オートメーション=自動化とはどこまでを指すのか
MarkeZine編集部(以下、MZ):前回は、設計や運用の難しいマーケティングオートメーション(以下、MA)ツールを活用するための注意点をお話しいただきました。では、MAの“オートメーション=自動化”とは何なのでしょうか。また、その本質はどこにあるのでしょうか。
安部:“オートメーション”と呼ばれつつも、メールマーケティングのツールとあまり変わらないと感じる方もいるかと思います。いわゆるステップメールのように、文章のパターンを多く用意し、開封したかどうかを見ることができるのは一緒かと思います。現在のMAツールと呼ばれているものは、そこから行動のトラッキングをとることで、顧客の行動を全て定量化=スコアリングし、顧客の行動に応じた施策展開を自動化させていくことを可能にしました。しかし、メール文章やシナリオなどを設計するのは人間なので、その部分は真の意味での“自動化”とはいえないわけです。
究極の自動化を実現しようとした場合、私は人工知能(以下、AI)のサポートが不可欠になってくると考えています。AIにあらゆるデータを解析させることで、「どのようなユーザーにどのような内容のメールを送れば反応率が高まるか」が明らかになります。このようにして導きだされた示唆からメールを生成して送れば、完全なオートメーション化が実現するのです。現在、当社でも早い段階からAIの研究開発に取り組み、「B→Dash」にも機能の一部として搭載しています。(関連記事はこちら)
ツールやデータの分断が生むジレンマ
MZ:人工知能が作業のサポートをしてくれることで、マーケターの負担削減にもつながりそうですね。また現状、顧客管理ならCRM、販促集客ならMAと、ツールが分断されていることも問題なのではと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。
安部:そうですね。分断されたフェーズのそれぞれの最適化が、必ずしも収益の最大化につながらないところが、マーケティングの難しいところです。仮にWEB解析とMAとSFA(営業支援システム)が分断されている場合、まず集客管理をしているマーケターは、WEB解析でいかにCPA(1獲得当たりの単価)を抑えてコンバージョン、ここではリード獲得数を増やすかに注力します。
次に販促・CRMでは獲得したリードをMAで育成(ナーチャリング)し、営業にできるだけ沢山の受注確度の高いリードを送る。そして営業は、送られてきたリードをSFAで進捗管理しながら多くの受注が取れるよう頑張ります。しかし、CPAの低い多くのリードは見込み確度の高いリードといえるのかどうかが今大きな課題となっています。
MZ:具体的にはどういうことですか。
安部:例えば人材紹介会社が、低CPAで登録者をいっぱい増やしたとしても、その登録者の80%が70歳以上の高齢者だったりすると、営業であるキャリアカウンセラーはその全員をクライアントに紹介できないですよね。しかし、マーケターがCPAとコンバージョンだけ追っていると、こういうことも起こり得るわけです。もちろん、前回も話しましたが、MAも営業や数字のことをわかっていないと、良いリードは送れません。(関連記事はこちら)
つまり、CPAの低減を追い求めるあまり、収益につながらない見込み客の獲得ばかりすることで、収益につながらない見込み客の育成や管理が発生してしまうのです。CPA至上主義は、収益を最も効率的に高められるプロセスや方策を見落としてしまう危険性を孕んでいます。
このような教訓から学べることは、CPAはどんなに高くても、受注率が格段に高いリードを提供できるのであれば良いということです。例えば平均CPAが15,000円のところ、あるチャネルのCPAが10万円かかるとします。でも受注率は通常の5倍あって、かつROI(投資対効果)もはるかに高かった場合、喜んで10万円払うというのが経営者の気持ちです。
つまり、こういったマーケティングの集客担当と、CRMのMA担当と、営業担当が分けられているために起こるジレンマや、ツール・ベンダー・データがそれぞれ断絶されているゆえに発生する問題を起こさないためには、一気通貫でマーケティングプラットフォームを構築することが重要になります。