現状は30〜49歳男性層に強い支持を集める
初年度から全社的に強く成果を意識していると語る豊浦氏に、もう少し具体的に、半年経過しての成果について話を向けた。
「アクティブユーザー層について検証すると、30〜49歳の男性という、自販機のヘビーユーザー層と合致しています。初年度は自販機自体の新規ユーザーを拡げつつ、いかにヘビーユーザーのハートをつかむかをミッションに据えました。例えば、自販機にPOPを張ってアプリをDLしやすくした工夫なども功を奏していて、特に、リピーターの多い「ジョージア」(缶コーヒー)ユーザーに一定の結果が得られていますね」(豊浦氏)
また、手応えとなっているのが、リテンションの高さだという。これはヘビーユーザー層を中心に、新たなハビットが確立しつつあるとも言えそうだ。
「15本集めきったらもう止める、ではなくて、継続的に利用するユーザーが確保できていることも一つの成果と捉えています。この輪を、ライトな自販機ユーザーや新規ユーザーにも拡げるために、今後本格的なマーケティングを敢行予定です」(豊浦氏)
1日も早くクリティカルマスを達成したい
今後の見通しについては、どのような見解を持っているのだろうか?
新規ユーザー層を意識した、夏のキャンペーンの実績がそのヒントになりそうだ。2016年7月4日から、大阪市・京都市・神戸市・広島市・福岡市の5都市を対象に行われた「猛暑日になるとアクエリアスもらえる!」キャンペーンがそれにあたる。
「抽選で当たったユーザーにアクエリアス1本をアプリ上のドリンクチケットで渡したところ、8割以上のユーザーが引き換えるという、この種の施策では大きく想定を越える反応が得られています。「スマホ自販機」TMの対応状況から、西日本中心の5都市で行いましたが、急ピッチで東日本への対応も進めているところです」(豊浦氏)
こうした傾向からは、買い続ければ1本当たるというお得感とは別に、エモーショナルな購買体験としてポジティブに捉えるユーザーの増加が、鍵をにぎるということだ。
新しい試みなだけに、日常的なサポートの充実にも力を注いでいる。
「全国的に大規模なIoT施策を行うことになるので、特にスタート初期には接続の不具合など、トラブルの声も出ていました。真摯に受け止めるだけでなく、日々改善を続けて、盤石な体制を整えることも私たちの使命です」(豊浦氏)
こうした地道な積み重ねの先に生まれるオポチュニティを逃したくない、と豊浦氏は話す。
「他社の本格参入が始まる前に、この市場でいち早くクリティカルマスを獲りたいと考えています。そのためにも、スケールアップのためのさまざまな働きかけを続けて、どれほどのオポチュニティが得られるかが、今後の事業の鍵ですね」(豊浦氏)
リアルの生活空間を巻き込み、デジタル施策の可能性を拡張する「Coke ON」の成功の先に、日本コカ・コーラは確実に「デジタル・マーケティング4.0」を見据えているはずだ。今後の「Coke ON」の動向から目が離せない。
