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オイシックス流MAレシピを大公開 「顧客視点」のコミュニケーションを実現するための施策デザインとは

 EC・リアル店舗・通販など様々なチャネルに対応してきた企業が、今直面しているのは「すべての顧客接点において、顧客中心のコミュニケーションを実現するにはどうすればよいか」という課題だ。有機食品ECサイトを運営するオイシックスは、この課題に対峙し成果を形にしてきた企業の一つ。本記事では、4月25日に東京で開催された「Marketing Forward 2017 Spring」にて同社の米島和広氏が語った最新の取り組みを紹介する。

「顧客時間」の最適化を目指すオムニチャネル戦略

 有機食品ECサイトを運営するオイシックスは、食品を週に一度定期的に配達するサービスを提供している。定期配達サービスはサブスクリプションモデルで、顧客に長く使い続けてもらうほど売上につながるだけに、顧客とのコミュニケーションは最重要課題だ。

オイシックス株式会社 経営企画本部 米島和広氏
オイシックス株式会社 経営企画本部 米島和広氏

 オイシックス株式会社 経営企画本部の米島和広氏は「短期的な売上拡大を目指した『刈り取り』ではなく、お客様と企業のコミュニケーションを心地よいものにする『環境作り』を心がけ、長期的な関係を深めていくことが重要なミッション」と説明する。

  オイシックスは顧客とのコミュニケーションを心地よいものにするために、オムニチャネル戦略を展開している。まずは、EC・メール・LINE・アプリ・SNS・オウンドメディア・店舗といった購買・コミュニケーションのチャネルを整備した。

  さらに、上記のチャネルだけにとどまらず、「顧客が検討する期間」、「購入する瞬間」、さらには「品物の到着を楽しみに待っている期間」や「レシピをもとに料理をして食卓を囲むワクワクした瞬間」といった「顧客時間における全ての接点」をチャネルとして捉え、お客様の視点に立って最適化しようするところにオイシックスのオムニチャネル戦略の独自性がある。

講演資料より(以下、同)
講演資料より(以下、同)

 このようにオイシックスは、すべての顧客接点を「オムニチャネル」と位置づけてそれぞれにおける体験価値を向上させて、顧客との長期的関係を築くことを狙っているのだ。

目の前にいるお客様をまず満足させることができるのか?

  「オイシックスは、お客様一人ひとりの売上を伸ばすことで企業としての売上拡大につながる、という考え方をとっています。大切にすべきは、目の前にいるお客様一人ひとりの満足度を上げること。そのためにきめ細やかな『接客』の実現を目指しています」と米島氏は語る。

 オイシックスの「接客」というコンセプトには、すべての顧客接点におけるコミュニケーションを細かい配慮の行き届いたものにしよう、という意志が込められている。

  たとえば、味噌を定期的に購入する顧客がいるとする。味噌がなくなりそうなタイミングで味噌をリマインドするのは、技術的には簡単なこと。むしろオイシックスがこだわるのは、「リマインドをいつ表示するか」だ。

 具体的には、「買い物を始めた段階で買い忘れ通知をしてしまうと、献立の想像力を妨げないだろうか」「買い物の終盤で通知したほうが心地よいのではないか」など、お客様の気持を配慮しながらコミュニケーション設計しているところに、オイシックスの「接客」の精神があらわれている。

  この理想とする「接客」の実現に向け2年前に導入したのが、チーターデジタルが提供するマーケティングオートメーション(以下、MA)ツール「Cross-Channel Marketing Platform」(以下、CCMP)である。

 MAは導入過程も大切だが、運用を通じてチューニングを重ね、理想のコミュニケーションに近づけていくプロセスも重要だ。次節から、オイシックスが具体的にどのような課題を意識してCCMPを活用していったのかを紹介していこう。

「顧客視点」のコミュニケーション実現のためにMAを使う

 オイシックスはMAツールを導入するにあたり、「プッシュ・プル型の両軸で、顧客一人ひとりへの深い理解をもとにしたコミュニケーションを実現していく」という目標を立てた。実際にMAを使って、一人ひとりにあったコミュニケーションを設計するにはどうしたらいいのだろうか。

 当初オイシックスは、顧客理解と最適な接客実現に向けて顧客一人ひとりのカスタマージャーニーを作成しようとした。しかし、顧客ごとにカスタマージャーニーを描いてMAのシナリオに落とし込むのは不可能で、結果として数本のシナリオを実装するのが関の山だ。これでは、一人ひとりにあったコミュニケーションとは程遠くなってしまう。

 そこでオイシックスはそもそもの考え方を変えた。売り手目線で「商品の認知から購買決定までのプロセスを定義し、そのプロセスをMAで自動化する」という方針から、「コミュニケーションをより『顧客視点』に進化させる方法を探り、その実現のためにMAを活用する」という発想へと転換したのだ。

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コミュニケーションの頻度と内容をコントロール

 さて、ここからは、オイシックスがMAを通じて顧客中心のコミュニケーションを実現するために、どのような取り組みを進めてきたかを見ていこう。まず紹介したいのが、コミュニケーションの頻度と内容のコントロールである。

 「以前は、『水の定期宅配』や『母の日ギフト』といったチームごとに曜日を割り振ってメールを配信しており、売上を立てるために一日に何度もメールを送ることがあったために、オプトアウトが頻発していました」と米島氏は振り返る。   

 曜日ごとに各部署が独自の判断でバラバラにメールを配信していたため、顧客にとって一貫性のないコミュニケーションとなっていたのだ。そこでオイシックスは、CMOが一元的に各チームのコミュニケーションを俯瞰して管理することにし、メールの頻度やクリエイティブをコントロールして、顧客のオプトアウトを防ぐようにした。

 配信するコンテンツを絞り込むと、担当するキャンペーン情報の告知機会が減って売上を落とすチームも出てきたため、メールを減らす場合はサイト内バナーの露出量を増やすなどして、各部署間の利害関係を調整した。

 「顧客視点でのコミュニケーションが大切」だということを否定する人はまずいないが、それを組織として実現するのは簡単なことではない。顧客視点を各チームに浸透させるためには、チームごとの目標設定やアクションプランをよく理解・調整し、顧客満足に集中できる体制を作ることが重要になる。この体制ができたことで、オイシックスは顧客視点の「接客」を実現していく土壌を整備できたのだ。

「最適化のしやすさ」を軸に施策をデザインする

 オイシックスは、顧客中心のコミュニケーションを追求する文化を組織の隅々まで行き渡らせた上で、コミュニケーション施策を「最適化のしやすさ」に配慮した構成にして、PDCAサイクルを回しやすくする工夫をこらした。

 具体的には、シナリオの分岐を無闇に増やさないようにした。施策の最適化のためには、定期的な見直しが必要になる。いわば、施策の「棚卸し」だ。シナリオの分岐が多すぎると、見直しの対象から漏れて放置されるシナリオが出てしまう。結果として、施策全体の定期的な振り返りが困難になる。

 米島氏は「MAを導入することでメールの数が増えたり、配信ロジックを細かく設定しすぎたりして、振り返りが困難になっては本末転倒です。そこで、オイシックスでは自分たちがチューニングできる範囲を決めました」と語る。

 具体的には、シナリオの中でも初回のメッセージを中心に最適化を行うことに決めた。初回に送る文面をパターン分岐させるほうが運用しやすいし、全体への波及効果も大きい。このように、最適化のしやすさを考慮して全体の施策を設計することはMAを導入・運用する上で重要なポイントだといえる。

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「お客様の『困った』」と「企業の課題」を同時に解決する

 ここまで見てきたように、オイシックスのMA活用は、ともすれば実体のない「建て前」になりがちな「顧客中心」という理想を、組織的に実行するための工夫の宝庫だといえる。

 「過剰なおもてなしをMAで自動化するのではなく、お客様が『困った』と感じる状況を打開することに重点を置きました。企業がMAを通じて目指すべきは「お客様の『困った』と『会社の課題』を同時に解決するコミュニケーションなのです」(米島氏)

 その典型例が、「変更し忘れ通知」だ。これは、来週届く食材の注文変更をうっかり忘れている顧客に対して、その顧客が優先的かつ頻繁に確認するチャネルを通じて「変更し忘れ通知」を配信するもの。この取り組みによって、注文の変更を忘れがちだという顧客の課題と、解約を防ぎたいという企業としての課題が同時に解決できたのだ。

 「食べ方お知らせメール」も同じパターンの成功施策。珍しい食材の調理方法や、滋味豊かな食材を存分に味わえる食べ方を、該当する食材を購入した顧客にメッセージ送信する取り組みだ。これもまた、商品の食べ方がわからないという顧客の課題と、食べ方がわからないと再注文につながらないという企業としての課題の両方を一度に解消する施策だった。

 この例からもわかるように、MAでまず始めるべきコミュニケーションは必ずしも複雑なシナリオである必要はないのだ。オイシックスの取り組みを見ると、顧客の課題・会社の課題を抽出し、それをMAでどう解決できるかを考えることから始めるとうまくいくことがわかる。

 CCMPをはじめとするMAのメリットは「こういうコミュニケーションを取ればうまくいく」と考えたことを、実行しやすいことにある。実行して、検証して、見直すというPDCAサイクルを、人力では到底実現できないスピードで行うことに醍醐味がある。

 最後に米島氏は、「お客様のデバイス、接触メディア、コミュニケーション手段に合わせてMAでカバーするチャネルを増やしていきたいと考えています。将来的には、メッセージを決めれば自動的に最適なチャネルでお客様のもとに届くように、MAツールが進化していくことを期待しています」と展望を語り、講演を締めくくった。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/07/07 12:00 https://markezine.jp/article/detail/26544