博報堂生活総合研究所は、1986年から30年間にわたり60~74歳を対象にほぼ同じ質問内容の調査を続けてきた(1986年、1996年、2006年、2016年の4時点で実査)。この30年間で日本は急速に高齢化が進み、特にこの10年では、団塊世代が高齢期を迎え、平均寿命が男女ともに80歳を超えるなど「高齢社会」を取り巻く環境は激変している。同研究所は高齢者の30年間の変化を調査し、結果を発表した。
60歳を超えても、まだまだ長く生きる自覚がある
「あなたは何歳まで生きたいと思いますか?」という質問では、1986年からの30年間で4歳延びて、84歳となった。また、「あなたの気持ちは何歳くらいだと思いますか」と尋ねたところ、2016年の平均は53歳で、実年齢との差は-14歳だった。体力年齢や見た目年齢について尋ねたところ、それぞれ実年齢よりも-7歳、-5歳という結果に。いずれも実年齢を-5歳以上下回っており、まだまだ若いことを自覚している高齢者の意識が見受けられる(※これら質問は2016年のみ調査)。
自分の身体や気持ちの状態についてどう感じるかという質問を、年齢で比較したところ、「自分は、体力もあるし気持ちも若い」と答える人の割合は、団塊世代が大半を占める65~69歳が圧倒。実年齢は団塊世代よりも若い60~64歳と比べても、団塊世代のほうが意識の上では若いことが如実に。過去30年の結果と比べても突出しており、常に時代をけん引してきた勢いが表れている。「健康診断や予防のための医療費に、なるべくお金をかけていきたい」という人の割合も、団塊世代がほかの世代を上回っており、体力や若さを維持することにも関心が高い世代と言えそうだ。
半数以上の人が、60代を新たな出発の時期と捉えている
「あなたにとって60代とは人生のどんな時期にあたりますか」という質問では、「再出発の時」と答える人が大幅に伸び、2016年に半数を上回った。一方、60代を「解放の時期」だと捉える人は、2006年まで増加傾向にありましたが、一転してこの10年で減少している。
希望寿命も長く、気持ちも若い現代の高齢者は、老後が長期化することを自覚している。そのため、彼らにとって60代は、あらゆることが終わりに向かう「解放の時」ではなく。これからの長い人生の新たな一歩を踏み出す「再出発の時」に変わっているようだ。
生活の見通しは暗い
希望寿命も長く、気持ちも若い60代だが、先の見通しは決して明るくないようだ。先の見通しは明るいか、暗いかを尋ねた二拓のして右門では、約半数が「先の見通しは暗い」と回答。30年間で15ポイント増えた。1か月のお小遣いも、30年前以下の水準に。2006年から2016年の10年間で今度は約5,000円減少し、30年前を下回った。
さらには、欲しいものを尋ねた選択式の質問では、この30年間で「お金」と「幸せ」が逆転。老後が長期化し、生活の見通しが暗い状況で、情緒的な「幸せ」よりも現実的な「お金」を求める切実な気持ちがうかがえる。
【調査概要(2016年)】
調査手法:訪問留置自記入法
調査期間:2016年2月24日~3月22日
調査対象:60~74歳の男女
調査地域:首都40km圏
企画分析:博報堂 博報堂生活総合研究所
実施集計:東京サーベイ・リサーチ
調査人数:首都圏700人
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