目的別ワークショップの特徴
今回のワークショップは、対象プロダクトがあり、現状調査や効果測定がしやすい状況で取り組みました。一方で、新規企画を立てていく場合にワークショップを行いたいケースもあるでしょう。この場合、アプローチも変わってきます。既存サービスの分析であれば現状を知る必要がありますが、企画の場合であれば論点はどういったサービスにするのかに絞られます。
ワークショップを取り入れて進めるアプローチ(デザインスプリントなど)の多くは、新規サービスの企画に活用されることが多く、既存サービスの分析だけで語られることは多くありません。

また、教育面でもワークショップは注目を浴びています。たとえば、大きなプロジェクトを計画している際、参加メンバーの知識向上を一定期間内に促すために全社で勉強会やワークショップを取り入れるケースが増えています。
教育視点と事業視点とでの内容を比較すると次のように整理することができます。いずれにしても、より多くの関係者と共に取り組むことを前提としており、組織内やプロジェクトチーム内での共通言語をつくることにつながります。

事前に決めておく項目の洗い出し
ワークショップの準備は備品を用意することだけではありません。参加者が集中でき、決められた時間内にアイデア発想や効果を発揮できる環境を用意する必要があります。ではどのようなことを事前にしておくことが必要か? 次のように整理することができます。

目的・対象者を決める
まず、ワークを受ける対象者を決めます。教育が目的の場合、全社に向けた対象者です。特定の部門に対する教育であればその部署に所属する社員が対象となります。一方で、事業が目的の場合、対象者はプロジェクト関係者になります。場合によっては外部のパートナーも対象者に入れても構いません。
成果を決める
目的が決まれば、ワークに求める成果も決まりやすくなります。また、効果検証の手段も明確になるでしょう。たとえば、教育目的であれば知識向上が成果になり、事後のアンケートによって計測することが可能です。事業や企画が目的であれば、そこで得たい内容(要求事項やアイデア施策)がそのまま成果になります。ワーク終了後に簡単なレポートを書いてもらい、課題や発表内容について触れてもらうことで、参加者の理解度などを測ることができます。
対象サービスを決める
既存サービスの見直しの場合には、見直す対象を選定することが必要です。課題はわからないので問題が多く潜んでいるであろう箇所について考えたい、課題はわかっていて原因を追求したいなど、状況は様々でしょう。いずれにしても出発点は現状調査になります。すでに調査データがあればサマリーを持ち寄ることで事実と比較してみることができます。
一方で、対象サービスがない場合、つまり新規サービスの企画であれば、その計画にある市場やユーザー調査から出発します。企画書の類があれば社内で共有しやすいようにしておくとよいでしょう。
また、当日いきなりワークをはじめることは難しいため事前に目的や成果について説明するほうがいいでしょう。
日程・場所を決める
施設にもよりますが30人程度の参加者で1グループ5、6人くらいが適切です。また、ワークショップをしますので模造紙が広げられる空間を用意する必要があります。テーブルを自由に組み合わせられたり、壁に紙を貼れたりできる施設のほうが好ましいです。
ワーク自体の備品を用意する
ワークショップでは、付箋を使ってアイデアを描くことが主です。付箋・ペン・模造紙は「三種の神器」でしょう。また、テーマによっては被験者にサービスを利用してもらった動画や、その場でも問題を解くためのワークシートを別途用意する場合があります。
ちなみに付箋は、カスタマージャーニーマップであれば正方形のものを三色用意すると進めやすいです。また、模造紙に付箋が貼られたものが成果としては見やすいです。第三者にも読める可読性を意識して写真を撮影し、あとから見返せるようにしておくことがおすすめです。
ファシリテーションのスキル
ワークショップには、役割としてファシリテーターが必要です。これは日頃の会議の進行にも言えますし、プロジェクト全体のマネジメントにも通じるところがあります。ファシリテーションとは活動の舵取りをする役割を指します。書籍『ファシリテーション入門』では必要なスキルを次の4つで説明しています。

今回のファシリテーションは私が担当しました。今回のケースでは4つのスキルのうち「構造化のスキル」がもっとも重要だったと考えています。というのも、ワークショップの目的が場をつくり合意形成をするものであったため、スキル1と4ははじめから用意できていたものでした。一方で、スキル2および3の様々な部署の人間がアイデアを引き出し、構造化するまでの取り組みは、参加者自身も未経験であったり経験が少ない方が多かったのです。
アイデアを引き出すには、「問い」をつくるところからはじめなければいけません。設問によってアイデアの出しやすさの難易度も変化します。たとえば「この製品はどう見られているか?」という問いだと答えにくいですが「使ってどう思われたいか?」と聞けば答えやすいといった具合です。
ユーザーの声とは個人の主観によるところが多いため、ワークショップでも個人視点の感想を引き出せる設問にするとよいでしょう(このあたりは書籍を参照して身につけたいスキルです。ちなみに私のおすすめは『ユーザーインタビューの教科書』です)。
一方で、出てきたアイデアを整理してまとめていくスキルには分類法(KJ法)や、特定の基準に合わせた優先順位を設けることが求められます。今回のワークでは、rakumoにはどんなユーザーがいるかといったディスカッションをした際に、出てきたユーザー像のアイデアをグルーピングして整理しました。こうすると、たくさん出てきたアイデアもいくつかの塊にでき収束することができます。