SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine必読書レビュー

第1回 マルコム・グラッドウェル著 『ティッピング・ポイント~いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』


“Windows95発売”こそがオンラインマーケティングの“ティッピング・ポイント”

“ティッピング・ポイント”とは、ある現象が一定の閾値(しきい値)を超えると爆発的に広まる、という閾値のことを結果的に意味するが、“短期間に爆発的に広がる”というイメージをオンラインマーケティングに持っている人は多いかと思う。本書の考察については、(最初のアイディアから)10年経った現在では、当たり前になっていたり、陳腐になっていたりするものもあるが、基本的な考え方が否定されているわけではない。

結局のところ、95年以降のオンラインマーケティングは、“ティッピング・ポイント”をいかにして超えるかという議論を続けているにすぎない。言い換えれば、指数関数的に情報が増加しているネットワークの世界で、どのようにしてティッピング・ポイントを捕らえるかが目下の課題であり、その課題をクリアするためには、まずは「ティッピング・ポイントとは何か」の理解が必要ということだ。そういった意味で本書は、オンラインマーケティングを考える上の古典として重要な一冊と言ってもいいだろう。

では、オンラインマーケティングの「ティッピング・ポイント」はいったいどこにあったのか?本書になぞらえて考えてみると、“Windows95発売”がそれであったと言えるだろう。
95年を境にして、私たちを取り巻く情報環境は大幅に変化した。今では当たり前すぎる話だが、ネットワークの普及というのは、我々の思考様式に大きく影響を及ぼしている。この影響は送り手であるマーケティング関係者はもちろんのこと、マーケティング関係者が想定する受け手=消費者にも多大な影響を与えていることに留意されたい。もちろんテクニカルな方法論も重要だが、マーケティングは人の認識のあり方に深く影響を受けていることを改めて思い出したい。

マーケティング関連書籍というと、TIPSや即効的なノウハウが求められがちであるが、「こうすればうまくいく」といった絶対法則はない。オンラインに限らず、マーケティングに取り組む上では、その背景――社会状況や社会心理の変化を読み取る必要がある。『ティッピング・ポイント』は決して実践的なマーケティング本ではない。しかし、ここ10年で起こった思考の変化を特徴的に捉えた著作であることは間違いないだろう。各論については異論もあるだろうが、この本が収めている射程は思っているよりも広い。未読のむきはぜひとも一読をお奨めする。

『ティッピング・ポイント~いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』は、2001年6月に『なぜあの商品は急に売れ出したのか―口コミ感染の法則』として改訂されています。中身はほぼ変わっていないので、『ティッピング・ポイント~』が入手困難な場合は『なぜあの商品は~』をお求めください。


リクエスト募集!
このコーナーでは、読者の皆さんの「気になっているけれどまだ読んでない」「買ってみてハズれたら嫌だな」という本を大屋友紀雄氏が代わりに読んでレビューしてくれます。リクエストがあったらコメント欄にどしどし書いてください!

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
MarkeZine必読書レビュー連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

大屋 友紀雄(オオヤ ユキオ)

音楽ライター~デザイナーを経て97年、映像企画会社「NAKED INC.」の立ち上げに参加。デザインもライティングもマーケティングもするので、最近自分が何屋なのかわからなくなってしまい、あげく「コンテンツ芸者」と名乗るようになってしまった。6月3日に公開された、同社が企画・製作を手がける映画『LOVEHOTELS―ラヴホテルズ―』は大成功のうちに終了。地方への拡大を予定している。詳しくは以下
http://lovehotels.excite.co.jp/
NAKED.INCウェブ
同社運営ウェブ「NIZOO」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2006/07/12 21:16 https://markezine.jp/article/detail/25

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング