Jリーグのクラブですら、アプリを活用できていない
――現在はどのようなプロスポーツチームのマーケティングに関わっているのですか?
初めに関わったのは、サッカーの北海道コンサドーレ札幌です。その後バスケの千葉ジェッツのWeb制作、コンテンツ制作、運用型広告の管理を行いました。結果、コンサドーレ札幌はWebからのコンバージョンが250%に、千葉ジェッツは観客動員数が約2倍になりました。もちろん各チームさんの努力があってこその結果ですが、この成果を知っていただき、2016年度にはバスケチームからの受注を多数いただきました。

プロスポーツチームのデジタルマーケティングで面白いのは、SEOに関する需要の無さ。他の業界では、SEOは今でもある程度需要がありますが、プロスポーツチームの場合はほとんどありません。ユーザーが情報を検索する際にチーム名をいれるため、対策を打たなくても十分検索結果の上位に表示されるんです。
SEO以外の集客面では、広告、SNSの運用が主です。今後力を入れたいのは、チーム独自のアプリ。Jリーグだと導入しているチームはJ1からJ3までの全56チーム中7チームしか無く、その中でも、私が見るかぎりしっかりと活用できているのは大宮アルディージャくらいです。逆を言えば、サッカーのようなメジャースポーツですら、きちんと活用できているチームがほとんどいないのが現状です。
チームだけでなく、マーケティングにもデータ活用を
――B.LEAGUEはデジタルマーケティングを積極的に進めている印象がありますが?
そうですね、評価できる軸として大きく2軸あると思います。1つはチーム公式WebサイトのCMSを統一したことです。アメリカのメジャーリーグ、MLBやMLS、そしてNBAでも導入されていて、メリットとしてはリーグがデータを一元管理できる点。将来的にそれを用いてマーケティングを行うことが可能となる、インフラを作ったわけです。これは大きな進化だと思います。
デメリットとしては、サイトが似たような作りになってしまうので、独自性が出しにくい点。また、スマートフォンファーストで設計されているため、地方のスマートフォンを持たない層をターゲットとすることが難しいなど、本来、エリアの特性にあわせてマーケティング内容を変更しなければならないのですが、そのようなアウトプットが出しにくい点があります。

もう1つは、デジタルマーケティングというよりはデジタルの話になるのですが、スタッツ(選手のプレー内容に関する統計数値)などのデータ化に力を入れています。映像とスタッツをかけ合わせて閲覧できる仕組みを作り、チームがその情報を見ながら、判断の材料として使えるようになっています。ただし、データを活用したチーム強化については、野村克也氏の「ID野球」のように日本でも昔から進められています。問題はマーケティング側での活用が進んでいないことです。
――顧客データの活用は進んでいるのでしょうか?
開幕して間もないので、まだこれからですね。現在は、チームごとに異なるコンテンツの質をリーグ側が調整している段階です。たとえば「試合後は結果を写真付きでアップしましょう」といった、ディテール部分のルールづけから動いているようです。