顧客との関係構築をLINEで完結、LINE ビジネスコネクト
公式アカウントを取得してメッセージを発信する企業は日本だけで250社程度ある。この素地を受けて開始したのが、双方向性を向上させることができる「LINE ビジネスコネクト」だ。企業は自社の顧客データベース、メッセージ配信システムを利用し、LINEが公開するAPIを経由してLINEの企業アカウントから発信するという仕組みだ。
1to1でのレコメンドなど個人を意識したメッセージを送ることができ、キャンペーンやカスタマーサポートなどで力を発揮する。たとえば写真投稿を受け付けるキャンペーン、これまでであればメールに添付する、Webサイトにアップロードするなどの対応が必要であったが、企業のLINEアカウントに写真を送るだけで応募が完了するなど簡便性がうけているという。

アパレルブランドのアメリカン・イーグル・アウトフィッターズでは、LINE ビジネスコネクトをCRMに活用する仕組みを構築した。同ブランドでは、LINE公式アカウントを友だち登録したユーザーにバーコードを送っており、これを店舗で会員証として掲示することができる。ポイント残高、購入履歴の確認もでき、企業は履歴に応じたクーポンを顧客のLINE公式アカウントに対して配信できる。このような機能面に加えて、同社では店員が顧客に対面で自社のLINE公式アカウントを紹介しているという。田端氏はこの活動も評価する。
「実際に店舗に足を運んでいる良質な顧客に友だち登録してもらうことで、訪問頻度をさらに増やすことができる」(田端氏)
気になる自社顧客IDとLINEアカウントのID連携については、Amazonとの事例を紹介した。まず、AmazonのLINE公式アカウントの友だちにLINEアカウント連携に関するメッセージが送られる。メッセージを受け取った友だちが「アカウントを連携」をタップするとブラウザが立ち上がり、Amazonのサイトが開かれサインインすることができる。
サインインを行うとLINEアカウントとAmazon IDが同一人物としてひも付き、顧客にはアカウントの連携完了を知らせるメッセージが表示される。現在AmazonはLINE ビジネスコネクトを活用して注文の確認や発送の通知を送っているが、今後も更にサービス範囲の拡大が考えられるという。
業務プロセスの最適化でも活用が進む
田端氏は、LINEは送信直後に「ユーザーからのレスポンスが短期集中する」と語り、この特性を活かし、タイムセールなどのキャンペーンを行う企業が多いと説明した。
たとえば、ビールのプロモーションにLINE ビジネスコネクトを活用しているキリンでは、まずアンケート形式でユーザーの年齢と性別データを収集する。20歳以上であれば、仕事が終わる時間を聞き、就業時間後にメッセージが届くようにしているという。3月末に展開した期間限定商品のキャンペーンでは、CTR(クリック率)が31%になり、LPに遷移したユーザーの応募率は95%だったという。
また販促目的ではなく、業務プロセスの変革支援につなげている企業もいる。宅急便のヤマト運輸では、既存のメンバーサービス「クロネコメンバーズ」との連携により、荷物の配送予定を通知している。LINEで通知するだけでなく、顧客がやりたいことを会話のように聞き出すことができるため、不在とわかっている顧客に配達時間の変更を促すことに成功しているという。再配達の減少が期待できそうだ。

ヤマト運輸は会話に人工知能を利用しているが、大東建託では実際のオペレーターが物件を探す手伝いをLINEで行うサービスを展開中だ。検索が難しいような条件も人間なら柔軟に対応できる。また、部屋探しでは家族構成や家賃の予算などプライバシー情報が多いため、公共の場では口頭での問い合わせがはばかられるが、LINEなら移動中の電車などでもできるといった利点もある。同社ではLINEがリスティング広告に次ぐ同社の流入経路になるなど好評で、当初は夜9時までの対応だったが、現在24時間365日で35人程度のオペレーターが対応しているという。