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SAPが語るビジネス変革とマーケティング(AD)

顧客データはビジネスを推進する資産~成功を収める先進企業、3つの事業形態

 消費者に関する多種多様なデータを収集し、自社の顧客になり得る人に効果的にアプローチできるようになった今、多くの企業が「顧客エンゲージメント」をいかに深く築いていくかに注目している。SAPジャパンの阿部匠氏は「顧客エンゲージメントの構築は、単にお客様とうまく付き合えばいいのではなく、もはやビジネスモデルそのもの」と指摘する。「SAPが語るビジネス変革とマーケティング」第4回は、顧客データを資産としてマネタイズする先進企業をひも解きながら、IT技術を自社のビジネス推進の味方につける策を探る。

顧客データをビジネスモデルに組み込んだ3つの形態

 「顧客エンゲージメント」というと、顧客への付加価値的なサービスや、それを通じた囲い込みなどを思い浮かべるかもしれない。しかし、ITを駆使して成長している企業は、単なる“付き合い方”をはるかに超える戦略をもって顧客に向き合い、そのデータを収集・活用して自社のビジネスを力強く推進している現状がある。

 「消費者を押さえた企業が、エコシステムをコントロールするパワーを持つ」と語るのは、SAPジャパンにてSAP Hybrisのディレクターを務める阿部匠氏。顧客が日々発信するデータを元に大きなビジネスを展開している例が、すでにいくつも挙がっているという。ユーザーとの接点を強化することが、そのままビジネスモデルに組み込まれているのだ。

SAPジャパン SAP Hybris ソリューション事業本部 ソリューション エンジニアリング ディレクター 阿部匠氏
SAPジャパン SAP Hybris ソリューション事業本部 ソリューション エンジニアリング ディレクター 阿部匠氏

 阿部氏によると、この例には大きく3つのパターンがある。1つ目はGoogleやCCCのように、消費者の検索行動や購買行動、ポイントを蓄積する行動などの情報を元に、企業へのコンサルティングやアライアンスなどでマネタイズする形。2つ目はAmazonや楽天のように、圧倒的な集客力を武器に、自社のフィールドへと企業を誘致して手数料で利益を上げる形。

 そして3つ目はAppleやUberのように、自社の製品やプラットフォーム上で使うサービスやリソースを抱き込んで、自社のブランドでパッケージにして顧客へ届ける形だ。

IoT化によってBtoBでも新たなビジネスが展開

 3つ目の形態は先に挙げた2つとは少し毛色が異なるが、いずれもその企業がハブとなり、顧客と他の事業者をマッチングさせていることが特徴だ。「一見ほかの2つの形とも似ていますが、たとえばiPhoneにアプリをダウンロードするとき、私たちはApp Storeで購入していると思っていますよね。アプリの制作会社自体はあまり意識していませんし、Appleの傘の下で自由に消費行動を行うことで、結果的に流通量も増しています。Uberも、Uberに配車を依頼しているつもりで、実は裏側はマッチングビジネスになっています」(阿部氏)

 この3つ目の形は、BtoB事業でも一般化しつつある。たとえば医療の現場で胃カメラを例にとると、以前は物理的に分断されていたカメラの機器本体、撮影画像を出力するプリンタ、患者データの管理基盤などが、デジタル化が進んだ今ではすべてつながるようになった。そこに着目した企業が、各事業者を統合して自社ソリューションとして提供し始めたことで、病院側の導入の手間や使い勝手は大きく向上している。

 見逃せないのは、IoTが進み、モノ自体がソフトウェア化してつながるようになったことで、納品して終わりではない継続的な情報収集が可能になっていることだ。病院がこのソリューションを使い続ければ、ベンダーはそのデータを分析して新たなサービスや課金形態を提案することもできる。

 BtoCではスマートフォンが、BtoBではIoT化したソリューション自体が顧客と直接つながるセンサーになり、ビジネスが続く限りユーザーデータが流れ込んでくる。「顧客との接点を強化することは、顧客エンゲージメントの強化に他ならないのですが、そのままビジネスモデルの構築にも結びついている現状にはこうした背景があるのです」(阿部氏)

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鍵は顧客接点を“面”で広げるか、“線”で広げるかの選択

 前述の3つのパターンを参考に顧客接点を強化し、ビジネスを推進するとしたら、どのような考え方をすればいいのだろうか? 阿部氏は前提として「顧客との付き合いを“点”で終わらせない、新しいエンゲージメントモデルが必要」と説く。国内・海外問わず、これには2つの方向性があるという。

 1つは、接点を“面”で広げること。たとえば、同じ顧客に相対する他社とのエコシステムにおいて、ある顧客との間で1回100円の売上が生まれているところ、別の9社との間で生まれている900円分をまとめれば、売上は1000円になる。そこから各社へ分配するとしても、1社で活動するよりも利幅があるだろう。パートナーとなる9社には、その分ポイントによる顧客囲い込みや販売機会の増大などのメリットを還元するという方法だ。

 もうひとつは、接点を“線”で広げること。言い換えれば、LTVを最大化する方向性だ。「相性がいいのは、月額課金で利用するサービス。ネット回線を含むインフラ系、それから動画配信などのメディア系などは今後も増えそうです」と阿部氏。

 BtoBのIoT化したソリューションでも、利用量に応じた課金が可能なサービスなら、このモデルが適用できる。「たとえば、精密機器を掃除するための圧縮空気を扱う機械を工場などに売っていたメーカーは、合わせて納品していた圧縮空気自体の利用量データを継続的に把握するようにして、月額課金制を導入しました。同時に、サービスプランも新たに構築しています。つまり、空気が切れて一瞬でも掃除ができないと機器が壊れて大きな損失が出るのか、それほど重要でないのかによって選択してもらうのです」(阿部氏)

最も利益率の高い「圧縮空気」の売り方とは?

 当然、機器が壊れると損失が大きい企業では、高額でもサービスが手厚いプラン、ベンダーにとっては利益率が高いプランに入るはずだ。これは、以前のように機械と空気ボンベを納品するビジネスモデルとは収益構造がまったく違うだけでなく、より事業継続性があり、自社に高いロイヤルティを感じてくれる顧客を大事にすることにもなる。画期的なビジネスの転換だといえるだろう。

 「同じ製品やサービスでも、顧客によって感じる価値が違うケースはBtoCでもBtoBでもあり得ます。顧客が感じる価値によって値付けを変えるのも、収益を高める重要な方法です」と阿部氏は解説する。

 では、前述の2つの方向性で顧客エンゲージメントを強化し、ビジネスモデルを転換するためには、どうすればいいのだろうか? 顧客データが重要だといっても、何から着手すればいいのか、迷う企業も多いのが現状だ。

 「面で広げる、線で広げるといういずれの方向性とも、1.デジタルの顧客接点をしっかり持ってデータを収集し、2.それを活用する、という2つの段階をそれぞれ高いレベルで構築することが不可欠です。さらに、データを活用した先に顧客へ何らかの価値をフィードバックすれば、エンゲージメントがさらに深まり、好循環が生まれます」(阿部氏)

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実現には守りと攻めの両方をカバーするデータ基盤が必要

 まずデータ収集については、冒頭で触れたようにBtoCならスマートフォンを重要な接点として、今やオムニチャネルでさまざまな接点を設けることが可能になっている。ウェアラブルデバイスの発展や、IoT化によって壁やテーブルなどがデジタルデバイス化することによっても、接点はさらに増えるだろう。だが、得られるデータを一元化できないのでは意味がない。

 つまりポイントになるのは、多種多様なデータの差分を吸収しながら格納できるデータベースだ。しかも、このデータベースに求められるのは、顧客データを扱うだけではない。前述のようにエコシステムにおける協業が発生すると、顧客への一括請求や、パートナー各社への個別の支払いも発生する。そのため、いわゆるバックオフィス業務も支えられる基盤が必要になる。

 次にデータ活用の段階では、一転してマーケティングというフロント業務を扱うことになる。今、そこに欠かせない機能のひとつが、マーケティングオートメーションによる自動化だ。One to Oneのアプローチを実現し、マッチング性の高いオファーをしなければ、成果は上がらない。だが、そのためには高度な機械学習エンジンも必要になってくる。

 つまり、バックオフィス業務とマーケティング、守りと攻めのように相反する2つをワンストップで高度に実現できる基盤とソリューションがあれば、顧客データから新たなビジネスモデルを生み育てる大きな後押しになるわけだ。

ビジネスを切り拓くITを一気通貫で担う「SAP Hybris」

 実際のところ、こうした守りと攻めといった正反対の概念をひとつのパッケージソリューションにまとめるのは、極めて難しいと阿部氏は語る。いわゆる基幹業務ソリューションを伝統的に情報システム部が扱い、マーケティング系のソリューションはマーケティング部が扱ってきて、それらに互換性がないためにデータの有効活用どころか社内のデータベースの一元化もできない……という声が多いのも頷ける。

 その点をクリアしているのが、SAPのデータ活用ソリューション「SAP Hybris」だ。多様なデータの一元化と高速処理が可能なデータベース「SAP HANA」を基盤に、バックオフィス業務から最先端のマーケティングまでを可能にする。

 「データベースを中核に、守りから攻めまでのビジネスサポートを一気通貫で提供できるのは、今のところSAPが唯一のベンダーです」と阿部氏。それぞれの発想は、いってみれば思想が違うので、同じ企業文化の中からは生まれにくく、1社での提供は実現しづらいのだ。その点を、SAPでは顧客へ届ける価値を明確化した上で企業買収という形で解決し、高度にインテグレーションしながら実績を重ねてきた。

 ソリューション導入時には、その企業にしっかりとフィットするようサポートする点もSAPらしい。「大事にしているのは、デザインシンキングです。単なるデータ管理ITではなく、ビジネスを推進するITを導入するわけなので、我々のような外部ベンダーがいい意味で触媒となって、継続的に運用できる意識の共有から体制づくりまでフォローします」と阿部氏。

 顧客と密接になることで得られるデータを資産に、すでに新たなビジネスへチャレンジする企業が続々と出始めている。遅れをとる前に動くことはもはや必至といえそうだ。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/12/16 11:30 https://markezine.jp/article/detail/25706