重要なのは、収益性ごとに広告費を配分すること
続いて、コーチ・ユナイテッドの習い事マッチングサービス「サイタ」を運営し、同社の取締役でもある福崎康平氏が同サービスのマーケティングについて語った。福崎氏が入社した当初、サービスの規模を拡大していく段階だったが、マーケティング体制はほとんど整っていなかった。そこで同氏が始めたのが、習い事ごとの収益性のランク分けだという。

「現在では300種類くらいのレッスンが用意されているのですが、ジャンルによってLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)などをはじめ、収益性にムラがあることがわかりました。そのため、そのムラを明らかにした上で行ったのが、収益性のランク分けです。3つのランクに分け、施策を実施する際の優先順位をつけることで効率的にサービスをグロースさせることができました」(福崎氏)
実際に、売れ筋のジャンルとそうでないジャンルを調べた結果、LTVが5倍ほど違うことがわかり、投じるべき広告費も明確になったという。
また、同社が注力したのは、レッスンのクオリティコントロールだ。習い事は、講師の違いで無料体験からの入会率、LTVが大幅に変わる。福崎氏によれば、トップクラスの講師と不人気な講師の間では、5倍近くLTVが違うというのだ。そのため同社では、クオリティコントロールのために面接の実施やレッスンのスコアリングといった施策を講じてきた。
そして、最近取り組んでいるのは、カスタマーサポートの充実だ。客単価が他サービスに比べると高いため、体験レッスン後に電話案内で人気講師の案内をするなど、属人的にLTVを高める努力もいとわない。
「ユーザーが習い事を選ぶ時に悩むのは、どの講師に教わるかという点です。実は、先生を選ばせないパターンと選ばせるパターンでは、選ばせない方がCVRは2倍くらい高いんです。つまり、こちらから講師を提案した方がCVRを高めることができ、かつ人気講師を紹介することで継続率を高め、LTVも伸ばすことができます」(福崎氏)
リリース時を地道に乗り切る
続いて、チケットフリマアプリ「チケットキャンプ」を運営するフンザの松浦想氏が自社のマーケティング活動について語り始めた。現在は、mixiグループのサービスとして、TVCMなど含めた多彩な広告施策を展開している同社だが、立ち上げ当初からマーケティング業務に携わる同氏によれば、「立ち上げ時は地味すぎるマーケティングをしていた」という。

「リリース初日の話ですが、全く告知をしていないのになぜか出品が1件入ったんです。確認したところ、弊社が把握していない誰かがmixiコミュニティでサービスのクチコミを書き込んでいました。さすがに買い手が見つかるはずはないので、自分たちでそのチケットを買って受け取りに行きましたね(笑)。それ以来、mixiコミュニティへの書き込みを自分たちで黙々と行うようになりました」(松浦氏)
また、松浦氏の地道なマーケティング活動はこれにとどまらない。アイドル好きだった同氏は、自身が趣味で運営していたサイトの集客にTwitterのハッシュタグを活用していた経験をもとに、ハッシュタグを使ったマーケティングを実施し、サービスを少しずつ認知させていったという。
「Twitterのハッシュタグにもコミュニティが形成されています。例えば、あるアーティストのチケット売買のために作られたハッシュタグもあるくらいです。それを活かさない手はないと思いました」(松浦氏)
これらのマーケティング活動をつづけながら、コンテンツマーケティングを中心としたSEOを進め集客力を増加させた。松浦氏は「もちろん集客にはSEOといった施策が有効です。しかし、SEOが結果につながるまでは時間も手間もかかるため、地道なことも立ち上げ時から頑張っていました」と過去を振り返った。