B.LEAGUE、CMSの統一でデータ取得も活用は……
――今後は取得したデータをどう活用すべきでしょうか?
CMSを統一したことで取得できるようになったデータとして最も大きなものは、チケットの購入情報です。これまではチケットサイトへの送客までしかデータが取れず、その後本当にコンバージョンしたのか追うことができませんでした。現在は流入元がどこで、何を閲覧し、どこからチケットサイトへ飛び、チケットを購入したのかどうかが一元管理できるようになりました。

ここまでデータが揃っていればマーケティングに活用するイメージも湧きやすい。Salesforceを導入してCRMを推進したり、Marketoを導入して顧客データに対してMAを活用したり。
ただ、私はチーム側の将来を懸念しています。B.LEAGUEだけでも、現在1部2部合わせて36チームあります。リーグは全体のブランド価値を高めることが目標ですが、チームはチケットを販売しなければならない。さらにその後はマーチャンダイジングを進め、グッズを売らなければ顧客単価を上げることができません。そのためには、結局はデータをチーム自身が活用し、チケットや物販の販促を進めなければならないんです。
――各チームにちゃんとしたデジタルマーケターがいることが理想ですね。
そうなんですが、これがなかなか難しい。実際に我々が何かを提案しても、「チームとしてはやりたいが、運用できる人がいない。お金がない」というケースが多々あります。金銭的な問題は経営判断でなんとかなりますが、人材に関してはいないことにはどうしようもできません。将来的には、当社の社員をチームに常駐させる形のソリューションの提供も視野に入れて、動き始めています。
日本のスポーツ業界におけるデジタルマーケティングを盛り上げるために
――なぜ日本では、スポーツ業界でのデジタルマーケティングが進まないのでしょうか?

ポイントは2つあると思います。1つはスポーツ業界でマーケティングを行える人材の不足です。もう1つは、スポーツ業界においてデジタルマーケティングが重要で、そのための人材を確保したり、育てる必要があると判断できる経営者が少ないこと。どちらも、人的な部分です。マーケティングとスポーツ、どちらかはわかる人材はいるのですが……。「スポーツは大好きだし、日本でスポーツを盛り上げたい! でもマーケティングは全くわからない」という人は、たくさんいます(笑)。
――日本のスポーツ業界におけるデジタルマーケティングを盛り上げるためには、どうすれば良いでしょうか?
現状、我々にとってはブルーオーシャンとなっています。それは、スポーツ業界がデジタルマーケティングに使える予算が少なく、他社が参入してこないからです。我々の場合ですと、やることは限られるものの、年間400万円で映像制作、広告運用、ページ制作を請け負っている例もあります。我々はスポーツ事業以外に収益があるので耐えられていますが、スポーツ事業だけでは廃業です。
ただし、受注したシーズンが年間400万円だとしても、そこで成果を上げて集客が増えれば、翌シーズンは1,000万円になりうるのがスポーツ業界です。ぜひWebの広告代理店や、ある程度規模や力がある企業にこのマーケットに参入していただき、2020年の東京オリンピックに向けてマーケット自体を盛り上げていきたいですね。日本のスポーツ業界を、デジタルマーケターの方たちと牽引して行ければと思っています。
――ありがとうございました。
MarkeZineにて、平地氏による連載「元プロ選手のマーケターが語る、スポーツ×デジマ最前線」が近日中に開始予定です。お楽しみに!