オムニチャネル推進に向け、大規模な組織改編
オムニチャネルを考える際、組織の問題は避けて通れない。「Web部門と店舗は喧嘩するんですよ。我々もそうでした」と藤原氏は率直に語る。特にコメ兵のように実店舗からスタートした企業では、社内的な発言力がどうしても偏る場面も多く、Web事業を推し進める立場としては苦労もあったという。しかし、そんな「店舗とEC間の軋轢」というフェーズを経て訪れたのが、「店舗側の気づき」だ。
「店舗にECを見てきたというお客様がどんどん増えてきたのです。そうなると、ECには見向きもしなかった店舗スタッフが、Webの集客力に気づく。そして全国に散らばる店舗のどこに商品があるのかWeb部門は把握していることもあり、必然的に他店舗の商品在庫に関する問い合わせが増えました」(藤原氏)
その勢いは日々増していき、Webを有効活用することが店舗にとっても売上アップになると意識が変わった。加えてコメ兵では、マインドの変革のみならず従来の組織図を思い切って改編し、最適化を図ったという。
「組織横断型の組織にしました。従来は、時計部門、宝石部門など商品のジャンル単位で分かれていたものを営業や機能別にしたのです。これにより、販売チャネルにとらわれない社員の人事評価が可能になり、部門同士の密な関係を構築できました」(藤原氏)

またコメ兵独自の施策として、より素早い開発とマーケティング施策実行のため、情報システム部門を営業部門の配下にしたことなども、大きな組織変革のひとつだ。
当事者意識で推進し、リアル小売の主権を再び
藤原氏は、組織改編を機に、2つの仕組みを取り入れた。それは「デジタル活用をふまえた接客教育」と「組織横断型マーケティングスタッフの設置」だ。前者は実店舗の接客ではタブレットを使う前提のもと教育を行い、EC関与の売上を促すようにした。後者では、店舗でのオムニチャネルの推進状況の確認、そしてWEB事業部の施策に対するフィードバックを担う人材を置くことで、店舗とWEBの部署がより密に連携できるようにした。
これだけ様々な施策や仕組み作りを推進してきた藤原氏は、イベント参加者に向け、オムニチャネルを進める上で大切な3つの意識を掲げた。そしてリアル小売業を展開する企業がオムニチャネル化を推進した先の未来を最後に語った。
1.やめることを探す:オムニチャネルを推進すると確実にやるべきことが増える。しかし全て店舗スタッフに課すのは重荷になるため、やるべきことの取捨選択が重要
2.冷静かつ熱い心:冷静に浸透する仕組みを考え、そして熱い心で社内浸透を進めていく
3.推進できるのは自分だけ:自らリーダーシップをとって、強い当事者意識で推進する
「現在は、昔では考えられなかったような便利なツールが安価で利用できます。それを小売業で活用できれば、今まで不可能だったことができるようになる。そうなると、実際の商品を持っている小売業は絶対に強い。接客、テクノロジー問わず、顧客満足度が上がるならどんどんやればいいと考えています。ネット専業ECに比べ乗り遅れている点も多いリアル小売ですが、これから逆襲が始まると思っています」(藤原氏)