日本市場に沿った形での定着
とはいえ、広告代理店は、これを親和性の高い広告主とそうでない広告主とを判断しながら使いわけることで、特定アカウントの運用効率を高めるためのツールとしてその後順調に普及した。
自動入札ツールは大手広告代理店を中心に導入が進んだが、その活かし方は様々で、自社アカウント全般で自社専用のツールを開発して導入する事業者もいれば、サードパーティツールを利用する事業者、あるいは自動入札ツールを利用せず、媒体が自社広告運用向けプラットフォーム上で提供する、自動入札機能を利用するにとどまる事業者などにわかれた。
そして、大手広告代理店各社の広告運用業務は、「ツールによる業務プロセスの自動化・効率化+人出で行う作業のオフショア・ニアショア化」という方向で進められてきた。
レポーティングや、入札、そして入稿データ作成などにおいて、自動化のプロセスの構築を進め、ツールでできない箇所を、マニュアルで対応するという業務オペレーションを構築し、コスト削減を行なった。自動入札ツールはまさにこのフローの一部を担った。

SHIROFUNE/デジタルインファクト調べ
ニーズの質に変化、静かに進む中小企業への導入
このような背景から、自動入札ツールの導入件数はこれまで順調に増加し続けてきた。だが近年ニーズの質に変化が見られている。
まず、2000年代後半以降の普及を担ってきた大手広告主/広告代理店向けの需要は、既にほぼ一巡していると言われている。
現在大手広告主/広告代理店向けのニーズは、検索連動型広告入札の自動化のみならず、クリエイティブからレポーティングまでの自動化や、あるいはソーシャルメディア広告やディスプレイ広告など複数のチャネルを統合管理し、運用型広告全般の作業効率の改善へとニーズが移りつつあり、大手事業者向けの自動入札ツールはこれに合わせて機能拡充を進めている。
一方でここ数年静かに導入件数を増やしているのが、中小規模の広告主や広告代理店向けの自動入札ツールである。
以下は、2016年5月末現在の自動入札ツール導入件数の内訳である。現在導入件数ベースでのシェアが最も大きく、かつ市場全体の導入件数増に寄与しているSHIROFUNEのADFUNE、そして、3位のロックオンのTHREeは、現在その多くが中小規模の広告主/広告代理店向けに提供されている。

SHIROFUNE/デジタルインファクト調べ
中小企業向け自動入札ツールが、今なぜ増加しているのか。そこには検索連動型広告の運用業務が抱える課題と、顕在化していない需要がある。次回はこれらについて紐解いていこう。