7つのチャンネルへリニューアル、厳選した情報を提供
2017年5月に5周年を迎える、グライダーアソシエイツのキュレーションメディア「antenna*」では、2月に大きなリニューアルを実施した。1次取材を行う出版社やラジオ局、Webメディアを中心に300ほどの媒体と契約し、ユーザーを各媒体への送客にも注力する姿勢はそのままに、見せ方を大きく変更。「プレミアム」「woman」「man」「暮らし」「おでかけ」「エンタテインメント」 「コラム」の7つのチャンネルを置き、それぞれチャンネルオーナーを立てて編成する体制とした。
antenna*ではサービスを運営する上で、「Qualia」という概念を重要視している。質、とりわけ主体的な体験がともなう質感を意味する言葉だ。antenna*で表現されるユニークコンテンツを配信し、デジタルデバイス上での五感を刺激するような伝え方を模索しながら、最近では提携メディア・広告主とのイベント共催などにも積極的だ。
また、閲覧データをはじめとするユーザーデータの分析を通して、昨年末から提携メディアや広告主である企業に知見を提供するサービスも開始。こうした独自の事業展開は早くからナショナルクライアントを中心に評価され、多数のブランドのパートナーとして支援を行っている。
antenna*は今年4月に、ブランディングの潮流として10のキーワードの発表を予定している。2017年、全体を集約するキーワードは「回帰と変革」。「ユーザーも情報の本質的な価値を見極めるようになり、同時に企業も、コミュニケーション施策において何が重要なのかを見直す動きがあります。たとえば変化し続けるラジオの良さが改めて注目され、広告出稿量が増えていることなども、回帰と変革という流れを感じさせます」と荒川氏。講演では、以下の5つが紹介された。
- 加速する借脳社会
- コンテンツ流通構造のさらなる変化
- ブランド経験マネジメント
- Relevancy 再認識とエンゲージメント
- Trans-Fusion
求められる借脳社会への対応
荒川氏が1つ目のキーワードに挙げたのは「加速する借脳社会」。ここでいう借脳とは、かつては自分で覚えたり調べたりする必要があった情報も、今やネットで検索すればすぐにわかるため、まるでネットに脳の一部を借りているような状態を意味している。それは人間の能力を拡張する一方で、スマートフォンを長時間使っている人は記憶力の低下や、物事への関心が薄れるといった調査も報告されている。
良し悪しはあれど、この借脳社会の加速はもはや止められない。この傾向が、広告主や広告会社にとってネガティブに表れている点として、荒川氏は昨今取りざたされているアドブロックを挙げる。
「日本はまだアドブロックの利用率がどの年代においても低いのですが、他の先進国を見ると、若年層では半数以上という国もあります(※)。これまでのように、表示された広告をスキップするのと違い、アドブロックが浸透すると広告の流通自体が止まり、広告主にも広告事業者にも大きな影響が及びます。今後導入率がどう推移していくか、注目しておく必要があります」(荒川氏)
※出典:Reuters Institute DIGITAL NEWS REPORT 2016内「Proportion within each age group that currently use Ad-Blocking」http://digitalnewsreport.org/survey/2016/overview-key-findings-2016
一方で、借脳社会だからこそ生まれているサービスもある。たとえば、スタイリストが好みの服を選んで送ってくれる、月額制のファッションレンタルサービス「airCloset」は、都市部の女性を中心に人気だという。「考えることからも解放する、こうしたサービスは、他の業種や業態でもビジネスチャンスがあると思います」と荒川氏。