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「既視感のない、新しい企画で世の中にバイラルを」 XFLAG スタジオが求めるマーケターのマインド

 日々めまぐるしく変化するスマートフォンアプリ市場。過去に成功したことがこの先も通用するとは限らない。本記事では、XFLAG スタジオで重要な役割を担う2人のマーケターに「今、マーケターに求められるマインド」について聞いた。

真にチャレンジできる環境

――今回の取材では、前回同様ミクシィ内でエンターテインメント事業を担うXFLAG スタジオにて、モンスト事業本部のマーケティング部の部長を務める根本悠子さんと、同部署でメディアのプランニングやリサーチなどを担当する岡野吾朗さんに話を伺います(2017年5月1日付で組織変更)。

 前回の取材では、XFLAG スタジオのミッションや、戦略コンセプトなどを踏まえ、常にまだ見ぬ驚きを届けることで、ユーザーにバリューを感じてもらえる展開とはどのようなものなのか、モンスト3周年のキャンペーン事例などを中心にお伺いしましたが、今回は仕事の環境や社風、実際の業務について迫りたいと思います。

 まず、これまでお2人が関わった中で印象に残っているプロジェクトをもとに、XFLAG スタジオがどういった環境であるかを探ります。岡野さんはいかがですか。

岡野:我々がユーザーの皆さんに届けている価値を体現できた施策として印象に残っているのは、2015年夏に行ったテレビCMやイベントプロモーションです。音楽フェスや地方のお祭りに協賛したのですが、そこに弊社の姿勢があらわれていると思います。

 例えば、「チャレンジングなことをしなさい」といった社内の要望を受け、今までになかったような企画を提案しても、「この企画で本当に大丈夫なのか」と実施後のリスクを恐れ、最終的には却下となるケースも多いと思います。

株式会社ミクシィ XFLAG GAMES プロモーショングループ リーダー 岡野吾朗氏
株式会社ミクシィ モンスト事業本部 マーケティング部 第一宣伝企画グループ マネージャー 岡野吾朗氏

 つまり、実際にことを起こそうとすると、障害がいくつもあってなかなか実現が難しい。ですがXFLAG スタジオの場合、リスクが伴うものであっても、どの障害を乗り越えれば施策が実現できるのか、全員がそのベクトルに向かい、果敢にチャレンジできます。

 もちろん企画のロジックやストーリーを綿密に設計する必要がありますが、本当にチャレンジしたいことができるし、それを求められていることが嬉しいですね。

――なぜ音楽フェスや地方のお祭りに協賛したのでしょうか。

岡野:「モンスターストライク」はみんなで集まって遊ぶものだと、当時からTVCMなどでは打ち出していましたが、受け取り手がそれを体感すること、実感をともなって受け取ることができているのか計り兼ねていました。

 私たちは、実際に体験を通じてこそ得られるものがあると仮説を立て、さまざまな「人が集まる」イベントという場と「夏休み」という時期に、ゲームだけでなくリアルなイベントを通じてモンスターストライクのバリューを体感してほしいと考えました。

重要なのは、受け取り手の心情を把握すること

――リアルなイベントでモンスターストライクの価値を体感してもらおうという試みだったのですね。具体的にはどういった施策を展開したのですか。

岡野:実際に協賛したイベントでは、プリントシール機のような機械を設置し、その中で友達や家族と一緒に4人で写真を撮ってもらうという企画を実施しました。例えば、友人や親しい仲間同士で飲みに行くとき、お酒や食べ物よりも、その場で繰り広げられる会話や雰囲気そのものが、実は楽しかったりするのではないかと思います。それと同様に、みんなで集まって一緒に盛り上がるためのフックになるのではないかと考え、このような施策を展開することにしました。

 このとき撮影された写真は、一緒に写った人達の顔が合成されて、それがモンスターにはめ込まれてプリントされるというものでした。できあがった写真をみてその場で盛り上がったり写真をSNSで拡散したりと、参加者のみなさんが様々なかたちでコミュニケーションを取り合っている姿を見ることができました。

 また、盛り上がった瞬間、楽しかった時間を強く思い出に残せるようにしたいと考え、プリントした写真は持ち帰れるようにしました。

 このプロモーションで意識したのは、受け取り手の心情です。広告ひとつとっても、企業が伝えたいことだけに留めてしまうと、受け取り手にとっては耳障りな情報になりかねない。XFLAG スタジオはコミュニケーションをとても大切にしていて、情報を受け取った相手がその情報をどのように扱うのか、をとことん掘り下げて施策に盛り込んでいます。

変化の速い市場で、チャレンジし続けられた訳とは

――続いて、根本さんにキャンペーンやプロモーションを設計する上で意識していることをお伺いします。

根本:ひとつのキャンペーンやプロモーションがどうあるべきか、このタッチポイントに触れた人たちにどういう気持ちになってほしいか、何を持ち帰ってほしいのか、どういうゴールなのかを考え、設計しています。

株式会社ミクシィ XFLAG GAMES プロモーショングループ マネージャー根本悠子氏
株式会社ミクシィ モンスト事業本部 マーケティング部 部長 根本悠子氏

 他の業界であれば、プロダクトの販売計画が、年間である程度立てられていて、季節ごとに限定商品を出したり、それに合わせたプロモーションを考えたりすることも多いと思います。

 ところが、スマートフォンアプリ、特にゲームアプリは市況の変化が速いので、クォーターごと、時にはそれよりも短いスパンで戦略を立てていく必要があります。さらに、柔軟性を持ってクイックに取り組むことが求められます。弊社では、市況の変化や競合の動きを肌で感じながら、それにいち早く反応するように考え続けています。

――市場や競合の動きが激しくかつ速いため、それに対応していく必要があるということですね。

根本:というより、自分たちが競合よりも先んじて動くことが重要ですね。他社と同じフレームをなぞった企画を行っても、そこには新たな価値は生まれないと思っています。どうすれば、他社のしていないことができるのか、「新しいこととは何か」を常に考え、「企画の新しい種」を日々探しています。

 「今取り組むべきこと」はトップダウンで落ちてくるものではありません。自分たちでニーズではなく、シーズを見つけて、それを具現化する企画を作り出す。もちろん、課題はプロモーションやPRだけでは実現できません。そのためゲーム、アニメ、商品企画、イベントなど様々な要素を取り入れたメディアミックス戦略に基づいたプランニングを行うようにしています。

マーケティングにおけるパイオニアであり続けたい

――市況の変化が速すぎて、プランを変更せざるを得ないということはありますか。

根本:普通にあります(笑)。事前に考えた通りにできないこともあります。たとえば、2016年10月に行った3周年のプロジェクトの中でIDくじというものを開発したのですが、すぐに他社からも酷似したサービスが出てきました。真似されるということは「良い企画」の証拠。それはそれで良いと考え「次の新たな施策にチャレンジしよう」とすぐに新施策の企画に着手します。

 モンスターストライクは、独自性を確立していると思っています。ただ我々はそれに甘んじることなく、たとえ同じようなゲームアプリが出てきたとしても、唯一無二の存在であるために日々進化を続けていると思っています。マーケティングにおいても岡野が言っていたように「常にチャレンジすること」が求められているのです。

――確かに前回の記事で話題に上がった“モンストやるなよ”キャンペーンなどはかなり攻めた表現でしたね。

根本:広告表現など、企画が難航するものもあるのですが、それも果敢にチャレンジしていきます。困難やリスクもあるけれど、それをクリアしたときのリターンは大きい。ユーザーに届けたいこと、実現したいことなど、その目的を達成するためならば、積極的にありとあらゆる手段を講じて攻める姿勢で取り組みます。

 「できない」と諦めてしまうのではなく、「できるようにするにはどうすればいいか」を、関連する様々な部門と連携しながら追求していきます。

――「できない」から諦めるのではなく、「できない」を「できるようにする」よう工夫するのですね。

岡野:確かに、そういうDNAがマーケティング部にはありますね。

根本:もちろん、ダメだった場合のバックアップの企画も用意しますが、ギリギリまで粘ります。一見ムダに思えるかもしれません。たとえ非効率に見えたとしても、目的のためであれば、危ない橋であったとしても渡っていこうとする姿勢を大事にしています。

必要なのは柔軟性×アイデアを考え抜くマインド

――マーケティング部のメンバー構成を教えてください。

根本:マーケティング部は、プロモーション担当のほか、他社とのコラボやIPホルダーとの折衝を行うアライアンス担当、リサーチ、PR、アドテク、クリエイティブなどのメンバーで構成されています。

――チームの編成はどのように組んでいるのでしょうか。

根本:岡野のグループの下にリサーチ・PRのチームを置いています。どちらかといえば、岡野のグループではデータ分析をもとに課題を見つけ言語化することを担当しています。他のグループではキャンペーンを実際に実施する部分を担っています。大きなプロジェクトになればグループ総動員で取り組みます。

――特に変化が激しいこの業界で、マーケターに求められるスキル、資質とはなんだと思いますか。

岡野:前回の記事でもお話ししましたが、アプリの市場は変化が激しいので、スキルや資質というよりは柔軟性が求められます。これまでの手法を回すだけではうまくいきません。さらに、チャレンジが求められることを考えると、柔軟性に加えて、粘り強くアイデアを考え抜くマインドのある人は向いていると思います。

 私は常々、ひとりだけの力ではたいしたことはできない、ひとりでできることには限界があると考えています。チーム全員で取り組むからこそ新しいことができるし、大きな変化を起こせるのではないでしょうか。いろいろな人の力を借りて、チームとして戦うためには、雑談を含めた密接なコミュニケーションがカギとなることも多いのです。

バカなことを真面目に考えることが大事

――根本さんはいかがでしょうか。

根本:コミュニケーションは、マーケターとしてだけでなく人にとって重要なことです。スタジオメンバーがダイナミズムを感じながら、足の速い業界で強く戦っていけるのはコミュニケーションを大切にしているからではないでしょうか。

 特にプロモーションはお客様との接点を作っていく仕事ですから、コミュニケーションが好きな人でないと難しい。私たちは普段、他愛のない雑談から仕事に関する熱い議論まで、いろいろなコミュニケーションを取り合っています。そうすることで、ナレッジの共有ができますし、不意にアイデアが生まれることもあります。

――コミュニケーションを積極的にとっていく以外に必要な心構えはありますか。

根本:マーケターは受け身の姿勢ではうまくいかないと思います。自ら考え、実行するのが私たちの強み。どれだけ業務に主体性を持てるかということですね。もちろん、頭で考えることも大事なのですが、時には脊髄反射でやってみることも大切です。

 個人的には、マーケティングの実務や企画ってサーフィンみたいなものだと思うんです。初めから大きい波を待っているだけでは上達しません。大小問わず、とりあえず波に乗ってみることが成長につながることもあるので、来たものにはまずチャレンジしてみるという素直さは必要だと思います。

――最後に、新しい企画を考える上で、どういった思考が求められるか教えてください。

根本:バカなことを真面目に考えることが大事だと思います。ほとんどの人からしたらくだらないこと、ちょっとしたことについて真剣に考えられる人であってほしいです。

 私たちは、他社がやらないような施策を企画・実行して、バイラルを起こしたいと日々考えています。プランニングしていく中で、0から1を生み出す企画を出すのは難しい。ただ、我々は常にそういった企画を実現できるよう、「新しいこととは何か」「それはどこかでみたことがなかったか」など、既視感の有無を確認するようにしています。

 さらに、既視感があると思われるようなコンテンツでも、切り口を変えて他社ではやったことのないプロモーションを目指しますし、「話題になるかどうか」をゴールにして企画することも多くあります。そういったことができる人こそ既視感のない新しい企画を作ることができるのだと思います。

●XFLAG スタジオでは、様々な職種でキャリア採用を行っています。詳細はこちら(リクルートサイトに移動します)。
今回の記事で語りきれなかった、XFLAG スタジオのミッションやコミュニケーション設計のポイントなどが、前回の記事に掲載されています。XFLAG スタジオのことをより深く知ることのできるコンテンツとなっておりますので、ぜひあわせて読むことをおすすめします。詳細はこちら

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この記事の著者

元永 知宏(モトナガ トモヒロ)

1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。『本田宗一郎 夢語録』、『羽生結弦語録』(ぴあ)などを編集。2016年10月に『期待はずれのドラフト1位』(岩波ジュニア新書)を上梓した。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/05/23 10:00 https://markezine.jp/article/detail/26425