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MarkeZine Day 2017 Spring レポート(AD)

エクスペリアンジャパンが語る、顧客との関係作りにMAツールが有効な理由

 顧客とのコミュニケーション維持・活性化に向け、メールが大きく貢献していた時代を経て、今や顧客とのチャネルはLINEやアプリなど多様化の一途をたどっている。こうした状況に対応し、関係強化のソリューションとして期待されているのがマーケティングオートメーション(MA)だ。その一方、MAツールを対症療法として使うと、顧客との長期的な関係構築という大きな目標を損ねる可能性がある。CRMという大局において、MAツールはどのような役割を果たすのか。MarkeZine Day 2017 Springで、エクスペリアンジャパン CMO 北村伊弘氏が語った。

今こそCRMが必要な理由

 マーケティングにおける重要なポイントのひとつに、顧客との関係作りがある。いわゆるCustomer Relationship Management(CRM)だ。「ここへきて改めて、顧客との関係構築の重要性が再認識されています」と語るのは、エクスペリアンジャパン マーケティング部 Chief Marketing Officer 北村伊弘氏だ。

エクスペリアンジャパン株式会社 マーケティング部 Chief Marketing Officer 北村伊弘氏

  「よくいわれることですが、かつてのマーケティングでは、総じて新規顧客獲得に重きが置かれていました。しかし少子高齢化が進み、競争も激化する中、いつまでも”新規”だけに目を向けていては先細りしてしまいます。そのため、今日のマーケティングでは新規顧客獲得を目指しながらも、顧客一人ひとりとの関係性を強化・維持することに注力したCRMが求められているのです」(北村氏)

MAツールがCRMの足かせになる?

 この顧客一人ひとりとの関係性を強化し、コミュニケーションを実現するために活用されてきたのがメール配信システムだ。現に今でもメルマガやキャンペーン案内メールを送って顧客との長期的な関係性維持に努める企業は多い。その一方、北村氏は「テクノロジーの発展によりメール配信システムでは対応しきれなくなっている現状もある」という。

 その一例にチャネルの多様化がある。かつては、一斉配信ができ、顧客が好きな時に閲覧できるメールが最適なコミュニケーション手段だったが、今はFacebookもあればLINEもある。時には企業が自社アプリをリリースし、プッシュ通知を使いキャンペーンの案内をすることもある。また、パーソナライゼーションやターゲティングに用いるデータの量や種類が飛躍的に増え、従来のメール配信システムだけでは対応が難しくなってきた。

 こうした中、注目されているソリューションがマーケティングオートメーション(MA)だ。

 北村氏も「MAは、様々な顧客データやチャネルを統合して管理できる上、顧客コミュニケーションのシナリオに合わせて自動的にメッセージを配信するなど、非常に心強いツールです」と説明する。

近視眼的な施策対策でMAツールを入れると失敗する

 では、MAがあれば多様化するチャネルに対応したCRMが実現するのか。北村氏はこの問いに対し、「必ずしもそうとはいえない」と応える。くわえて「MA上で実行される施策が本来の目的をきちんと踏まえたものではなかった場合、むしろCRM実現の足を引っ張ってしまう」との警鐘を鳴らす。

 本来なら、顧客との長期的な関係構築という大きな目的があるはずなのに、具体的な要件に落としていくと、「カート放棄を防ぎたい」「特定のページから離脱したユーザーをフォローしたい」などの特定の局面にのみ焦点をあてた施策の実現に偏りがちだ。北村氏はこの状況について、コンサルタントの要件定義の甘さも指摘するが、それ以上に近視眼的な見方に陥りがちなマーケターにも注意を喚起する。

 たとえば、カートを放棄したユーザーには買い忘れ防止のメールを、商品ページを見た人には閲覧をトリガーに行動を後押しするメールをMAを使って送る。もちろん、これらの施策が効果を発揮するケースはあるものの、CRMの目的に沿ったMA活用事例とはいい難い。

 「こうした取り組みが何を引き起こすかといえば、『サイトで商品を閲覧する度にメールが送られてくる』『既にリアルの店舗で買った商品を勧められる』といったユーザーからの不満です。

 確かに、カート放棄者をフォローするメールや買い忘れ防止のお知らせは短期的に見ると売上向上に貢献するかもしれません。しかし一度不満を抱かれると、次は他社に乗り換えられてしまうリスクが発生します。MAが便利でシナリオどおりのコミュニケーションを実現するといっても、CRMという長期的な視点で見た場合、過度な使い方はかえって顧客離脱を招くのです」(北村氏)

MAが実現するCRMの新たな形

 では、CRM本来の目的に立ち返り、MAを有効活用するにはどうすれば良いのか。北村氏はそれを示す解として下記の3つを挙げる。

1.顧客の全体像を理解すること

2.顧客を取り巻くチャネルを統合すること

3.多層から成るユーザーの管理を実現すること

顧客全体像の理解

 1つ目の顧客の全体像を理解するというのは、Webおよび店舗の購入や行動、反応の履歴、そして顧客データを統合し、多面的に分析していくことを指す。

 こうした全体像の把握によって、顧客を限定されたデータからではなく、過去に遡って蓄積された統合データをもとに、一人ひとりにあったコミュニケーション設計を可能にする。

 たとえば、前述した「カート放棄プログラム」や「離脱フォロープログラム」であれば、ECサイト上の行動情報と店舗での購買履歴が統合されていれば、店舗での購買後に商品を再度お勧めするメールが送られることはないだろう。

 このようにMAでは、様々な接点から取得する散在されたデータを統合管理することで、一面からではなく多面的に顧客を捉えられる。そうすることで、近視眼的な施策をCRM施策へと昇華できるのだ。

顧客を取り巻くチャネルを統合

 コミュニケーションチャネルを統合し、最適なチャネルで適切なコミュニケーションを実現できるのもMAだ。エクスペリアンジャパンが毎年実施している「クロスチャネル動向調査」によると、企業・ブランドからの情報を受け取る手段として、メール以外にも複数のチャネルを併用するユーザーが増えているという。

 特にLINEは、従来の公式アカウントサービスに加え、CRMを目的とした「LINE ビジネスコネクト」が3年前から提供されたこともあり、コミュニケーションチャネルとしての活用がかなり進んでいる。

 北村氏は「まだ顧客データとLINE IDが紐づいた活用事例は多くないが、うまく紐付けられれば、より高度な使い方、効果が期待できます」と説明する。

 たとえばサブスクリプション型のネットスーパーを展開するオイシックスでは、MAを使って各コミュニケーションチャネルのIDと顧客データを紐づけ、最適なコミュニケーションを実現しているという。オイシックスではお勧め商品を定期的に届ける「定期ボックスサービス」を展開しているが、配送内容の変更をうっかり忘れるユーザーも多い。

 そこで、以前は変更やキャンセルの締め切りを知らせるリマインドメールを送っていた。しかし「メールに気付かなかった」「確認したときには締め切り期限が過ぎていた」というユーザーが多かったため、メールだけではなくLINEやSMSを使ったリマインドを実施し、リーチを広げた。

 使うチャネルはユーザー自身が自由に選択するため、ユーザーの意思で登録(オプトイン)がされ、コミュニケーションを煙たがられることはない。むしろ顧客側の利便性に合わせてチャネルを使い分けることで、定期ボックスサービスにおける新たな付加価値として機能し、より関係が深まる。

 さらに同社では、定期ボックスサービスのみならず、他のあらゆる情報発信についてもユーザーが複数のコミュニケーションチャネルを自由に選べる仕組み作りを進めている。

 一方で、複数のチャネルで顧客と接点を持つことで、適切な配信頻度の管理が出来なくなるといったリスクも発生する。特に昨今のように、LINEやアプリ、メールなど、複数にまたがるチャネルでメッセージが届くとなると、それだけでユーザーの負担になる。

 クロスチャネルに対応しているMAならこうした複数のチャネルを統合することができるため、コミュニケーションチャネルごとに独立して存在するデータを統合的に管理し、いつ、どのチャネルで、何を配信したかを把握した一貫性を持ったコミュニケーションの実現が可能だ。

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多層からなるユーザーを管理

 最後の「多層から成るユーザーの管理」という概念は少々わかりにくいだろう。これは「会員/非会員」という従来の切り分けではなく、「本会員/ライト会員/非会員」といったように、区分けのラインが曖昧になってきたことに端を発している。

 以前は、会員とは、ECサイト上で購入をしたユーザーを指していたが、今では購買した経験がなくても、LINE友だち追加やアプリダウンロードをしたユーザーを「ライト会員」として獲得することが可能だ。

 北村氏によると、こうしたライトユーザー層を管理するメリットは、コミュニケーションの対象者が増えることにあるという。

 実際、店舗とECサイトを展開するアパレル企業A社では、LINE ビジネスコネクトを用いて会員カードを発行し、LINE IDと店舗での購入履歴を紐付けた「ライト会員」とのコミュニケーションを実施しているという。

 同社では、店舗への来店者に対して、以前は購入時にアプリでの会員登録を進める取り組みを実施していた。しかしアプリのダウンロードや必要事項の入力などの様々な作業が来店者の負担となり、店舗での会員登録に苦戦をしていた。そこで、LINEの友だち追加機能といった来店者が使い慣れている方法をとることでLINE IDと購入履歴が紐づいた「ライト会員」を形成することができた。

 「ライト会員」とのコミュニケーションはLINE上でのつながりに限定されてしまう。ただ、最終的にはLINE ID、アプリ会員情報、店舗購買履歴、EC購買履歴、とすべての情報を統合することで、同一ユーザーに対し、様々なチャネルでのコミュニケーションを目指している。

 「このようにMAでは、氏名や年齢などの詳細な顧客情報の取得ができないユーザーに対しても、LINEやアプリと紐づいた情報をもとにコミュニケーションを取ることができます」(北村氏)

 さらに、「会員/非会員」だけではない多層に存在するユーザーに対して、会員レイヤーごとに適切なアプローチをすることができるのもMAの特徴であり、最終的には「ライト会員」を「会員」へと昇華させ強いつながりを持つことが可能だ。

長期的な視点でMAの活用を考えよう

 CRMの目的においてMAを活用する場合、短期的な課題解決にばかり目を向けてしまうと、顧客との長期的な関係構築を阻害してしまうリスクがある。

 これに対し、CRMの目的を再度認識した上で、これまで述べてきた「顧客の全体像を理解する」「チャネルを統合し、最適なコミュニケーションを実現する」「多層から成るユーザーを管理する」といった利点を念頭に置いてMAを活用すれば、逆にこれほど強い味方はない。

 エクスペリアンジャパンでは、複数のチャネルやデータを統合して最適な顧客コミュニケーションを実現するMAを提供している。そのMAを活用するための最大のポイントは、「目的、施策、実行手段を紐付けて考えることです」と北村氏は語り、講演を結んだ。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/04/07 12:00 https://markezine.jp/article/detail/26275