本当のPDCAは、「階層分け」して複数回す
――『鬼速PDCA』と、通常のPDCAとは何が違うのでしょうか?

冨田:『鬼速PDCA』の「鬼速」とは、「速く、深い」ことを意味します。本書で「3日ごとにPDCAを回す」ということも書いていますが、PDCAは回す頻度が速ければ速いほど成長できます。こうしたスピード感は、Webマーケティングの世界では特に意識されているのではないでしょうか。
しかし、速いだけでなく「深さ」も重要です。PDCAというと、円形の一つのサイクルをイメージされる方が多いと思います。しかし実はこれが大きな間違いで、PDCAはゴール設定の大きさによって上位のPDCAと、それを細分化し、階層化して回さなくてはいけません。
まず、大きな目標を「大PDCA」と設定し、それを達成するためのPDCAを「中PDCA」、さらにそれを達成するためのPDCAを「小PDCA」として、階層分けを行います。
たとえば「5年以内に年収1,000万以上を稼ぐ」という目標を「大きなゴール」とした場合、そのための方法として「今の会社で圧倒的な成績を上げて転職する」や「MBAに進み、外資系コンサルティング会社に入る」といった、「中程度のゴール」が見えてきます。この課題のためのPDCAが「中PDCA」となります。「成績を上げて転職する」というゴールを選ぶ場合、それを達成するために「年間で売り上げ10億円を達成する」「営業スキルを磨く」といった、さらに細かい「小ゴール」が見えてきます。これを達成するために「小PDCA」を作り、PDCAサイクルを階層に分け、大中小それぞれをいかに効率よく正確に、速く回していくかで、成長スピードが大きく変わってきます。
解決策は、具体的になるまで掘り下げよう
――PDCAを階層に分けて回す場合、「中小のPDCA」が、ゴールへの道のりに大きく影響する可能性がありますね。
冨田:PDCAは、仮説に基づいて行動して検証する方法です。つまり、「最初の仮説の精度」が高ければ高いほど、最短距離で目標にたどり着くことができます。
たとえば、「自転車のパンクを直したい」というとき、「穴をふさぐ」ことが最もインパクトの大きい解決策です。逆に、最もインパクトの小さい解決策を選んでしまった場合は、いつまでたっても解決まで進むことはできません。大学入試などでよくある、数学の記述問題だと、最初の設問を間違うと、残りの設問が解けなくなったりしますよね。
PDCAを回す際に注意したいことは、インパクトの大きな仮説(解決策)を最優先して試すこと。そのためには、因数分解を行って解決策を可能な限り具体化・定量化することが必要です。
たとえばサッカーの試合などで「気持ちが入っていなかったから負けた」という、抽象的な反省があったりしますよね。この「気持ち」はなんなのか。「ゴール間際のツメが甘かった」「最後の5分で集中力が切れた」「監督との意識のズレで試合に集中できなかった」など、より具体的な要因を探します。そうすることで、「ゴール間際のボールの予測に気をつける」「体力を温存しながら試合をする」「監督と話し合いをする」という、具体的な解決策を導くことができるでしょう。このように、「気持ち」というあいまいな課題でも、因数分解をすることで「スキル」や「戦術」が原因だったことが見えてきます。
Webマーケティングで言えば、「1万人集客をしたい」という最終目標があるとして、「どの経路での集客に力を入れるか」という道筋を考えますよね。FacebookならFacebook広告を最適化するPDCAを、リスティングならリスティング広告のPDCA、自然流入ならSEOのPDCAを回す、というように、というように、やはり細分化されたPDCAを同時に回すことが必要になってきます。デジタルではそれぞれの経路が定量化されているので、その中で最も効果が高そうなものからPDCAを回すことが確実です。