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The NEXT Branding with antenna*(AD)

購入者の周囲にもブランドを広める LEXUSが挑戦するコンテンツマーケティング

 ラグジュアリーブランドとして1989年に北米で誕生し、日本では2005年より展開しているレクサス。国内の自動車市場が停滞する中、2016年の販売台数は前年比108%の伸びを見せ、初めて5万台を突破した。テレビCMなどのマス広告はもちろん、antenna*を活用したプロモーションなどマスとデジタルを統合したブランド施策を進めている。Jマーケティング室長を務める沖野和雄氏は「購入者の周囲にも、ブランドへの好感を広げたい」と語る。

世界的なブランドの“グローカル”マーケティング

MZ:ラグジュアリーブランドとしてグローバルで確固たるポジションを築いているレクサスは、国内外ともに販売台数が好調だそうですね。今回は、レクサスのブランディングに対する考え方や、現在どういった課題に対してコミュニケーションを展開されているのかをうかがいたいと思います。まず、ブランディングの体制と、沖野さんが率いるJマーケティング室のミッションなどを教えていただけますか?

トヨタ自動車株式会社 レクサスブランドマネジメント部 Jマーケティング室 室長 沖野和雄氏
Lexus International レクサスブランドマネジメント部 Jマーケティング室 室長 沖野和雄氏

沖野:レクサスはトヨタ自動車の中で“レクサスインターナショナル”という社内カンパニーを形成しており、グローバルでのブランドマネジメントと運用を指揮しています。Jマーケティング室は、その中でも日本のブランドマーケティングを担っています。ただ、現在グローバル戦略も日本から発信しているので、グローバルのブランディング方針を前提に、できれば日本が“How”を示してグローバルを牽引したい。そんな考えで動いています。

MZ:ラグジュアリーブランドだと、グローバルで統一された方針はかなり強いのではないですか?

沖野:一般的にはそういわれますが、レクサスのガバナンスは欧米のブランドほどは強固にしていません。実際の販売は地域ごとの状況や事情にかなり左右されるので、グローバルの方針とローカルのマーケットの整合性を融合させた“グローカル”で展開しているイメージです。

ブランドタグラインは「EXPERIENCE AMAZING」

MZ:改めて、ブランドのコンセプトを教えていただけますか?

沖野:レクサスのタグラインは「EXPERIENCE AMAZING」――喜びや感動にあふれる、すばらしい体験を提供したいとこのタグラインを掲げています。我々は単に車を売っているのではなく、車による体験を通してお客様のライフスタイルをより豊かなものにしていきたいと考えています。

 自動車ブランドではなく、ラグジュアリーライフスタイルブランドと標榜しているのもそのためです。我々がライフスタイル自体を提案するのではなく、レクサスやレクサスブランドの活動が顧客の潜在的な希望を揺り動かして、次の高みをご自身で発見できる、そんな刺激となるブランドでありたいと考えています。

MZ:レクサスを通して、少し先の自分にふさわしい新しいライフスタイルに気づくようなイメージですね。以前と違って現在は、マスメディアを通じた一方向的なブランド訴求が成り立ちにくくなっていると思いますが、現在のメディア環境におけるコミュニケーションをどう捉えていらっしゃいますか?

沖野:ご指摘のように、今はSNSを含めたオンラインのマーケティングも非常に重要になってきて、可能性がどんどん広がっており、以前のような一律に伝える方法だけでは立ち行かなくなっていると思います。そこで、ラグジュアリーブランドとして適切にマネジメントしながら、よりOne to Oneのコミュニケーションを目指しています。

情報過多の時代、どう届けるかが最大の課題

MZ:揺るぎないイメージを保ちつつOne to Oneを実現するのは、難しくはないですか?

沖野:簡単ではないですが、ラグジュアリーブランドを購入される方はその要望も千差万別なので、一般的な消費材よりも一人ひとりの興味関心や好みに寄り添う必要があると感じています。

 そこで大事になるのが、コンテンツです。レクサスのブランドの下に、バラエティに富んだコンテンツをそろえ、興味関心に応じて提供することで、ブランドエンゲージメントを高めたいと考えています。

 そうすると、コンテンツが莫大に必要になるので、適したコンテンツをグローバルでシェアすることも、我々にとって重要になってきています。まだ量的に十分とはいえないので、今後さらに充実させたいですね。

MZ:なるほど。そうなると、コンテンツへの接触の仕方も大きく変わっている今、どういった課題を感じられていますか?

沖野:まさに、コンテンツのデリバリーですね。情報過多の時代において、どうやってブランドのメッセージを届けるかが一番の課題です。

 今、生活者は否応なくたくさんのメディアに接触して忙しくなり、情報の取得にストレスを感じている部分もあると思います。自社サイトやSNSなどを通して、ファンとのコミュニケーションは取りやすくなっているものの、まだファンでない人に振り向いてもらうのは、ますます難しくなっています。

ユーザーの関心領域から入るantenna*でのアプローチ

MZ:レクサスは万人向けのブランドではないので、オーナーになれる方は限られていると思います。そのあたりのバランスをどうお考えですか?

沖野:我々は高級車の中では比較的ターゲットが広い、“マス・ラグジュアリーブランド”だと捉えています。実際には購入されない方々からも、素敵なブランドだとしっかり認めてもらう必要がある。せっかくオーナーになったのに、周囲に「レクサスって知らなかった」といわれたら申し訳ないですから。

 そのため、オーナーになりそうな可能性の高い方にリーチし、フィロソフィーを正確に伝えるのが大事なのはいうまでもありませんが、周囲のマスの方々に対するブランディングも同じくらい重要です。ただ、後者にはメッセージをぐっと薄めないと伝わらないので、同じコミュニケーションではうまくいかないですね。

MZ:すると、それぞれメディアにも向き不向きがありますか?

沖野:そうですね。フィロソフィーまで感じ取っていただける深いメッセージ訴求は、やはり自社サイトが得意とするところです。一方で、まだレクサスに興味がない人にレクサスの話をしても逆効果になってしまうので、マス広告なら一瞬で「あ、素敵」と感じてもらう以上のことは詰め込みません。

 Webなら、ユーザーの関心領域に寄り添うアプローチを心がけています。たとえばantenna*でのPR企画は、そういうイメージですね。

共通の話題をきっかけに、自然と距離を縮める

MZ:関心領域に寄り添う、とは、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?

沖野:食事の話をしているのに、急に新車の話が割り込んできたら構えてしまいますよね。そうではなく、食に興味がある人が集まるところにレクサスがふと隣に座り、同じ食の話題を切り出して、そこから自然とレクサスのブランド、自動車に近づいていく動線を作っています。まだエンゲージメントを築けていない人と接触するプラットフォームとして、antenna*は非常にすばらしいと思っています。

MZ:なるほど。最初にantenna*でコンタクトを取って、レクサスのオリジナルコンテンツへ誘引するんですね。

沖野:レクサスのブランド施策へリンクさせることが多いですね。具体的には、Webマガジン『BEYOND BY LEXUS』の記事や表参道のブランドスペース「INTERSECT BY LEXUS」、国際デザインコンペティションの「LEXUS DESIGN AWARD」などがあります。この他にも、様々なブランド施策でantenna*を活用しています。

外部パートナーとのタッグで知見を貯めていく

MZ:ちなみに、antenna*とはいつごろからパートナーシップを組んでいるんですか?

沖野:「INTERSECT BY LEXUS」のオープン時の出稿が最初なので、2013年秋からで、もう4年間のお付き合いになります。

「INTERSECT BY LEXUS」
「INTERSECT BY LEXUS」

 ユーザーの反応も参考になりますが、レクサスの記事に触れた人の属性分析や、他に見ている記事、嗜好するメディア、キーワードといった情報は、レクサス全体のコミュニケーションの検討にも役立ちます。メディアやユーザーの変化とそのスピードを考えると、もう自分たちだけでマーケティングするには限界なので、積極的に外部パートナーと組んで知見を貯めていきたいと考えています。

MZ:では最後に、今後の展望をうかがえますか?

沖野:ラグジュアリーライフスタイルブランドとしての認知とともに、皆さんを明るい未来に連れて行くビジョンを持ったブランドだと認識していただきたいと思っています。2017年1月に発表した新型「LS」が最先端の運転支援技術を導入しているように、プロダクトを通しても未来の形を示していきたいですね。

 また、デジタル戦略の中の1つとして4月18日、UIの改善とOne to Oneコミュニケーションの実現を目的にしたサイトリニューアルを行いました。設計する中で気を付けたのは、UXとデータ活用の2点です。UXはユーザーの興味関心ごとやユーザーのステージ(購入検討か購入検討段階ではないか)を考えて設計しました。データ活用に関しては、デジタル上で得られるデータを様々なブランド施策でも使えるよう、蓄積から可視化までできるものを構築しました。

 今後としては、ユーザーの興味関心ごとに興味を持ってもらえるよう、デジタルコンテンツ制作もさらに加速化させていきます。中でも特に注力したいのは、動画です。テレビCMでも、生活者がそのタイミングで自分のスマホを見ていると15秒は一瞬で、特にレクサスに興味がない人は気づかないので、長尺でじっくり伝えていかないと今の時代は厳しいと感じています。Webムービーなら数分の尺で豊かにブランドを表現できるので、最適な伝え方を探っていきます。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/04/19 11:00 https://markezine.jp/article/detail/26244