中国市場に踏み出すための具体的な工夫について
セッションの後半では、髙橋氏からグローバルでの対応について話を向けられた。ANAは現地(北京)に会社を置く。
「昨年から中国支社に予算がつく編成に変えました。国内本社と中国とで人材交流をしながら、スキルやノウハウを移植しつつ、運用などを北京支社にまかせて、アドオンで行うテストマーケティングは本社の予算で行っています。
フル加速でアクセルを踏むと、すぐに運用コストが消化され予算が尽きてしまいます。近々は地区ごとの最適化を始めたところで、北京のほか上海や杭州は重点地区で強めに、大連や瀋陽などは弱めに運用しています」(渡邊氏)
「日本の検索広告では、運用に用意していた予算をすべてご利用いただくことができないケースが多いのですが、そうはならないのが中国市場の巨大さですね」(中島氏)
あくまで国内のみに店舗を構えるマツモトキヨシはどうか?
「国内だけの組織中心、国内に基盤を置く事業構造だからできる強みを発揮したいですね。たとえば、国内向けと中国バイドゥ向けとの出稿費用はあまり変わりません。それだけ出稿の障壁は高くなく、実施への工数も多くはない。社内で継続的に運用を続けながら知見を貯めていくことが、他社にない武器となるのです」(奥平氏)
モバイルオンリーな中国市場でやるべきこと
残り時間で、中国市場におけるモバイルユーザーの存在感について、各社の見解を述べて閉会した。各社共通のキーワードを挙げるなら「モバイルオンリー」。
「日本だとPC、モバイル、タブレットと揃っているユーザーも多い中で、中国ではモバイルだけのユーザーが大半です。7億近いモバイルユーザーに対して、スマホファーストではなくスマホオンリーという人たちへの最適化が喫緊の課題です。
サーチだとPCよりモバイルのほうがクエリ数で2.5倍も大きいのに、決済のコンバージョンはまだPCが高いままです。今後はモバイルの決済チャネルを大きくするのも課題です。現状は、クレジットカードのほかに、支付宝(アリペイ)や銀聯(ギンレン)といった中国オンラインの決済サービスにも対応しました」(渡邊氏)
「マツモトキヨシでも、PCよりモバイルのトラフィックが多く、PC向けのほかスマホ向けのLPを新たに用意しました。弊社もANAさんと同じで、コンバージョンするデバイスはまだPCが優位です。それとは別に、日本にお住まいの中国の方に対して、中国本土の方向けに作ったクーポンが流通しないことも課題ですね」(奥平氏)
「中国市場を考える際はモバイルサイトからユーザーインターフェイスを組んだほうがいいかもしれない。単にPCサイトを置き換えただけのユーザーインターフェイスは避けたほうが無難です」(中島氏)
2017年は日中国交正常化45周年、2018年には日中平和友好条約締結40周年を迎え、2020年は東京で夏季オリンピックも控える。ここ数年は、両国にとっての節目が続く。髙橋氏からは、バイドゥにアカウントを持つ200以上の日本企業を中心に、節目となる将来を見据えながら、積極的に情報発信とビジネス支援を行いたい旨を結びとし、締めくくった。