Adobeは米国時間の3月22~24日、米ラスベガスで年次デジタルマーケティングカンファレンス「Adobe Summit 2016」を開催している。その中で繰り返し強調されるキーワードは「顧客体験中心のビジネス(エクスペリエンスビジネス)」だ。そして、2日目となる23日の基調講演では、有意義で一貫性のある「体験」を提供するためには「ストーリー」が重要であると語られた。各界の著名人がゲストとして登場し、ストーリーを生み出すクリエティブなビジネスにインスピレーションを与える刺激的な話を展開した。
マーケターはストーリーテラーに
講演冒頭にて、Adobe バイス プレジデントのジョン・メラー氏とともに、タレントで起業家のダニー・オズモンド氏が登場。ディズニー映画『ムーラン』で氏が歌った「Let's get down to business(本題に入ろう)」からはじまる曲を熱唱。来場者も合唱し、活気あふれる幕開けとなった。この演出、そして本講演の内容自体がまさに「体験」の価値を強烈に印象づけるものとなっていた。
企業が「顧客体験中心のビジネス(エクスペリエンスビジネス)」を展開するために必要なものとはなんだろうか。もちろん、データは重要だ。大量のデータを集め、分析する仕組みを有する企業は少なくない。しかし、それだけでは不十分なのだ。データをコンテンツに反映し、有意義で一貫性のある「体験」に変換する必要がある。コンテンツを使ってストーリーにまとめあげることが必要なのだ。人の心を動かすのは、ストーリーであり、それを「体験」させることだ。
例えば、本サミットの開催地であるラスベガス。その地を訪れたことのない人でも、多くの場合、写真や映像で見た覚えはあるだろう。映画『オーシャンズ』シリーズの舞台としても有名だ。しかし、実際にその地を訪れるという体験をすることで、はじめてその場所と人とが「パーソナルな繋がり」を持つことができる。そして、繋がりを持つことで、ラスベガスへのイメージが変わる。認知、認識度が大きく変化するのだ。これは、企業、ブランド、製品、サービスにおいても同じことが言える。何も物理的な接触だけが体験のすべてではない。コンテンツを通して体験を提供することはできる。そのための武器となるのがストーリーだ。
テクノロジーがストーリー作りやその拡散を補佐できる部分はある。しかし、実際にストーリーを紡ぐのは人だ。メラー氏は、「Adobeはパートナーとしてテクノロジーとエコシステムで支援していく。しかし、ストーリーテラーとなるのは皆さん自身」と語った。
では、登壇内容からラスベガスにゆかりのある2者の話を紹介する。「ストーリーテラー」となるためのヒントを見つけ出して欲しい。まずは世界最高峰のサーカス集団から。