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枠売り広告マンに価値はない/代理店はCRM領域へ踏み込めるか【加藤公一レオx有園対談】


枠売り広告マンに価値はない

有園:レオさんの得意分野からずれるかもしれませんが、私はDMPの導入コンサルのようなことに何件か携わったことがあります。それも結局のところはCRMです。DMPとCRMが合体してくる。そこの領域は、専業の代理店も総合の代理店もできていません。細かいリターゲティングぐらいしかできないので、もっとその領域辺に入ってきたほうがいいと思っています。クライアントのLTVの向上を成功させれば、代理店も売り上げが上がりますし。

レオ:そうですね。またクライアント側も、ネットで成功したいなら、最低でも広告代理店に「クリエイティブ」を作らせ、メールをベースとした「CRMプログラム」を作らせること。むしろ通販会社はクリエイティブやCRMを提案しない広告代理店は出入り禁止にするべき。媒体のみを買ってあげるなんて、広告代理店に楽をさせすぎ。枠売り広告マンに価値はない。甘やかしたらあかんで~!

有園:総合代理店の中には、レオさんのことをあんまり好きじゃない人もいると思うんですが、見習ったほうがいいと思うんです。CRM領域に入っていくことはDMPと絡んできているし。

レオ:総合代理店にいたからわかるんですが、それって総合代理店ではやっぱり難しいんですよ。総合代理店って通販だけじゃないので。僕は昔から総合代理店の現場にいたけど、営業マンもクリエイターもアバブ・ザ・ライン(above-the-line)の話しかしない。「テレビCMがこうで」「このコンペがこうで」みたいな話しかしないじゃないですか。一番大事なポップとかチラシとかは「ちょっとそこら辺の制作会社に投げておいて」みたいな。

 結局、華やかで派手な部分にだけ力を入れて、一番重要であるビロー・ザ・ライン(below-the-line)の実際のコンタクトのところはおざなりです。その腐った文化がいまだに、このネット時代でもつながっているんです。「ブラパネを売っとけばいい」みたいなね。フォローメールなどCRMなんかしてられるかみたい話。そういう発想だからCRM領域までいかないんです。

すべてをA/Bテストすることで、勝ちクリエイティブが見えてくる

有園:「総合代理店は華やかな部分にだけ力を入れる」という話で思ったのですが、カンヌとかで賞を取るようなクリエイティブを狙っている人に発注するなという話をレオさんご自身もよくされます。僕は総合代理店の近くで仕事をしているので言い難いところではあるんですが、ぶっちゃけ「これはどうかな」って思うクリエイターがいるのも事実ですよね。

 僕は一番長くやっていたのがリスティング広告で、いわゆるタイトル・アンド・ディスクリプション(Title and Description)を自分なりに要素分解していました。たとえば、「ネット限定」「夏限定」「無料で」というように分解して、「ネット限定」「夏限定」と広告文に入れた時と入れてない時で、CTRとCVRがどのぐらい違うかというテストをやっていました。「広告文の要素分解分析」と呼んでいましたが。

 そうすると、CTRは上がるけどCVRはそんなに上がらない言葉が出てくるんですよ。具体的には、「無料」という言葉がCTRは上がるけれども、CVRはそんなに上がらないケースが多い。一方で、「ネット限定」「夏限定」といった言葉は、CTRも上がるしCVRも比較的上がることがあったりします。なので、CTRが上がるものとCVRが上がるもの、この2つをうまく組み合わせて広告文を作ると一番効果が出やすい。この話とレオさんがよく言っている、コピーとか写真とかデザインとかを要素に分けてA/Bテストしていくというのは似ていると思っています。この要素分解分析は、バナーとかで全部やっているんですか?

レオ:バナーだけでなく、LPからフォローメールまで全て要素分解してやります。

有園:その発想が同じだなと思って。「あ、なんか共感する」と思ったのが、そこだったんです。この人、僕と同じ発想でやっていると。CTRが高い要素とCVRが高い要素を組み合わせると、結果的に良いものができると話しても、やったことがない人には「そうだっけ?」みたいな反応をされることがあります。

レオ:うちの発想は、一要素ずつ分解していって、それをA/Bテストしていく。キャッチコピーだけのテストを1週目とかにヤフーで使ってやってみて、次に写真をやって、それからデザイン要素をやって、ガッチャンコ。

有園:これを話すと・・・・・・。

レオ:ミーハーなクリエイターは嫌いますよね。

有園:やっぱり嫌いますよね。そんな簡単なもんじゃないだろうって。僕も言われましたもん。広告文を分解して組み合わせて。日本語として不自然でなければ、それでいいと言うと、コピーライターから「いや、そんなもんじゃない」と。

レオ:ネットの気持ちのいいところは「わかりました、テストしましょう」っていうところ。「あなたが作ったやつと僕が作ったやつで勝負しましょう」と。そしたら面白いですよ。3~4倍ぐらい勝つんです。所詮、クリエイティブなんて掛け算。ネットだけでなく、オフラインも含めて、クリエイティブも所詮そんなもんです。一番強いやつをガッチャンコしたら一番良くなる。それってキレイ事ではないんです。

有園:基本、僕は9割5分ぐらい賛成なんですが、電通・博報堂と付き合っていると、5%ぐらいはすごいクリエイターがいます。人の心を動かして、売上にもつながるキャンペーンのクリエイティブを作っちゃう人。そういう人たちって、A/Bテストはやってないじゃないですか。

レオ:でもね、そういう人たちも、きっと頭の中で、どっかでA/Bテストしていると思うんです。経験の中でいろいろな引き出しがあって、我々のやっているようなA/Bテストじゃないけど、自分の才覚で過去の経験則で良かったのを少し足し合わせているような気がするんです。

有園:たしかに、経験値や感性、世の中の情報を集める嗅覚みたいなものがあって、その人の頭の中で計算されたものが出てくるんだと思っています。A/Bテストに頼らなくても、すごく売れるクリエイティブ、人の心を動かせるものを作れる人がいるんだなと。

レオ:僕もそう思っています。

有園:レオさんは天才肌なのかもしれませんが、僕みたいな人間は、要素で分解して一生懸命テストをしています。

レオ:それは僕もまったく一緒です。

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良いクリエイティブの定義とは?

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/11 20:18 https://markezine.jp/article/detail/23541

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