カンター・ジャパンは、KANTAR TNSがグローバルで2016年に実施したデジタル機器やデジタル関連サービスの消費・利用動向調査「Connected Life」のデータやレポートを日本企業向けに発表した。
APAC地域で急速に伸びる、InstagramとSnapchatの利用率
アジア・パシフィック地域のスマートフォンユーザーは今や10億人を超えていると言われている。文字を必要としない手軽さとモバイル技術の発展により高性能化し続けるスマートフォンのカメラを使って、ユーザーは写真を撮ってすぐに共有できるInstagramやSnapchatなどの写真共有プラットフォームを利用する機会が年々増えている。
Instagramの利用者はマレーシアで最も多く、週1回以上のネットユーザーの73%がInstagramを使ってきれいに編集した写真をフォロワーと共有している。香港とシンガポールでの人気も高く、それぞれ70%と63%がInstagramを利用している。
一方、カスタマイズした「消える」写真を送る人気の高まりを受けて、Snapchatもアジア・パシフィック地域各地で利用が伸びている。Snapchatが最も浸透しているのは香港で、利用者は約半数(46%)にのぼる。またシンガポールやマレーシア、ニュージーランド、オーストラリアでは、約3人に1人がSnapchatで写真を送っている。
日本においてはスマートフォンユーザーが5,580万人を超え、週1回以上のネットユーザーの24%がInstagramを、9%がSnapchatを利用しており、前年(2015年)の利用率(Instagram13%、Snapchat4%)と比較してもほぼ倍増となる。
InstagramとSnapchatの人気が上昇しているのはアジアの先進国だけではない。アジアの開発途上国も遅れをとっておらず、平均すると40%がInstagramを、13%がSnapchatを利用している。モバイルが優先されるこうした国々では、多くの人々にとってインターネットへの中心アクセスポイントとなるソーシャルメディアがウェブ経験の全体を占めており、モバイルの浸透率と共にこれらのプラットフォームの利用が急激に増加している。Instagramはこうした国々における主要な写真プラットフォームであり、その利用者はベトナムでは24%、カンボジアでは16%となっている。
ユーザーの年齢層
ソーシャルメディアにおける最大のユーザーグループはどのプラットフォームでも若年層だが、55~65歳の高年層の間でも勢いを増している。アジア・パシフィック地域の55~65歳の高年層ユーザーの5人に1人(19%)がInstagramを利用しており、これは昨年同時期に比べて47%もの増加である。瞬間をとらえた写真を共有することへの関心も高まりを見せており、55~65歳のSnapchat利用者の割合は9%で、2015年から2%増となった。これは、日本においても同じ傾向と言える。
インフルエンサーを活用し、消費者の関心を引く
InstagramとSnapchatのようなプラットフォームの台頭は、ブランドや企業にとっては消費者をとらえる新たな機会を意味する。しかし、ブランドは多様化するソーシャルメディアを活用するにあたって、消費者の態度の変化に注意する必要がある。2016年の「Connected Life」調査では、日本のインターネットユーザーの約4分の1(23%)が、ブランドが発信したソーシャルメディアの投稿やコンテンツを「積極的に無視」していることが明らかになった。
また、同じく4分の1の(25%)が、すでにオンライン広告に「常に追い回されている」と感じていることを踏まえると、消費者にアドブロッキングモードを使われないよう、ブランドや企業は押し付けがましい印象を与えないようにすることが肝要だ。
さらに、同調査では、インフルエンサーとセレブリティが消費者と結び付く鍵を握っていることが明らかになった。アジア・パシフィック地域の16~24歳のオンラインユーザーの40%、日本においては15%のユーザーが、ブランドについて新聞やブランドの公式サイト、テレビ広告などオフィシャルな情報よりも、他の人がオンラインで言っていることを信用すると答えている。ここでも若者は、インフルエンサー志向の強いグループであり、ブランドが発信する情報よりもブロガーや仲間を信頼している。
年齢の高い世代では、「インフルエンサーのネットワーク」は今もなお友人や家族が中心だ。ただしこの世代も若年層のトレンドを取り入れていることを考えると、彼らのインスピレーションや情報をソーシャルメディアのインフルエンサーから得ようとするようになる日も近いかもしれない。
Instagramは高度な編集機能によって魅力的に見えるように手を加えたイメージ共有の場であり、一方のSnapchatは生の瞬間をとらえたユーモアを伝える場である。大切なのは、消費者の利用を妨げることなく、ブランド側が作ったコンテンツを各プラットフォームでの自然な体験としてシームレスに融合させ、一貫したブランド価値を伝えることだ。そのためには、ブランドや企業は各プラットフォーム向けのコンテンツ作成に取り組むことが鍵となる。
【調査概要】
調査名称:『Connected Life』
調査内容:媒体の消費、デバイスインフラ、デジタル活動、時間帯別の使用、調査/購買(オンライン、オフライン)、回答者プロフィール、分野別タッチポイント、およびオンラインカスタマーサービス
調査対象:16歳から65歳のインターネットユーザー
調査時期:2016年6~9月
調査方法:主にインターネット調査(日本含む)。国により対面などオフラインでの調査
対象者数:57か国、約7万人
調査実施:KANTAR TNS
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