顧客データをビジネスモデルに組み込んだ3つの形態
「顧客エンゲージメント」というと、顧客への付加価値的なサービスや、それを通じた囲い込みなどを思い浮かべるかもしれない。しかし、ITを駆使して成長している企業は、単なる“付き合い方”をはるかに超える戦略をもって顧客に向き合い、そのデータを収集・活用して自社のビジネスを力強く推進している現状がある。
「消費者を押さえた企業が、エコシステムをコントロールするパワーを持つ」と語るのは、SAPジャパンにてSAP Hybrisのディレクターを務める阿部匠氏。顧客が日々発信するデータを元に大きなビジネスを展開している例が、すでにいくつも挙がっているという。ユーザーとの接点を強化することが、そのままビジネスモデルに組み込まれているのだ。
阿部氏によると、この例には大きく3つのパターンがある。1つ目はGoogleやCCCのように、消費者の検索行動や購買行動、ポイントを蓄積する行動などの情報を元に、企業へのコンサルティングやアライアンスなどでマネタイズする形。2つ目はAmazonや楽天のように、圧倒的な集客力を武器に、自社のフィールドへと企業を誘致して手数料で利益を上げる形。
そして3つ目はAppleやUberのように、自社の製品やプラットフォーム上で使うサービスやリソースを抱き込んで、自社のブランドでパッケージにして顧客へ届ける形だ。
IoT化によってBtoBでも新たなビジネスが展開
3つ目の形態は先に挙げた2つとは少し毛色が異なるが、いずれもその企業がハブとなり、顧客と他の事業者をマッチングさせていることが特徴だ。「一見ほかの2つの形とも似ていますが、たとえばiPhoneにアプリをダウンロードするとき、私たちはApp Storeで購入していると思っていますよね。アプリの制作会社自体はあまり意識していませんし、Appleの傘の下で自由に消費行動を行うことで、結果的に流通量も増しています。Uberも、Uberに配車を依頼しているつもりで、実は裏側はマッチングビジネスになっています」(阿部氏)
この3つ目の形は、BtoB事業でも一般化しつつある。たとえば医療の現場で胃カメラを例にとると、以前は物理的に分断されていたカメラの機器本体、撮影画像を出力するプリンタ、患者データの管理基盤などが、デジタル化が進んだ今ではすべてつながるようになった。そこに着目した企業が、各事業者を統合して自社ソリューションとして提供し始めたことで、病院側の導入の手間や使い勝手は大きく向上している。
見逃せないのは、IoTが進み、モノ自体がソフトウェア化してつながるようになったことで、納品して終わりではない継続的な情報収集が可能になっていることだ。病院がこのソリューションを使い続ければ、ベンダーはそのデータを分析して新たなサービスや課金形態を提案することもできる。
BtoCではスマートフォンが、BtoBではIoT化したソリューション自体が顧客と直接つながるセンサーになり、ビジネスが続く限りユーザーデータが流れ込んでくる。「顧客との接点を強化することは、顧客エンゲージメントの強化に他ならないのですが、そのままビジネスモデルの構築にも結びついている現状にはこうした背景があるのです」(阿部氏)
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