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コーポレートサイトのリニューアル、何を改善すれば良い? データに基づくボトルネックの探し方を考える

できるアナリストは、いきなり数値は見ない

福山:先ほどもお話しした通り、クライアント企業へのプレゼン前だと、ユーザーの経路などを調べることができず、ヒューリスティック(分析者の経験則に基づく分析)に頼った提案しかできないときがあります。小川さんのご経験的にどうですか? 後から解析ツールで数字を見ると、ヒューリスティックで抽出したボトルネックはアテになるんでしょうか。

小川:ちゃんとできるアナリストは、ヒューリスティックから入るんですよ。

福山:お、そうなんですね。あたりをつけるってことですか?

小川:そうです。私の場合、コーポレートサイトを分析するときに、最初はアクセス解析ツールを絶対見ません。

福山:おお、それは目からウロコな話(笑)。

小川:まずサイトをユーザー目線で使いながら気づいたことをひたすらメモします。たとえば「自分は採用に興味がある。この会社のことが知りたい」とざっくりしたテーマを作り、トップページを訪れて、URLとそこで感じたことを書いていきます。

 「採用のリンクどこだろう?あ、あった。見つけるのに●秒かかったかな」「自分は転職で入社したいから、この会社の特徴とか“思い”を知りたいな。でも求人情報ばかり先に出て、何を大事にしている会社なのかわかりづらい」とかね。

福山:もはや自分でユーザーリモートテストをしている感じですね。ストップウォッチまで使って(笑)。

小川:まさにそうです。そこから「リンクあったけど分かりづらい→このページからの遷移率は低いのでは?」「読んだ後に、次どこに行けばいいのかな→ここで離脱率が高いのでは?」と仮説が生まれるのです。それをもとに、後でデータを抽出します。

 もちろん、基本的なデータは見ますが、一番良くないのはレポートを上から下まで眺めること。問題には気づけても、「なぜか」というユーザーのインサイトまで気づけないからです。

操作性やUI構造にオリジナリティはいらない!

福山:アナリストの出してきた気づきが、みんなが画面で見て納得するものだったとしても、具体的に改善するには全体構造やボタン配置などの画面設計、機能に落とし込まなければいけません。

 僕はアナリストやアーキテクトといった専門職ではなく、みんなを束ねるプロデューサーという立場なので、「このサイト構造、画面設計、デザインは果たしてアナリストが出してくれた改善ポイントを本当に満たせるのか?」と判断に悩むことがあるんです。

小川:アナリストはデザインセンスがあったり、クリエイティブを考える能力があったりするわけではありません。できるのは「こういう観点で改善してほしい。ここは外さないで」という視点を出すこと。

 具体的には、同業他社や他の事例もスクリーンショットで出しながら、「こちらのほうが見やすいですよね?」と提示したうえで、企業のブランドに合わせた改善案を出す。そこまでですね。

福山:改善案を出すときに、時々いませんか? ベストプラクティスを追うことを嫌がる方が。大企業になればなるほどベストプラクティス=模倣と考え、オリジナル感を追いたがる傾向にあるような気がします。

小川:業界トップには多いでしょうね。2位以下は1位をマネするのにあまり躊躇しませんから。

福山:それがコンテンツなら、独自性はあってしかるべきだと思うんですよ。「デザインに自社の特色を持たせたい」、これもいい。問題は、操作性やUI構造にオリジナリティを求められたとき。ユーザーの使いやすさを考えた時に「ここにオリジナリティって必要?」って思うときがあるんです。ターゲットが広ければ広いほど、サイトの操作性はベストプラクティスに倣ったほうがいいのではないか、と。

小川:ユーザーが操作しようとしたら思ってもいない動きにつながる、これはよくありませんね。その意味で、みんなが使っているiPhoneなどの動作は模倣したほうがいい。逆にヘッダーのメニューを英語で表記するのはやめたほうがいいですね。おしゃれにしようとしても、英語の時点で読みづらい。筆記体ならなおさら読めなくて、クリック率が下がるんですよ。もう一つ、メニューやカテゴリ分けが、自分たちで作った造語とかいうケースも、ダメです。

福山:すごくよくわかる(笑)。SEO的にも得じゃないですしね。

小川:ええ。ただ、みんなやっているからいいとは限りません。メニューを三本線で表示する「ハンバーガーメニュー」は「文字で『メニュー』って入れないとわからないよね?」という議論がありました。

 オリジナリティを追う部分は、コンテンツや、使いやすさであるべきです。例えば地図なら、コピーしやすい、イベントに登録しやすい、印刷しやすい、メールに送りやすい、写真をつける……。そういったオリジナリティはどんどん追求すべきだと思います。もしかしたら地図が分かりづらいから、その会社に打ち合わせに来る人は遅刻が多いのかもしれません。(笑)。

福山:サイト改善のKPIを「遅刻を減らす」にする! それ面白いですね。

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スクロールとクリック、どちらの方が負荷になるのか

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この記事の著者

井田 奈穂(イダ ナホ)

早稲田大学卒業後、記者として活動。企業広報を経て、現在フリーランスのライターとして活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/08/10 13:00 https://markezine.jp/article/detail/24909

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