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HowTo動画で若い女性の心を掴んだC Channelが明かす若年層向け動画マーケティングのノウハウ

 かつて射止めた若い世代も次第に年齢層が上がり、商品のターゲットからずれていく。しかし、若年層の心を掴めずに悩んでいる企業も多い。そこで編集部では、3月28日に定期誌『MarkeZine』の購読者限定イベントを開催。C Channelの森川亮氏(代表取締役)に「動画を見て行動し物を買う世代に向けたコミュニケーションとは」というテーマで最新動向を語ってもらった。

 今の若い世代はデジタルネイティブやスマホネイティブと言われ、それ以前の世代とはコミュニケーションの方法や感覚がまったく異なっている。それゆえに、多くの企業が彼らとのコミュニケーション方法を模索している。

 特に商品ターゲットの年齢が徐々に高くなってきている企業にとって、若い世代へのアプローチは喫緊の課題と言えるだろう。

 MarkeZine編集部では、3月28日(火)に開催した定期誌『MarkeZine』の購読者限定イベント「変化する時代のマーケティング」にて、C Channelの代表取締役・森川亮氏をお招きして「動画を見て行動し物を買う世代に向けたコミュニケーションとは」というテーマで基調講演を行っていただいた。

 女性のための動画ファッション雑誌「C CHANNEL」は、若い世代とコミュニケーションするのに適した手段の最有力の一つ。森川氏自身も、1989年に日本テレビに入社して以降、ソニー、ハンゲームジャパン、LINE、そしてC CHANNELと常に若い世代向けのメディアを展開する企業でノウハウを蓄積されてきた。

 森川氏の慧眼による分析は、若い世代とのコミュニケーションに課題を抱える企業にとって大いに参考になるのではないだろうか。

森川亮氏
森川亮氏:C Channel 代表取締役

クローズドなコミュニケーションと動画がトレンド

 森川氏がまず強調したのは、今はLINEなどクローズドなSNSが若い世代のコミュニケーションの中心になっているということ。Twitterなどに見られるように、オープンなコミュニケーションが好まれているように思える。しかし、実は彼らは「できるだけ知らない人とはつながらず、知り合いなどに限定的に情報発信したい」という気持ちが強いという(ゆえに一人がいくつもTwitterアカウントを持つ、ということが当たり前になった)。

 また、SNSが普及してからは「普通の人」に注目が集まるようになった。テレビが主流の時代には有名人やタレントに対して憧れがあった。Web2.0と言われた時代、ブログが隆盛を誇った時代も、ある程度はその流れを受け継いでいた。

 しかし、若い世代は高嶺の花のような有名人には関心が薄く、SNSを通して知っている、身近に感じられる人に興味を持つようになった。テレビタレントよりも知り合いの言葉を信じるのがそうだし、インフルエンサーもまさにそんな存在だ。

 動画が昨今のトレンドとなっているのは言うまでもないだろう。長いテキストを読まない・書かないユーザーが増えており、彼らにはスタンプや写真、特に動画が好まれている。そもそもタイムラインから受け取るメッセージの量が多いため、手早く情報を得てコミュニケーションしたいのだ。動画は最初の1.5秒で最後まで観るかを判断するというデータもあるという。

 そして、動画を中心にコミュニティが盛り上がる。MixChannelでは一つの動画をベースに様々な形でアレンジする動画(やってみた系など)が作られ、LINE LIVEではスターやインフルエンサーを目指す人もいる。また、テレビ番組はいまだ人気だが、彼らはそれをテレビではなくスマホの動画サービスで観ている。

 動画(映像)もまた、音楽やゲームが辿った道を進んでいると森川氏は言う。かつて劇場で映画を観た時代のあと、テレビが登場してリアルタイム映像という衝撃をもたらした。そして、今や動画はスマホで観るのは当然、さらに誰でも作ることができる。

 若い世代は確実にマスメディアから離れていっている。だとすれば、企業はどうやって彼らとコミュニケーションすればいいのだろうか。

若い世代は動画のコミュニケーションにシフト

コミュニケーションのきっかけとなる動画を

 トレンドやカルチャーは若い女性から広まる、とよく言われる。C CHANNELはまさにそこを狙っていった動画サービスである。女子力をアップしたい、トレンド情報を知りたいという女性のニーズに応え、数多くのHowTo動画を提供している(当初はそういう動画ばかりではなかったそうだ)。

 サービスの特徴としては、最初に縦長動画が挙げられる。動画といえばPCモニターを基準にした横長が普通だったが、C CHANNELでは縦長を採用。スマホは年々サイズが大きくなっているため横向きに持つのが辛く、そもそも縦に持つ。縦長動画は奇をてらったというより、むしろ合理的だ。

 また、動画はクリッパーというタレントやモデルが撮影。約500人が所属し、彼女たちがいいと思ったもの、好きなものをそれぞれの視点で動画にする。若い世代は「企業が作ったもの=作られたもの」への忌避感が非常に強い。そのため、いかに自然体で伝えるかが重要となる。

 C CHANNELでは広告の効果がとても高いそうだ。しかし、テレビCM的な、企業が伝えたい情報を詰め込んだもの、ブランドイメージだけを伝える雰囲気重視のものはほとんど響かず、スキップされる。実際、クリッパーが商品紹介する動画と比較したところ、エンゲージメント率に10倍近い差が出たという。

 刺さる動画の特徴としては、人気クリッパーが商品を使ってみる、体験してみるもの。テレビCMではよく見かけるかもしれないが、商品の機能やメリットを直接的に説明したり、文字(コピー)を入れたりするのは逆効果。それは「作られたもの」という印象を与えてしまうようだ。ユーザーにとってはその商品の使用感や自分も使ってみたいという共感が大事なのであって、細かい機能やメリットはそれほど重要ではないということだ。

 また、とりわけ広告であるなら、シェアしやすい動画であるかも重要だろう。YouTubeやTwitterで拡散されやすい面白動画は、C CHANNELを利用するユーザーはあまりシェアしないという。そういうものばかりシェアするとあまり見栄えがよくないため、賢いと思われるような動画がシェアされやすい

 こうした性質を持つのがHowTo動画だ。たとえば、最近伸びているのが料理動画。商品とほかの食材を組み合わせて料理してみたり、飲料であればそれに合う料理を作ってみたりするなど、食品は動画との相性がいい。

 化粧品なら、実際に使用している様子。アパレルなら服などを単体で紹介するのではなく、シチュエーション別のコーディネートを紹介する動画がいいという(ただ、友達と同じ服を着たくないからシェアしないという心理も働く)。その動画を起点に、友達同士で会話が弾んだりするのだ。

 HowTo動画を作りにくい商品であれば、ドラマを作って商品を魅せることもできる。いずれにせよ、いかにコミュニケーションのきっかけとなる動画を提供できるかが鍵となる。

 森川氏は、動画のリーチを広げることも大事だが、気持ちの面、つまりエンゲージメントを高めることがより重要だと話す。

C CHANNELは女性のための動画のファッション雑誌

日本発の世界的なサービスを目指して

 日本ではインフルエンサーと動画がマーケティングの重要な手段となりつつあるところだが、最も先進的なのは中国だ。中国では何十もの動画・ストリーム系のSNSがあり、そこでKOL(Key Opinon Leader)と呼ばれるインフルエンサーが大活躍している。

 ユーザーはKOLが使用したり身につけたりしている商品を欲しがる。ユーザーは国内に流通する商品には偽物が多いため企業を信用していないそうだ。だから、KOLプロデュースでOEM的に商品を開発し、KOL自身のECで販売している企業もあるという。KOLがテレビショッピングのように、ライブストリームで商品の紹介をするのも人気だ。

 C CHANNELとしても、中国はもちろんタイ、台湾、韓国、インドネシアなど東・東南アジアを中心にサービスを海外へと拡大している。森川氏は進出先として若い世代の人口が重要だと言う。たしかに、日本では少子高齢化が進んでいるが、東南アジアは国民の平均年齢がかなり低い。

 森川氏がC CHANNELで目指すのは、世界的に使われるサービスだ。韓流ブームを背にした韓国企業が非常にパワフルで、韓流タレントが着ているもの、使っているものが売れるようになっているという。C CHANNELはそこに食い込み、日本の商品を使うインフルエンサーを育てている。

 日本発のサービス(アプリ)がアジアだけでなく世界で利用されるようになれば、日本の商品をユーザーに紹介しやすくなる。そうなれば、日本をもっと元気にできる。そんなC CHANNELの目標に共感する人も多いのではないだろうか。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/07 11:09 https://markezine.jp/article/detail/26291

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