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テクノロジーはマーケティングに何をもたらすのか――電通・森氏と電通デジタル・有園氏に6つの質問

 テクノロジーの発展はマーケティングに大きな影響を与えてきた。家電に搭載され始めた音声認識AIのAmazon Alexaに注目しているのが電通の森直樹氏。電通デジタルの有園雄一氏との対談では、Amazon Alexaがもたらす影響について語っていただいた。今回、編集部では定期誌『MarkeZine』の読者限定イベントにお二人を招き、テクノロジーの導入に直面する読者からの質問に答えてもらった。

Amazon Alexa Optimizationについて

安成:こんにちは、MarkeZine副編集長の安成です。定期誌『MarkeZine』の読者限定イベントも3回目となります。

 今回は電通CDC部長の森直樹氏と、zonari合同会社の代表執行役社長で電通デジタルの客員エグゼクティブコンサルタントである有園雄一さんに、弊誌読者からの質問にお答えいただこうと思います。

 そもそもお二人をお招きしたのは、「主役は家電からエコシステムそのものへ 「Amazon Alexa」はマーケティングをどう変える?」という対談で、Amazon Alexaを始めとするテクノロジーがマーケティングに与える影響について議論していただいたことがきっかけです。

 寄せられた質問は、テクノロジーとマーケティングに関するものが6つ。どれもマーケターにとってはまさに今直面している課題だと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、お二人に最初の質問です。

「音声インターフェイスが主要プラットフォームになったとき、広告はどのような形でユーザーにアプローチすべきでしょうか。「Amazon Alexa Optimization」がSEOのようなものだと考えると、かなり顕在ニーズにアプローチする形になるのではと考えています。では、潜在ニーズに働きかけるには、ラジオCMのような方法になるかもしれません。あるいは、潜在ニーズに対しては別のプラットフォームで考えたほうがいいのでしょうか」

:音声インターフェイスが当たり前になるということは、これまでパソコンのクリックやスマートフォンのタップの代わりとして、対話、つまり声だけで機器を操作するようになることです。ラジオのように音声が流れっぱなしになるのではなく、必要なときに必要な分だけ会話するわけです。

 そうすると広告の入り込む余地がないように思えますが、「水や洗剤が欲しい」とユーザーが言ったとき、いくつかの商品をレコメンドするようにはできるでしょう。ただ、その場合はユーザー側に明らかなニーズが発生しないといけません。ユーザーが何も意識していない状況で、いきなり「ハワイ旅行に行きませんか」とAlexaが言ってくるという手法は今のところ現実的ではないと思います。それは本当にラジオになってしまいますから。

 ですが一方で、Alexaの裏側でオーディエンスデータとつながっていて、「そろそろ旅行に行きたいのではないか」と予測され、突然レコメンドされる可能性もあります。

 もしかしたら、僕に子供ができたことをデータで察知して「子供に学資保険はどうか」とおすすめしてくるかもしれません。これは今デジタルで行われていることとほとんど同じです。なので、ネットだろうが音声だろうが、あるいは将来映像インターフェイスが普及しようが、原則としては同じでしょうね。

森直樹氏
森直樹氏:株式会社電通 CDC
エクスペリエンス・デザイン部長 クリエーティブ・ディレクター

有園:潜在ニーズ、つまりその商品を欲しいと思っているのかユーザー自身にすらわかっていない状態に対しては、テレビCMでアテンションを作るなどしていく必要があるでしょうね。音声対話で代替されていく領域ではないと思います。つまり、プッシュ型のコミュニケーションはこれからも必要だということです。

 もちろん森さんが言うように、ユーザーの行動履歴を取って潜在ニーズを見出し、レコメンドを行えるようになるかもしれません。たとえば、Alexaで音楽を流しているとき、ユーザーのニーズに合った広告を入れる感じです。

外部環境の変化がデジタルマーケティングに与える影響

安成:2つ目の質問です。

「今後テクノロジーが進化するのと同時に、企業を取り巻く外部環境も大きく変化していくと思われます。例えば少子高齢化や人口・働き手の減少。それにともなう消費者の減少と企業収益の減少。そして収入の減少と、それを補うための消費行動の変化などです。こうした変化がデジタルマーケティングに与える影響についてうかがいたいです」

:実は私の仕事にはこういうお題が多いんです。2035年になれば75歳以上の人が人口の3割になる、地方の限界集落がなくなっていく、といったデータをもとに、自社では何をしていくべきかというプロジェクトです。

 対応策は業界によって様々ですが、挙げられた変化はデジタルマーケティングに与える影響よりも本業に与える影響のほうがはるかに大きいですよね。無理してテクノロジーのトレンドを追わなくても、生活者のメディア接点はほとんどがデジタルになっていきますし、高齢者でもデジタルとの接触時間が増えていますから。

 人口減少に関しては、単身世帯が圧倒的に増えるという予測があります。そうすると、家族向けよりも単身者向けのニーズをより考えなければなりません。さらに高齢者世帯の割合が増えるので、目が悪くなる人のことを考えて音声インターフェイスにしたりタブレットの画面を大きくしたり、あるいはWebの構造自体を変えていったりする必要もあるでしょう。そういう影響で言えばたくさんあります。

 おすすめとしては、自社の役員やステークホルダーの事業部の方と、2025年や2030年になったら世の中にどうなっているかという予測をした本やデータを参照しながら、自分たちが影響を受ける範囲について議論するのがいいですね。すると、見えてくることが多々あります。大体「やばい」となると思うんですが、競合も同じなので、先手を打てるのではないでしょうか。

有園:質問で挙げられている変化は国内でのネガティブなものばかりですが、世界的に見れば人口は70億人を超え、いずれ頭打ちになるという予測もありつつ、しばらくは増加を続けるでしょう。たしかに日本の経済成長は鈍化していますが、世界的にはぐんぐん成長しています

 現実として日本は儲からない国になっているんですが、生産性を高めることはできると思います。というよりむしろ、その方向で頑張るしかない気もします。僕自身はコミュニケーションが適切に行われることと、ものの流通が活発になることで、生産性を高められると考えています。

有園雄一氏
有園雄一氏:zonari合同会社 代表執行役社長
株式会社電通デジタル 客員エグゼクティブコンサルタント

 たとえば、これからは必ずしも人から人にコミュニケーションする必要がなくなるでしょう。Alexaもそうですが、モノから人に適切な情報を送ってくれるようになるので、人口が減っても適切なコミュニケーションと流通は可能です。それによって需要が喚起され、商品やサービスが売れるようにしてしまえばいいんです。その方法論は人口の多い海外でも通用するでしょうから、悲観的になるばかりではありません。

 なのでマーケターとしては、「情報は人が発信する」という前提から、「モノが発信する」という状況にできるように頭を使わなければなりません。そうすれば、意外と未来は明るいのではと思います。

ヘルスケアや食生活における行動の変化

安成:3つ目の質問です。

「ヘルスケアや食生活の領域において、IoTなどのテクノロジーを利用した生活者の行動を変える提案やソリューションについて意見をいただきたいです」

:ヘルスケアに関しては、既にIoTの成長市場の一角を担っています。実は昨年、私は3ヵ月で体重を79kgから66kgまで減量しました。そのときにやったのが、ウェアラブルデバイスで活動量を計測し、IoTの体重計を使っての体重マネジメントです。この方法のいいところは、自分の情報をビジュアルで教えてくれるのとデータを分析してくれることです。また、クラウドにつなげると別の人のデータから自分に適した施策を提案してくれるんです。このようにサポートされると行動しやすくなりますね。

 食生活は農業から料理、外食まで、範囲がものすごく広いです。農業であればIoTとの連携は様々に考えられるでしょう。マイクロファームのような形も生まれて、地産地消の動きが促進されてもいます。料理とIoTの組み合わせは未知数ですが、レシピのレコメンドや調理のサポートをしてくれるようになるのではないでしょうか。

 あるいは、夏場には食中毒のリスクがあるので、何らかのテクノロジーで事前に察知して危険度を教えてくれる可能性もあります。食生活に関してはいくらでも可能性があると考えていいと思います。

有園:僕も健康管理を試してみています。1日560kcalの運動をするように心がけているんですが、これに届いていないと「運動が足りていない」と通知が来るんですよ。それによって自分の行動は明らかに変化します。というのは、通知で「あ、今まだ260Kcalなのか」と知ると、一駅分は歩こうかなと思って実行するんです。

 ヘルスケアにおいては、すでにテクノロジーとの連動が始まっています。

壇上
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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/07 11:08 https://markezine.jp/article/detail/26804

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