「バケツの穴」をふさぐためのMA。Yahoo!ショッピングでは5,000以上の店舗に導入
競争が激化する中、EC事業の売上や効率アップのために考えられる対策は多々あるが、近年最も注目されているマーケティングツールのひとつが、マーケティングオートメーション(以下、MA)だ。
押久保(MarkeZine) 最近注目のMAについて、バリューコマースさんでは「R∞」を提供されています。それをYahoo!ショッピングのストアさん向けに、「STORE's R∞(ストアーズ・アールエイト)」として展開されていますよね。このお取り組みについてお聞かせください。
小澤(ヤフー) ヤフーはそもそも人がたくさん来るところですから、Yahoo!ショッピングへの出店は銀座の一等地に店をかまえるようなもの。しかし、肝心の商品が少ない、価格が安いわけでもないという残念な状態が長年続いていました。これを「バケツに穴が開いている」と表現しています。いくら水、要するにお客様を流し込んでも、漏れてしまう状態ですね。その穴を数値化するとCVRになると思いますし、水がたまればその中で回遊、すなわちリピートにつながります。
商品や価格についての対策のほか、バケツの穴をふさぐ手段のひとつとして「STORE's R∞」を導入したところ、如実に数字が出たというわけです。すでに5,000店舗以上が「STORE's R∞」を導入しており、経由取扱高は、売上構成比の平均で18%以上にもなります。利用店舗のツール経由でのCVRは、25%以上の効果につながっています。
加來(バリューコマース) とにかく複雑になりがちなMAを、シンプルに提供できたことが勝因ではないかと考えています。中小規模のストアさんにMAを活用したCRM施策をオススメする場合、まずMAとは何かを理解していただくところから始める必要があるため、成果につながるまで時間がかかります。そこで「STORE's R∞」では、サービスやサポートをある程度パッケージング化し、すぐに始められる状態で提供することにしました。
MAを難しく考え過ぎ。とにかく始めて、PDCAを回すのが先決
Yahoo!ショッピングでの実績が示すとおり、ECのマーケティングにおいてもMA、その先にあるCRMが重要になってくるのは各社共通認識のようだ。しかし、とかく「とっつきにくく難しい」「手間の割に結果が出ない」といったイメージが付きまとうのも事実である。MAを上手に活用するために、EC事業者は何をすべきだろうか。
加來(バリューコマース) 皆さん、難しく考えすぎているかもしれません。以前、「張り切ってセグメントして、キャンペーンを20個作りました」というクライアントがいました。しかし、あまりに細かくセグメントしすぎたため、該当する顧客の出現率が0%という結果になってしまった。実は、こういった失敗例はけっこうあります。難しく考えすぎず、細分しすぎず、「こうなったらいいな」くらいの思いつきからまず始めて、PDCAをいかに速く回すかが重要ではないでしょうか。
小澤(ヤフー) 便利な道具ですから、うまく活用したいですよね。購入後何ヶ月空いているお客様には何割引で訴求、年何回以上購入してくださるお客様にはこれだけのクーポンといった、いつ、どんなマーケティング施策を、誰に行ったらいいかを、コンピューターが自動でやってくれるわけですから。それを考え、実行する店員さんを育てようとしたら、一朝一夕では難しい。導入しない手はないと思いますね。