機械学習でレアル・マドリードのチケット額を予想
さらに、最近注目が高まっている機械学習と組み合わせた、高度なサービス開発の事例も増えているという。たとえばスペインのサッカークラブ、レアル・マドリードでは、価格が変動するチケットの価格予測サービスを提供。App ServiceとAzure上の機械学習ソリューション「Azure Machine Learning」を活用し、精度の高い予測をユーザーに提示することで、チケットの購買促進につなげている。当然、このサービスもモバイルアプリ、Webの両方で利用できる。
ここまで紹介した事例はいずれも、クライアントやエージェンシー内の担当者が必ずしもITに習熟しているわけではない。新規サイトを立ち上げる場合はいくつかのアイコンをクリックし、サイト名およびURLを入れれば10秒ほどで完了する。各種のコンテンツマネジメントシステムもあらかじめ搭載しているので、いくつかの中から選択すればいいだけだ。Azure自体の管理画面のUIが極めて分かりやすいため、「実現したいこと」をそのまま直感的に構築できるようになっている。
また、外部サービスとの連携も充実している。例えば他社のCRMで顧客データを管理している旅行会社で、「出張のチケットを予約した一部の顧客にプッシュ通知をモバイルへ送りたい」といった場合でも、管理画面での簡単な操作で仕組みをつくることができる。
専門知識がなくとも構築できる領域に
「これは、裏側の仕組みとしては割と複雑です。当社とはまったく別の企業のデータベースとセキュアに結び、そこから選択的に情報を得てAzureの新規コンポーネントへ移し、プッシュ通知を実装する。そういった“割と複雑”なことを、ITの専門外のあらゆる人が簡単に組み立てられるようにしています」。
直近では、簡単にアプリを作成できる機能「PowerApps」を使ってApp Serviceを利用したワークフローを作成できるようになった。PowerAppsとApp Serviceを組み合わせることで、前述の保守管理システムや社員向けの勤怠管理システムなどをこれまでより相対的に簡単にアプリ化することが可能になった。
マーケターはもちろん、事業部門、あるいは人事・総務など管理部門の担当者も、直感的にシステムやアプリを構築できる。河野氏は「システム構築といった裏側のことは気にせずに、その分ビジネスのアイデアやコンテンツの考案に時間を割いていただきたいですね。Azureは、裏側にごく自然に存在するサービスになっていくと思います」と話す。
今後は、AzureのDMPとして活用する動きも広がりそうだ。マイクロソフトが10年以上にわたり蓄積している分析ノウハウを反映した機能「Power BI」を通して、データドリブンマーケティングを展開する企業も増えているという。
データ量が多いほど、機械学習の精度も高まる。「データ分析のプラットフォームとしても、Azureはこれからさらに発展すると感じています」と河野氏。今回紹介した事例以外にも、ますます多様な領域での活用が見込まれる。