど制作部隊も充実させ、近年ではデータアナリストやSEO、モバイル、ソーシャルなどのスペシャリストを加えていったという。
さらに「スタート時からマーケティングのスキルや知識を持ち、ビジネスセンスがある人を探している。現在もさらなる強化が課題だ」(新井氏)と語り、メディア経験だけでなくWebディレクターやセールスなどを経て、さらにデジタルマーケティングの知識があるなど多様性のあるバックグラウンドを持つ人材が望ましいという。
山田氏も「個別のスキルよりも本来備わっている地頭のよさ」としながら、「斜陽と呼ばれる業界にあって、むしろ人材が引き抜かれる傾向にある。自分たち自身がメディアの存在価値とそこに関わる面白さを発信していくことで、面白い仕事だということを知らせていくことが必要」と語った。それを受けて、新井氏は「飛び立っていった人が、新たな経験を持って再び戻ってきてもらえる組織づくりも大切」と、人材流動による活性化を是とした。
最後に今後のメディアの在り方として、山田氏は、「PVは利益の源泉で、人が集まることには価値がある。PVをディスるのではなく、釣りによる集客を愚行と認識すべき」と語り、「誠実な仕事でいいメディアを作って人を集める。その上で、前述のプラットフォームの出店モデルも含めて、2億PVを目標に継続的に読者がたくさん集まるメディアにしたい」と今後の展望を語った。
一方、新井氏は「誤解を恐れずに言うのなら、日本のデジタルメディアはまだ発展途上の段階」と強調。インターネット広告市場の推移を見ても成長市場なのは間違いないが、「海外のスピード感と比べると今一歩」とした。「様々な情報を交換し合い、全体的に業界をアップデートしていく必要があると思う。その上で、コンデナスト自身の成長はもちろんだが、業界全体でともに成長していきたい」と意欲を語った。