SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

Twitterプロモーションの最新動向を追う(AD)

日本コカ・コーラの新ブランド「ヨーグルスタンド」が実施した、日本初のTwitterキャンペーンに迫る

 日本コカ・コーラは、2016年4月に発売した新しいブランドである「ヨーグルスタンド」の認知拡大を目的に、Twitter上で日本初の仕組みを利用したキャンペーンを実施した。その結果、延べ参加回数50万回を達成し、ブランドリフト調査でも非常に良い結果を出したという。一体どのような取り組みをしたのか? 詳細を取材した。

Twitter=若年層向けではない、コカ・コーラがTwitterを選んだ理由

 2016年4月、日本コカ・コーラは仕事や家事に忙しい毎日を過ごす35歳以上の大人世代の男女に向けて、間食にぴったりの「甘くておいしいのいに、ヘルシー」な乳性飲料として「ヨーグルスタンド」を発売。その新ブランド「ヨーグルスタンド」のプロモーションにおいて、Twitterを日本初のこれまでにない方法で活用。想定以上のリーチとキャンペーン参加数につなげたという。取り組みの詳細を日本コカ・コーラ マーケティング本部 IMC iMarketing アシスタントマネジャー 越智麻央子氏と、Twitter Japanの加藤瑞人氏に取材した。

日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 IMC iMarketing アシスタントマネジャー 越智麻央子氏、左:Twitter Japan株式会社 APAC/MENA Regional Lead Account Executive 加藤瑞人氏
日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 IMC iMarketing アシスタントマネジャー 越智麻央子氏
左:Twitter Japan株式会社 APAC/MENA Regional Lead Account Executive 加藤瑞人氏

 越智氏は、日本コカ・コーラのデジタルマーケティングに関わるプランニングや、企画の実施に携わっており、「ヨーグルスタンド」ではローンチ時のデジタルプロモーションを担当した人物。加藤氏は同社の担当として、アイデアの提供から、海外事例の紹介。さらに実行プランを固めるにあたっての技術的な調整まで社内外でサポートしている。

 「ヨーグルスタンド」は前述のとおり新ブランドの認知を最大化させる必要があった。そこで、テレビCMや交通広告、プレス発表会など多方面から消費者へリーチするプランを立てた。その中で、デジタル施策の中心的な役割を果たしたのがTwitterだ。

 「日本でのTwitterのアクティブユーザーは3500万人(2015年12月時点) を超え、短期間で話題化できると考えました。ヨーグルスタンドが想定するメインターゲットユーザーは、35歳以上の男女です。プロモーションにおいては、Twitterは若年層向けのメディアという印象が強いですが、実は利用者の50%が30歳以上です。ターゲットへのリーチに、十分活用できると見込みました」(越智氏)

日本初、自動返信を活用した「インスタントウィン」

 Twitterでのキャンペーンは、発売の半年ほど前からTwitterのサポートを受けながら準備を重ねてきたという。では、実際にどのようなことをしたのか。一言で表現してしまえば、その場で当選判定が可能な懸賞、いわゆる“インスタントウィン”を行った。

 具体的には、発売日から1か月間、ヨーグルスタンドのTwitterアカウント(@YOGURSTAND)をフォローし、同アカウントが投稿する、ハッシュタグ「#毎日挑戦」が付いたツイートをリツイートすると、30秒〜2分ほどで当選かはずれか、くじの結果を示した動画が自動返信されるというものだ。当選であれば、ヨーグルスタンドの2本セット(ピーチ/パイナップル)がプレゼントされる。くじ(リツイート)は期間内であれば何度でも参加でき、その対象の投稿は毎日0時にツイートされるように設計された。

 これまでも、Twitterにおけるフォロー&リツイートキャンペーンは数多く行われてきた。そのため、何が目新しいのか? と思った読者もいるかもしれない。今回の施策の肝は、応募してから当落が分かるまでの時間の短さだ。従来のキャンペーンは、募集期間の後に結果を当選者にのみ連絡するというクローズドで長期スパンが主流だった。一方、今回行われた施策は、応募するとすぐに返事がきて、しかも動画で結果が分かるようになっている。これが、日本初の仕組みだ。

 「新ブランドのプロモーションなので、初速で消費者の認知を取りたいと考えました。また、飲料は競争が激しい市場、従来とは異なる施策でインパクトを与えたかったのです。そこで、加藤さんにご相談したところ、まずはヒント探しということで、海外のユニークな取り組みを複数ご紹介いただきました。その中で、動画をリツイートした人に対して自動返信をする、という施策が目にとまりました。デジタル上で、利用者の方々がアクションをしたら間髪入れずに、ブランドから次のアクションが届くのはとても面白いと思いました」(越智氏)

 加藤氏は、越智氏との取り組みの中で気づいたことがある。「本施策の参考になった海外事例は耐久消費財メーカーのもので、しかも、いわゆる高級商品でした。飲料とは一見関係のない業種で実施した取り組みですが、越智さんは、すぐにマーケティングの本質やエッセンスを捉え、自社製品に置き換えて考えられていました。この姿勢は非常に重要なことだと思います」(加藤氏)

KPIの7倍以上のリツイート、延べ参加回数50万回を達成

 KPIは期間中のリツイート数に加え、ブランド調査での認知や購買意向をサブKPIとした本施策。実施の結果、KPIの7倍近いリツイートが行われた。さらに、ツイート件数は27万件にのぼり、キャンペーンへの延べ参加回数は50万回ユニーク参加人数が約10万人だったため、一人当たり約5回参加した計算になる。これはTwitterのキャンペーンの中でも、結果として大きなインパクトを与えた事例となった。

「ヨーグルスタンド 希少糖の飲むヨーグルジー ピーチ」
「ヨーグルスタンド 希少糖の飲むヨーグルジー パイナップル」

 当選人数は1000人を設定していたが、参加者数が想定以上だったため、自ずと当選率は低くなった。くじにはずれる人も多くなったため“本当に当たるのか?”といったツイートも散見されたという。そこで、当選者の喜びの声をリツイート。“ありがとう”“ピーチ味とパイン味のどっちが好きか教えてね”などのコミュニケーションを追加で展開した。

 「毎日、みなさんの反応をチェックする中で、アカウントとのつながりを強くもっている方々がいることに気づきました。そのため、ブランドからも積極的にアクションをしたほうが、関係性がより深まると判断しました」(越智氏)

 また、注目すべきはそのリピート率の高さである。1人につき約5回のリピートを促せた秘訣を、加藤氏は「やはり、自動返信ですね。その場で結果が分かって明日も挑戦できるほうが、利用者の方々にとって楽しい。そもそもTwitterはスピーディーでリアルタイム性が高いので、即時性が求められているという今の時代の特性とも合っていたと思います」と語る。

 さらに、Twitter Japanが実施したブランドリフト調査では、キャンペーンに参加した利用者のブランド認知は非接触者の4倍以上で、購買意向などを含めて、世界中で行った同調査の中でも上位1%に入ったという。「実際の反応としても、“なかなか当たらないから、悔しいけど買ってくる”といったものもあり、購買につなげられている実感もありました」(越智氏)

期間中も臨機応変に工夫して、利用者を引きつける

 他にも利用者視点に立ってキャンペーンをより楽しんでもらえるように、キャンペーン開始後も状況に合わせて工夫を重ねたという。

 「例えば投稿する時間は、最初は朝8時だったのですが、他の時間に変えるなど試行錯誤したところ、利用者の方々の中で昨日のツイート(=くじとしては無効なツイート)なのか、有効なツイートなのか混乱している様子が見受けられました。そのため、0時ぴったりにツイートしたり、季節にあわせた投稿にし、利用者にとって魅力的な発信する事に留意しました」(越智氏)

 「ここまでこまめに文言やツイートの時間を変える対応をした事例は珍しい」と加藤氏。運用型広告のパフォーマンスを上げるためにクリエイティブを変えたり、ターゲティングに応じて文言を変えたりするケースはあっても、キャンペーン施策では稀有だという。「利用者の方々の様子を常に気にしていたからこそ、気づくことができた事が多かったのではないでしょうか。また、そこへの対策をすぐに行う姿勢も今回の結果につながったと思います」(加藤氏)

 チェックをし続けた理由には、同施策が日本初の試みである点もあった。何が起こるか分からないというリスクもあったわけだ。それでも、施策を行った理由は何か。

 「日本初の試みですのでリスクはあると思いましたが、それには対しては、すぐに対応できる体制を事前に準備しておくことに努めました。それより、この施策を実施することで消費者に与えるインパクトや驚きは相当なものだと考え、実施を決断しました。日本コカ・コーラは多くのブランドを保有しているので、成功事例を作り、それを社内で横展開をすることも重要です。ですから、常にチャレンジ精神でいろいろな取り組みを進めるようにしています」(越智氏)

情報収集を目的とする人々の「行動を喚起する」鍵はシンプルさ

 キャンペーンを盛り上げるための細かな調整が行われた同施策。特に意識した点は、ターゲット層の視点に立って、仕組みをとことんシンプルにしたことだ。というのも、30代以上のTwitter利用者は、積極的なツイートは行わないが、常に様々な企業アカウントをウォッチして情報収集している傾向がある。

 「そのため、一番シンプルなアクションでなければターゲットユーザーは動いてくれないと考えました。ヨーグルスタンド独特のとろみ感やナタデココなど、製品特徴で伝えたいことは沢山ありましたし、利用者にツイートを促すものも考えたのですが、利用傾向を知ってやめました。動画を見てリツイートするだけ。しかもすぐ返信が来る。シンプルにこだわる中で、最終的にこの形にたどり着きました。しかもその動画も15秒や30秒のCMを使うのではなく、集中力をキープできる8秒ほどにとどめています。さらに内容もスロットのように、当たるかどうか最後まで分からないゲーム性の高いものにしました。シンプルながらワクワクできるので、また挑戦したいと思っていただけたのではないでしょうか」(越智氏)

おさえておきたい、施策成功のポイントとは?

 同施策の成功のポイントは何か。加藤氏に聞いたところ、次の4点があげられた。

  1. インスタントウィンを使った
  2. 参加回数のハードルを下げた
  3. 利用者をインフルエンサー化させた
  4. CMと同じ世界観で、専用の動画を制作した

 「繰り返しになりますが、スピーディーな仕組みは利用者の方々を引きつけます。また、毎日参加できる点が楽しさを創出し、リピート促進にもなります。しかも、何回もリツイートするということは、その利用者のフォロワーにも、何度もヨーグルスタンドのメッセージが届くということです」(加藤氏)

 例えば、キャンペーンに参加した方のフォロワーが100人いれば、毎日100人に情報が届く。しかも、そのフォロワーも刺激されてキャンペーンに参加するケースも少なくない。その結果、延べのインプレッションが膨大に増え、多くのTwitter利用者を巻きこんだマーケティングが可能となる。

 さらに、キャンペーン用に制作した動画は、テレビCMと同一のキャストで収録することで、ヨーグルスタンドの世界観を統一した。これにより、他のチャネルで製品に触れた際に、想起やエンゲージの率が上がると考えたという。「実際に、動画については既存よりも専用のものをつくったほうが、効果が高いことが分かっています」(加藤氏)

デジタル施策においてもフロントランナーに立ち続ける

 最後に越智氏と加藤氏に、今後の展望を聞いた。越智氏は「Twitterは話題化させることに強いプラットフォーム。今後も新製品ローンチやリニューアルのタイミングで、世界中の事例を参考にしながら様々なチャレンジをしていきたいですね」と、Twitter活用にも意欲を見せる。

 「コカ・コーラさんは、常にフロントランナーであるべきとおっしゃっています。ぜひ、海外の方の参考になるような事例を、日本から発信できるようサポートさせていただければと思います」と加藤氏。次に日本コカ・コーラとTwitterが踏み出すチャレンジはどのようなものか。これからの展開も楽しみだ。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2016/09/28 13:00 https://markezine.jp/article/detail/25019