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テレビCMの本当の効果を測る新指標『GAP(グロス・アテンション・ポイント)』とは何か

 デジタルインテリジェンスが、テレビCMの新たな効果指標として延べ注視量ともいえる「GAP」の測定とデータ提供サービスを開始する。これまでテレビCM業界では、延べ視聴率「GRP」をベースとした取り引きが行われてきた。投下量に視聴質(画面注視率)を掛け合わせたGAPの登場は、テレビ離れといわれる時代の広告戦略に何をもたらすのか。同社代表取締役・横山隆治氏にたずねた。

テレビ広告の本当の効果は「量」×「質」

MarkeZine編集部(MZ):今回、テレビCMの測定指標として新たに「GAP(Gross Attention Point)」を提唱され、実際にその測定を開始するとのお話ですが、GAPとはどのようなものなのでしょうか?

横山:GAPとは、文字どおり「テレビ画面を注視(Attention)している割合の合計」です。これまでテレビCMの世界では、GRP(Gross Rating Point)という指標を使っていました。GRPは「延べ視聴率」と呼ばれ、10%の視聴率のところに3本出せば、計30%で、「30GRPとれる」という言い方をします。

 とはいえ、これは単にテレビがついているという%の足し上げでしかありません。実際、誰がどのように見ているのかはわからないのです。テレビをつけていても画面の前には誰もいないかもしれないし、スマホをいじっていて画面を見ていない可能性もあります。

 テレビスポットの取引通貨としてのGRPは従来どおりたいへん重要な指標であることは変わらないのですが、GRPはあくまで何発打ったかの指標であって、ターゲットに何発当たったかの指標ではありません。いわゆるマーケティングデータとするにはいささか心もとないというか、到達実態を把握したものにはならないかもしれません。

 これに対しGAPは、画面を注視している割合を毎秒単位で測ります。また、個人GRP(TARP)に相当する個人GAP(ターゲット区分ごとのアテンション率総計)も見ることができます。でも、このCMの本当の効果には、ブランド力、クリエイティブ力が大きく関わります。だからセルサイドのテレビ局がGAPをギャランティすることはありえないし、すべきではない。

 私はネット広告をその黎明期から20年以上やってきて、CPCとかCPAとか本来広告主が責任をもつべきブランド力・クリエイティブ力まで媒体側がギャランティするモデルについては未だに懐疑的です。ブランディング広告となれば尚のことで、そのかわり媒体側はビューアビリティやフラウド問題をちゃんとクリアにして本当にいい掲載面を提供すべきだと思っています。

 その点でいえば、ネット広告にはビューアビリティの概念があるのに、テレビにはないというのもおかしいですよね。

MZ:確かに私も、テレビをつけっぱなしにしているけれど、見ていないことがあります。

横山:そう、「つけているけど見ない」ことは珍しくない。だからこそ、視聴率だけで広告効果を推計するのは危険なのです。デジタル広告では、それこそ重箱の隅をつつくように、「いつ誰がこの広告を何回見て、どのような行動を取ったか」を測るようになっているのに、テレビの世界は、「なんとなく、これくらいだろう」という推計で成り立っている。実際にターゲットにリーチできているかはわかりません。それに世帯視聴率が良くても、肝心のターゲット層が視聴しているとは限らないのです。

 ご存じのように、若い世代を中心にテレビ離れが起こっています。世帯視聴率が高くても、実際に見ている層は、人口比率が高い団塊の世代ばかりということもありえます。従来の指標ではターゲットへのリーチを確実なものにしたければ、とにかく数を打つしかありません。だから、テレビCMの戦略や投資に関しては、最適化が難しかった。

 一方GAPでは、センサーカメラでの顔認識技術を活用し、個人の識別と画面注視度合いを見ています。視聴率調査でも、世帯の構成員の誰が見ているかは機械で申告できますが、実際にどれだけ注視しているかまでは測れません。

 その視聴“質”を補うのがアテンションインデックス(画面注視度合い:AI値)であり、その総量化した数値としてのGAPです。2015年の実証実験で成果を得て、今年の4月からは600世帯を対象に測定を始めていますが、この600世帯はビデオリサーチ社の視聴率と同じパネル数です。

異なる視聴エリアやデジタル広告もシームレスにつなぐために
率だけでなく絶対数で到達を管理する

MZ:GAPは、GRPに取って代わる新しい指標ではない、と。

横山:GRPは、いうなれば「打ち込んだ数」を見るものです。これに対しGAPでは、「当たった数」を見る。両方をしっかり見ていくことで、テレビCMの効果を引き上げていくべきでしょう。

 本来GRPのような割合(%)を足し上げるというのもおかしな数値です。たとえばM1層の個人GRPを考えると、母数であるM1層の人口はここ10数年で8掛け以下になっています。母数が少なくなっているのに%でずっと管理するのっておかしいと思いませんか? 同じ%なのに10数年と今では到達人数は違うのです。

 ですから、到達をしっかり把握するためには%だけではなく、絶対数、つまりターゲットリーチを人数で、CMの接触回数をインプレッション数として絶対値で管理しなければなりません。でもそうすれば、エリアを跨いでも管理できますし、テレビとデジタルもシームレスに管理することができます。

 たとえば、関東地区4200万人の10%がCMを見れば420万人になり、この10%に1回ずつCMが当たれば「420万インプレッション」ということになります。関西エリアが約2000万人だとしたら、10%で200万人、彼らに1回ずつCMが当たれば200万インプレッションです。関東と関西の母数が違うので各々の10GRPは足すことができませんが、420万インプレッションと200万インプレッションは足し上げることができます。

 これと同じように、デジタル動画の視聴も1回につき1インプレッションと単位を統一すれば、デジタルもテレビも同じ土俵で議論できる。ただ、テレビの1インプレッションと、YouTubeやFacebookの1インプレッションの価値が同じかどうかは、ブランドごとに判断しなければなりません。

 そこは認知や態度変容効果を調べて、自社ブランドでは、たとえば、テレビCMを1としたら、オンライン動画広告は0.8と換算するなど、評価のやり方はブランドの目標に応じて柔軟に決めれば良いと思います。これは商品カテゴリーや個別ブランドごとにパラメータが変わって当然なのです。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/06/30 13:00 https://markezine.jp/article/detail/24538

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