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デジタル広告の適切なROI評価~アドベリフィケーション最新動向

ブランドセーフティーと不正インプレッションの現実【アドベリフィケーション最新動向】


「不正インプレッション」の正しい理解と対処法

 広告が画面の「閲覧できる範囲」に入っていても、実際の広告の配信先が人ではなくボット(※1)ではまったくの無意味です。ビューアブルとしてカウントすることはできません。

※1 参考情報:最近よく聞く「ボット」とは--知っておくべき基礎の基礎,CNET Japan

 「閲覧」だけではなくクリックやお金がともなわないコンバージョン(資料請求や会員登録など)もボットによって安易に偽装できるため、KPIを問わず「人間のインプレッションか否か」を見極めるのは必要不可欠です。

 上図は実際のJavaScriptを使ったマウスの動きをヒートマップ化したものです。ほぼ一貫して直線ばかり描かれていますが、本来人間が手で動かすマウスの場合、200ピクセル以上の直線を描くことは不可能であり、ボットによる人間行動の偽装を表しています。

 このように、簡易的にではあるもののボットは多くのユーザーの行動を偽装することができ、偽装できるアクションも日々増えています。

 ボットネットは常に新しいIPアドレスを使用するため、一度作成されたボットのIPリストは3日以内には完全に使い物にならない(新しいIPアドレスにすり替わっている)とされます。

 以前までは「Non Human Traffic」という大きな括りで表現されていたボットなどからの不正インプレッションも技術の進歩にともない大きく変化しています。最近では実際のユーザーや消費者からなるトラフィック「Valid Traffic(有効トラフィック)」に対する「Invalid Traffic(無効トラフィック)」と称され、さらに「General Invalid Traffic(以下、GIVT)」、「Sophisticated Invalid Traffic(SIVT)」に分かれています。

 GIVTはビューとしてカウントされるべきトラフィックではありませんが、悪意をもってトラフィックを稼ごうとしているわけではありません。クローラーのIPも公開されているため比較的簡単に検知することが可能です。

 現在MRCが認める非人的トラフィックの検出技術を持つ企業の大半はこのGIVTの検出技術のみの認定を取得しています。一方、非人的トラフィックの8割以上を占め、かつ営利目的で故意に不正インプレッションを稼ぐために用いられるSIVTの検出技術の認定を得ている企業は極端に少ない状況です。

 計測技術の精度に問題がある場合ボットを取り逃がすだけではなく、実際の消費者からのトラフィックを誤って排除してしまう可能性もあります。

 以前米国の某IT企業が独自に行った不正インプレッション計測ベンダーの技術検証比較において、不正インプレッションを最も多く計測したベンダーによる「不正」と判定されたトラフィックから実際の購入があり、実は消費者だったことが後から判明したケースがあります。

 不正インプレッションにおいては計測精度と検出数は比例しないため、MRCのような業界団体が定める技術認定を受けたベンダーのツールを利用することが大切なのです。

 不正インプレッションの被害数は正しいソリューションの利用の有無により大きく上下します。昨年末に話題になったMethbot(※2)も、弊社ソリューションを利用したキャンペーンからはしっかりと排除されていました。

※2 参考情報:'Biggest Ad Fraud Ever': Hackers Make $5M A Day By Faking 300M Video Views,Forbes

 メディアやプラットフォームが独自にソリューションを利用して不正インプレッションを排除する試みも増えています。不正インプレッションから広告予算を守る取り組みが、業界全体でで進んでいるのです。

その他広告の「見え方」を影響する要因

 見えている広告の「見え方」に影響する要因は他にもいくつかあります。「Ad Clutter(広告の多重配信)」や「Ad Collision(広告の重複配信)」がその代表例です。

 Ad Clutterは一つの面に広告枠が多数存在している状況を指します。ときには10以上の枠が存在し、広告が見えていてもその他多くの広告に紛れ、消費者の意識が散漫になり十分な広告効果が得られません。

 Ad Collisionは枠の数自体は多くないですが、同一キャンペーンの同一広告が同時に配信されてしまい、インプレッションの無駄遣いにつながります。

 どちらの問題も消費者目線での広告の印象に大きく影響する可能性があり、これらを踏まえた上でも、効果的な広告運用には総合的な効果検証が必要不可欠なのです。

 以上が「広告の見え方」に影響を与える「ビューアビリティ」以外の要素、「不正インプレッション」「ブランドセーフティー」の解説です。次回はこれら要素の計測データを使ってキャンペーン改善を行う方法をご説明します。

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この記事の著者

山口 武(ヤマグチ タケシ)

Integral Ad Science Japan株式会社 アカウント・エグゼクティブ

ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部卒。2006年、Oddcast, Inc. 入社。2008年、Experian Marketing Solutions, Inc(ニューヨーク本社)にて大手広告主のマーケティングキャ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/29 23:31 https://markezine.jp/article/detail/26583

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