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MarkeZine Day 2025 Retail

今だから始める!カスタマージャーニーマネジメント入門

「変化」を踏まえて作っていますか?カスタマージャーニーマップに潜む落とし穴

プロセスを変えることで結果を変え、勝ちのゲームを作る

 カスタマージャーニーをベースとしたマーケティングの意義は、「顧客を変化させて、自社ブランドが勝ちのゲームを作ること」です。そもそもマーケティングは、来店や購買など様々なビジネスゴールを達成するために行われる、指向性を持った活動です。しかし変化を起こせない限り、結果は現状から変わりません。カスタマージャーニーはこの「変化」にアドレスします。

 ここで、クリエイティブディレクション視点のアプローチとカスタマージャーニー視点のアプローチを比較してみたいと思います。

 まず、クリエイティブディレクション視点のアプローチでは、ブランドのミッションから入ります。ブランドのあるべき姿や本質的な課題の発見から始まり、社会経済的背景に合わせてブランドの役割を定義し、具体的なコアアイデアを導出していきます。

 それに対してカスタマージャーニー視点のアプローチは、ブランドの購買プロセスや態度形成プロセスなど、ゴールに対する現状のプロセスを、クライアントブランドにとって理想的なプロセスへ変化させることで、ビジネスの結果を変えようというアプローチです。

 より対比的にいえば、クリエイティブディレクションがブランドを拠り所にするのに対して、カスタマージャーニーは消費者の生活を拠り所にして戦略立案するわけです。

 カスタマージャーニーに基づいたマーケティングの最たる利点はここにあります。販促施策など企業のマーケティングの直接的な対象となるのはプロセス(ジャーニー)です。そのプロセスを可視化できれば、プロセスを分解して問題箇所を特定できます。そうすると、各フェーズにおける問題の原因に対して最適なマーケティング施策を行えるため、ブランドにとって必要な変化をピンポイントで生起させることができるのです。

"2本のジャーニー"で意図的に変化を起こす

 実践的な話に移ります。冒頭でカスタマージャーニーをベースとしたマーケティングは、変化に特化したマーケティングといいました。このアプローチではまず「現状のカスタマージャーニー」と「目指すべきジャーニー」の2つのカスタマージャーニーマップを用意します。

 カスタマージャーニーというと、現状の購買行動プロセスを記述したカスタマージャーニーマップを想起される方が多いと思いますが、今後自社のブランドが目指すべきカスタマージャーニーマップも必ずセットで作成するようにしてください。

 ここで1つ注意して頂きたいのが、カスタマージャーニーマップを作ることとカスタマージャーニーを作ることの違いです。この2つはよく混同されて用いられていますが、意味するところが大きく異なります。カスタマージャーニーマップは、カスタマージャーニーを紙面上に記述したアウトプットを指します。いわゆる可視化や課題抽出の作業で、マーケティングリサーチの範疇です。上述した2つのカスタマージャーニーマップを作ることはこちらの領域の作業です。

 それに対してカスタマージャーニーを作るとは、現状のカスタマージャーニーをブランドが目指すべき(儲かる、ブランド価値が上がる、より人が集まる、etc.)ジャーニーへ変化させることを指します。プランニングからエグゼキューションでの実務です。ジャーニーマップを書くことは、現状を把握し、目指すべきカスタマージャーニーを設計するための前提として重要になります。しかし、実務でより重要なのはジャーニーマップを書くことではなく、カスタマージャーニーを変化させることだというのを、覚えておいてください。

現実を理想に近づけるカスタマージャーニーマネジメント

 さて、「目指すべきジャーニー」とは、いわばジャーニーの形をとったブランドのゴール設定です。まずブランドにとって理想的な顧客の認識や感情、行動を表現したカスタマージャーニー自体を実現すべきゴールとして設定し、その目指すべきジャーニーに足りない要素は何かを特定します。

 そして、現状のカスタマージャーニーをどう変化させればよいか、その変化を起こすためにはどの顧客接点でどんなストーリーを語ればよいか、どのような顧客体験により達成できるか、顧客体験が向上することでどの位の集客や売上が期待できるか、という順に戦略を立案していきます。つまりこの2本のジャーニーマップを埋めていくことが、「カスタマージャーニーを作ること」です。

 現状のカスタマージャーニーの有様と企業が目指すゴールから鑑みて、顧客体験に最も必要な変化をもたらし、ブランドと顧客の関係性を常に最適な形にアップデートする戦略を作ることを目的としたこのアプローチを、「カスタマージャーニーマネジメント」と呼びます。

 同アプローチでは、施策開発の基になるインサイトなどのデータもジャーニーから抽出し、購買プロセスの診断、機会損失の推定、集客予測、売上予測などもすべて、「生活」という消費者の最も根元的な行動プロセスを軸に行います。

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デジタルとリアルを統合するプラットフォームとしての側面も

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この記事の著者

村山 幹朗(ムラヤマ ミキオ)

 株式会社コレクシア 代表取締役。APRC/JMRAアニュアル・カンファレンス2016にてカスタマージャーニーの現場活用をテーマにした発表で最優秀賞を受賞する他、アカデミアと実務家の連携によるカスタマージャーニー研究会「JEXIS」を主宰する等、カスタマージャーニーの理論研究と実践の両輪でマーケティング支援を行う。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/04/10 12:00 https://markezine.jp/article/detail/26293

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