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カスタマージャーニー研究プロジェクト(AD)

お客様の期待に応え「頼れるカード」になるために、社内を巻き込み突き進むJCB WEB統括部

 JCBは2015年4月、それまでの社内のデジタル関連組織を大幅に見直し、全社のデジタル戦略を推進するWEB統括部を新設。Webサイトやアプリをはじめとするすべてのチャネルを顧客視点でリニューアルし、さらに2017年2月からは「Salesforce Marketing Cloud」を導入、カスタマージャーニーを精緻に捉え、顧客とのコミュニケーションの改善に着手している。社内の各部署を巻き込み、顧客体験の質を高めることでLTVを向上させている、同社のスピード感ある取り組みを取材した。

少数精鋭で全社のデジタル戦略を統括

 国内だけで8,100万会員、海外を含めて実に1億以上の会員を擁するジェーシービー(以下、JCB)。CRMデータの容量は40TBに上るというから驚く。同社は2015年4月、全社のデジタル戦略を担うWEB統括部を立ち上げた。これまで各事業や商品・サービスごとに存在していたデジタル関連機能のうち、戦略立案から推進の統括をとりまとめた形だ。

 同部の業務の範囲は、実に幅広い。海外を含め、会員や加盟店などのステークホルダーがアクセスするWebサイトやアプリ、ソーシャルメディアなど100以上のチャネルのガバナンスと戦略立案、施策の推進だ。さらに、会員専用Webサービス「MyJCB」およびアプリの開発や運用なども担っている。

 MyJCB アプリや、海外旅行を楽しむアプリ「JCB海外優待 たびらば」などがある。
MyJCB アプリや、海外旅行を楽しむアプリ「JCB海外優待 たびらば」などがある。

 これらを、ガバナンス、データ分析、CXデザインの3チームからなる企画グループと、WEB推進グループの2体制で進めている。社員21名、協力スタッフ数名の少数精鋭で、カードの会員獲得や利用促進などを担当する各事業部門と都度タッグを組み、施策を検討・試行して軌道に乗せるまでを進めている。

 同社の主な事業は、カード事業、加盟店事業、各種カードへのブランドライセンス事業、カード事業者から決済スキームを受託するプロセシング事業の4つ。大きく、BtoCとBtoBtoCのモデルの2種類がある。

 「いずれにおいても、お客様の日常の生活やライフイベントに寄り添い、期待に応えることで『持っていてよかった』という存在になることを目指しています」と、WEB統括部長の岡田良太氏は話す。

株式会社ジェーシービー WEB統括部長 岡田良太氏
株式会社ジェーシービー WEB統括部長 岡田良太氏

有効な指標・施策を速やかに見極める、クラウド導入の理由

 かつてJCBの顧客体験の場は、カードを使う店舗の対応などが中心だったが、やがてコールセンターや海外サポート窓口のJCBプラザでの対応も重要度が増し、今では直接の接点であるデジタルチャネルの存在感がとても大きくなっている。

 「そこでしっかりとお客様と良好な関係を築いて初めて、BtoBのパートナーともWin-Winの関係を築けると考えています」(岡田氏)。

 そのため同社は以前から「顧客視点」を掲げたサービス向上に取り組んできたが、このデジタル時代に多様化する顧客に寄り添ったアプローチを実現するために、2017年2月から「Salesforce Marketing Cloud」(以下、Marketing Cloud)を導入している。

 Marketing Cloudを導入した大きな理由は、そのスピード感にある。岡田氏は、各チャネルから集まる顧客の要望にすべて目を通しているというが、「お客様にとって当たり前のことを当たり前に実現するのは、企業にとっては決して当たり前ではない」と苦労を語る。

 「どうすればお客様満足が上がり、LTV向上につながるのか、自己満足ではなくしっかりとKPIを設定して追う必要があります。ただし要素が多いので、様々な取り組みのPDCAを速く回して、有効性を速く見極めていくことが重要です。それはオンプレミスでは対応できない。都度、必要な契約をすることで、速くPDCAを回せる実行環境として、Marketing Cloudは最適でした」(岡田氏)

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まず、各ライフステージでの顧客の“当たり前”を分解

 では、実際に現在どのような施策を実行しているのだろうか?

 前提として、カードには入会や利用促進といった複数のライフステージがあり、それぞれのステージにおいて各顧客の“当たり前”がある。その抽出と分解が取り組みの第一歩となった。各ステージで理想のカスタマージャーニーを描き、その中の各プロセスにおける顧客の期待を整理した上で、ではその期待に応えられているのかを考え、ギャップを洗い出す。そこでも、先の岡田氏の話のように数値で可視化しなければ感覚的になってしまうので、逐一KPIを設定して数値での確認を基本とした。

顧客行動・気持ち、現状と必要な施策を整理
顧客行動・気持ち、現状と必要な施策を整理(イメージ)

 Marketing Cloudを用いた顧客満足の向上には、WEB統括部の企画グループ内のCXチームが主に取り組み、データの抽出などは分析チームがサポートしている。CXチームの桑原光彬氏は、チームについて「Webサイトやアプリ、メールなどのデジタルチャネルを活用した顧客体験の最適化がミッション」と話す。

株式会社ジェーシービー WEB統括部 企画グループ 主任 桑原光彬氏
株式会社ジェーシービー WEB統括部 企画グループ 主任 桑原光彬氏

 最初に取り組んだのは、「入会初期」のライフステージでの顧客体験の改善だ。事前に部内でカスタマージャーニーのたたき台を作成しながら、入会後のコミュニケーションを主管する部署に取り組みの背景や目的を説明し、合わせて同部に現状の取り組みやKPIをヒアリング。チームビルドに、今年の2月ごろから2ヵ月ほどかけたという。

3時間のワークショップで顧客行動・心理の仮説を構築

 プロジェクトの要は、3時間に及ぶワークショップ。カードを申し込んだ顧客が1~2週間後にカードを受け取ってから、具体的にどういう行動をとるのか。その都度、どんな希望や要望があるのか。それに対して現状でどうアプローチしていて、その反応はどうか。それらを把握し、理想のカスタマージャーニーに対して欠けている穴を埋める施策を検討した。

 たとえば以前は、入会後1ヵ月ほどしてからウェルカムプログラムとして、カードの使い方に関する6話構成のメルマガを送付していた。しかし実状を調べると1ヵ月後には多くの顧客が初回利用を終えており、また顧客全員への自動配信のため各人の利用状況を踏まえてはいなかったことから、もっと初回送付を早め、かつ未利用の顧客へは別のアプローチが必要だと浮かび上がった。

 そこで、メルマガでの解説とは別に、入会初期施策としてシナリオメールを設定。1~2週間のうちに、入会のお礼から始まる4通のメール送付を計画し、ワークショップ後に実際にMarketing Cloudを通して実行。

 すると、入会のお礼メールは開封率が約70%と高い数値を示し、MyJCBへのログインページなどへのクリック率も約43%となった。続く初回利用のお礼メールなどでも、同様に高い反応が得られたという。

 「当社から配信するスポットのメールだと、開封率は20%ほどなので、施策を実行してみて、タイミングを捉えたアプローチが大切だと実感しました」(桑原氏)

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LTVを意識したシナリオメールで利用額10%増

 さらにカード未利用者をセグメントして、入会後の休眠化を防ぐフォローメールを新たに実施。コンビニやスーパーなどの日常の利用でポイントが貯まることなどを訴求したところ、こちらでも手応えのある結果が得られている。

カード未利用者フォローメール(一部抜粋)
カード未利用者フォローメール(一部抜粋)

 詳細な効果は現在検証中だが、Marketing Cloudによるシナリオメールを送り始めて、入会後のカード稼働率が5%ほど改善した。下の図は縦軸に稼働率、横軸に時間をとってLTVをグラフ化したものだが、従来と現在の曲線の間の面積が、今回コミュニケーションを変えたことによる成果であり、LTVの伸長分だ。

 稼動が増えるにともない、顧客一人あたりの利用額も10%ほど上昇。メール内のクリック率の増加により、会員向けアプリの利用促進にも大きく貢献している。

 開封率などの反応を把握するだけでなく、それが会社のKPIにどうつながるのかを証明することが重要だと岡田氏は指摘する。

 「個々の施策とKPIの上昇をそのステージのみの瞬間風速で終わらせず、ビジネスへの貢献を明確に見据えて、効果を維持しながら次のステージでの体験へパスをつなげていくことが大事だと考えています」(岡田氏)

多様なコミュニケーション分岐を実現、施策をより高度に

 現状では、「JCBオリジナルシリーズ」カードを中心に「入会初期」顧客に対して、未利用者向けに分岐した内容も含めて15本ほどのメールを運用している。

 桑原氏は「さらに、カード申し込みの目的や利用意向をアンケートなどで把握できれば、その分だけお客様に応じたシナリオを追加できます。このお客様起点でのアプローチについて、社内の各部署からの理解・協力を得ながら順次進めていきます」と語る。

 同社では、この「入会初期」といったライフステージを約10に分割している。今後はまた別のステージの主管部署とともに、同様の改善を模索し、継続的に行うべき施策をオペレーション部門に引き渡せるまで確立していく。

 「Marketing Cloudの導入理由の一つは、このコミュニケーションの複雑な分岐に対応できることです。様々なケースに応じたコミュニケーションを実現していきたい」(岡田氏)

 2020年への中期経営計画を見据えつつ、半年単位で全ステージのカスタマージャーニーを見直し、顧客体験の質をさらに高める考えだ。

 「新しい技術によって機能がどんどん実装されるMarketing Cloudは、やりたいことがまだたくさんある我々によく合致しています。Salesforce DMPやAIの『Salesforce Einstein』によるターゲティングも検討したいですね。膨大なCRMデータとWebのログ、そして新しい技術を組み合わせて、お客様の入会時の期待値やNPSが右肩上がりになるようにしていきたいです」(岡田氏)

 WEB統括部が新設された2015年、JCBは新たにブランドメッセージ「世界にひとつ。あなたにひとつ。」を掲げ、「おもてなしの心」「きめ細やかな心づかい」で顧客一人ひとりの期待に応える旨のステートメントを定めた。それから約2年、スピーディーに着実にその実現を進めているようだ。

カスタマージャーニー研究プロジェクトチームのコメント

加藤:JCB様のアプローチからは、どのようなテクノロジーを使おうとも、カスタマージャーニーの要素を分解し、顧客の行動や心理を仮説として抽出することの大切さが伝わってきます。
 また、クラウドはマーケティング施策やシナリオのPDCAを高速で回すことに向いています。JCB様のアプローチを他の例えで説明すると、商品を短期間で市場に出して検証するような高速R&D的な考え方でマーケティング施策を捉えている、といえます。とても特徴的かつクラウドを上手に活用されている例ではないでしょうか。

押久保:「お客様にとって当たり前のことを当たり前に実現するのは、企業にとっては決して当たり前ではない」という言葉が印象的です。この「当たり前」を実現するための手段として、テクノロジーがあると改めて考えさせられました。
 顧客志向の体現は、まずこの大前提を理解することから始まるのでしょう。また、導入理由の一つとしてスピード感を挙げられていた点も、深く共感しました。

カスタマージャーニー研究プロジェクトとは?
「カスタマージャーニー」、顧客の一連のブランド体験を旅に例えた言葉。デジタルやリアルの接点が交差し、顧客の行動が複雑化する中、「真の顧客視点」に立って、マーケティングを実践する重要性が増してきました。
カスタマージャーニーに基づいたマーケティングの必要性は、その認知が進む一方で、「きちんと“顧客視点に基づいたシナリオ”を作成し、運用できている企業はまだまだ少ない」多くのマーケターに意見を聞くと、そのように認識されています。
今回、押久保率いるMarkeZine編集部とセールスフォース・ドットコム マーケティングディレクターとして、各企業とジャーニーを研究してきた加藤希尊氏を中心に、共同でカスタマージャーニー研究プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトでは、「顧客視点のマーケティング」における成功例を取り上げ、様々なアプローチ方法をご紹介していきます。その他の成功例はこちら

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この記事の著者

加藤 希尊(カトウ ミコト)

チーターデジタル株式会社 副社長 兼 CMO
広告代理店と広告主、BtoCとBtoB両方の経験を持つプロフェッショナルマーケター。WPPグループに12年勤務し、化粧品やITなど、14業種において100以上のマーケティング施策を展開。2012年よりセールスフォース・ドットコムに参画し、日本におけるマーケティングオートメ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/10/18 17:42 https://markezine.jp/article/detail/27088