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Makuakeに聞く、マーケティングツールとしてのクラウドファンディングの可能性

マーケティングツールとしてのクラウドファンディング

MZ:お話を聞いていると、資金調達にとどまらないメリットがたくさんありそうですね。

坊垣 そのひとつが支援してくれる人のデータだと思うのですが、Makuakeでは、サポーターの居住地、年代、男女比、職業などのデータがとれるので、どういう人たちが支援しているのかを見れば、その後にプロモーションする先も見えてくると思うんです。思ったより女性が多く支援しているのであれば、女性向けの見せ方も必要ですし、飲食店ならメニューやお酒も女性向けのものを置いてみようとか。本当にリアルなマーケティングデータ。しかも、お金を出している人たちなので。

従来のマーケティングリサーチではグループインタビューやアンケートを使いますが、どうしても実態と乖離する部分があると思います。クラウドファンディングの場合、本当にこのお店に行きたいからお金を出している人たち、このモノがほしいからお金を出している人たちですから、その人たちの属性データは重要ですし、実際のターゲット層にかなり近いと思います。

MZ:プロモーションに関してはどうでしょう。成功したプロジェクトのページを見てみると、かなり多くの「いいね!」が付いていますね。

坊垣 サイバーエージェントグループは「Ameba」をはじめとしたメディアを運営しています。こうしたメディアを通じて集客を行うことで、より多くのネットユーザーにプロジェクトを知ってもらうことができるのもMakuakeの特徴です。

MZ:「まずは知ってほしい」というニーズにも応えられると。

坊垣 名古屋の木材を扱う企業が作っている「曲がる木のシステム手帳」という製品がありまして、木なんですがよく曲がるんです(笑)。その企業が持っている独自の技術を活かして手帳を作っている。でも地方の会社で実績がないと、なかなかお店で扱ってもらえないし、プロモーションもどうしたらいいのか……みたいな感じだったりするんですね。

こういう会社がクラウドファンディングを利用する場合、もともとBtoBで展開していたけれど、その技術をBtoCで展開したいというご相談も多いんです。商品を作ってみたけれどビジネススキームが違うのでプロモーションがわからない。そういう場合にMakuakeを使うことで、立ち上げがスムースになるという例ですね。

MZ:こうなると、本当のマーケティング支援ですよね。

坊垣 もともと、Makuakeを始める前から描いていたコンセプトなのですが、より広くインターネットを通してお金を集めていくことを考えると、その過程で多くの人に伝えていくことが必要になります。今までのお金の集め方と違って、一人ひとりが出す金額は小さいけれどもたくさんの人からお金をもらうという流れになるので、たくさんの接触ポイントができる。その人たちの声をひろうということが可能になる。それが、実際に成功事例として見えてくるようになったのだと思います。

地方自治体や金融機関とも連携

MZ:そのほかにも、注目のプロジェクトはありますか。

坊垣 地方創生の文脈で多方面から注目されていて、2015年度のグッドデザイン賞をしている秋田の古民家を再生させるプロジェクトがあります。それだけだとよくある話だと思うのですが、これは年貢(=支援金)を納めれば、リターンとしての称号「村民」が与えられる。そこにいる人が村民なんじゃなくて、県外の人も村民になれる。その人たちが来てくれるようなコミュニティをつくればいいよねという考え方なんです。ユニークなコンセプトと打ち出し方で大成功したプロジェクトです。

金融機関でも、クラウドファンディングで結果を出しているところには積極的に融資や連携をする動きがあり、地銀をはじめとしてMakuakeにご相談いただくことが増えています。城北信用金庫とは現在「NACORD(ナコード)」というプロジェクトを立ち上げていて、ほかにもいくつかの事例が生まれています。実際にお会いした銀行の方々は皆さんすごく興味をお持ちですし、説明するとすぐにわかっていただけるのはさすがだなと思います。

いま必要なのは「失敗できる場所」かもしれない

MZ:クラウドファンディングを活用する人や業界がどんどん広がっていますね。

坊垣 いまは消費者の声も強いですし、モノをつくる側や新しいサービスを提供する側のハードルが高い状況だと思います。そんな中でクラウドファンディングは「失敗できる場所」になれるし、うまくいけばそれが足ががりになる。今日お話ししたようにそういう例がたくさん出てきているので、そのメリットを知っていただければと思います。

MZ:社内で「そんなの売れないよ」と言われて悔しい思いをしていたけれど、クラウドファンディングをやってみたら、こんなに支持者いるじゃない!みたいなこともありそうですね。

坊垣 まさにそのとおりの事例があって、もともとクルマの部品メーカーの方なんですが、アイデアが社内で通りづらかったので、クラウドファンディングに出してみたいと社長を説得して、うまくいったら商品化を検討してくれと。最初は社内も「えー」という感じだったのが、だんだん資金額が伸びていくうちに、社内も「なんだかすごいぞ」という感じになってみんな協力的になっていって、最後には一大プロジェクトになったという。

MZ:みんなが応援してくれるというのもクラウドファンディングの魅力ですよね。これからMakuakeでどんなことにチャレンジしたいですか。

坊垣 流通販路との取り組み強化を考えています。先ほども触れた伊勢丹新宿本店との取り組み以外に、丸井グループの運営する「渋谷モディ」の5階にある「Time mart」でも期間限定(2016年2月15日~2月28日)でMakuakeのプロジェクトを展示・販売することが決定しました。Makuakeから生まれたプロジェクトの製品を実際に見たり、購入することができるリアルの場は、今後どんどん作っていきたいと考えています。

あとは海外展開ですね。日本の良い商品を外に伝えて届けていこうという流れの中で、まず海外の人に支援してもらうというのがあってもいいと思っています。すでに、英語版のページを立ち上げられる状態になっているので、成功事例を増やしていきたいですね。

もう終わってしまったプロジェクトなんですが、スターウォーズを浮世絵にするというプロジェクトがあって、1400万円近く集まったんです。木版の浮世絵を3種類。絵師や刷り師などの職人さんを巻き込んで、本格的な浮世絵でダースベイダーやR2-D2を描いています。ちゃんとルーカスフィルムの公認ももらっているので、クレジットも入っています。

MZ:これは海外の方もほしいですよね。今まさに(笑)。

坊垣 海外のメディアでもたくさん取り上げていただきました。これは実行者の方も思いでもあるのですが、浮世絵の技術を残していくという部分でも寄与しているプロジェクトです。これを単純に作って販売することもできますが、Makuakeであれば、絵師をはじめとした職人さんも写真入りで紹介したり、背景も伝えたうえで限定で販売することができます。この作品は、「渋谷モディ」でも展示しますので、ぜひ実際に見ていただきたいですね。

「Makuake(幕開け)」というサービス名には2つの思いがあって、良いものが世の中に出ていく舞台になるというイメージと、もうひとつは海外展開なんです。日本の言葉をローマ字で書けば、海外に出ても日本のものとして認識されますし。やりたいことがたくさんあるので、ひとつずつ実現していきたいと思います。

MZ:クラウドファンディングの可能性を広げていくMakuakeに、これからも注目していきたいと思います。ありがとうございました。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/02/10 09:00 https://markezine.jp/article/detail/23727

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