今なぜABMが注目を集めつつあるのか
MZ:ABMの位置づけは理解できました。では、今なぜ古くて新しいABMに注目が当たっていると思いますか。
東野:今、MAの考え方はだいぶ普及してきていて、テクノロジーを駆使してマーケティングで実現できることへの理解はかなり浸透しています。そんな今だからこそ、MAにBtoBマーケティングのすべてを担わせるのではなくて、ABMと連携させることで、より成果につながるマーケティングが実現できます。
MZ:先ほどの、リード中心とアカウント中心というわけ方がわかりやすいですね。
東野:BtoBの世界は、営業部隊が強い組織体が多いです。マーケターは、いかに営業部隊が納得できる施策を打てるかが存在意義に関わってきます。現場の営業からすれば、今まで密に連携してこなかったマーケティング部門が、詳細なセグメントでのメールを配信しそれの反応がよかったからといって、無条件でフォローするのは、心情的に難しいというのが現実でしょう。
MZ:私たちは、マーケターの方々から話を伺う機会がよくありますが、その中でよく出てくるのが、「リードを共有しても、営業がクロージング(締結)してくれない」という話です。営業側からすると、マーケターが供給するリードはホットではない、という印象があるのかもしれません。
東野:そういった現状を改善するために必要なのは、営業部門とマーケティング部門が合意しゴールを定めることでしょう。その上で、現在実施しているMAが本当に正しいアプローチなのか、再検討することも必要になるかもしれません。
企業内のキーパーソンにターゲットを絞れるABM
東野:ABMがMAなどの言葉と並んで聞かれたりするのは、ABMがMAを否定する考え方ではなくて、MAの技術や概念を取り入れている仕組みだからです。
技術分野やアプローチは、ABMとMAは共通しているところが多々あります。今までは、的確に言い表せる最適なコンセプトがなく、なんでもMAという言葉に置き換えて語られがちでした。
MZ:ABMが出てきて、やっと的確に言い表せるようになったのでしょうか。
東野:その通りです。ぜひみなさんと共有したいのは、MAがダメと言いたいのではないこと。MAでできることはたくさんあるけれど、万能策ではなく、企業プロファイルに注目してアクションをするほうが成果につながりやすい可能性もあるということです。
毎年、弊社ではBtoBマーケティングに関する調査を行っています。その調査で、重視すべき見込み客(リード)の評価基準には「問い合わせ履歴」よりも上位に、「戦略的ターゲットかどうか」「企業規模について」「どのような業種か」という3項目が占めています。
ここで出てきた3項目をカバーするのは、MAだけでは厳しい。MAを提供してきた私たちだからこそ、余計に強く感じます。逆に、ABMだとしっくり来る。
ABMはビッグディール向きです。例えるならキーマンを一本釣りするようなイメージですね。KPIには商談化を据えると、より状況がクリアになるでしょう。
MZ:一本釣りの例えは、とてもわかりやすいですね。
東野:リードは数を追い求める傾向がある一方で、ABMは完全に質を追い求めます。