お客様目線に立ったとき、「おつり」ってわずらわしい
――セブン銀行さんが今回「トラノコ」を提供しているTORANOTECさんとの協業に踏み切られた背景について、セブン銀行の松橋様にうかがっていきます。
松橋:「おつりで投資」という「トラノコ」の世界観を、日々たくさんのお客様と少額のお金のやりとりをしているATMやお店での決済の場に持ち込めば、新しい世界が作れるのではないかと考えたことが、今回の協業の背景にあります。
――「小口決済」というのが「トラノコ」とセブン銀行に共通するところですね。セブン銀行は、1日に2,200万人以上のお客様がおとずれるセブンイレブンや、グループ内外の商業施設や交通機関を中心に、ATMを合計約23,600台設置されています。
1台につき1日平均利用数が約100回とのことですので、1日あたり約230万回もお客様との接点があることになります。その方たちの多くは高齢だったり、あるいは若年層の方だったり、女性だったりと、あまり金融商品との接点がない方たちが多いと思われます。
そこで、お買い物等で発生する小口のお金のやりとりを金融商品に回していけば、セブン銀行さんとしても事業ポートフォリオの多角化ができるという狙いがあるのでしょうか。
松橋:いえ、うちの利益構造をどうするかというよりは、お客様にどのような価値を提供するかという発想によるものなんです。我々はATMをセブンイレブンに導入したときから、事業者側の視点ではなく、お客様側の視点で既存のアプローチを作り直すことを心がけています。
おつりって、財布の中でかさばるし、店員と手渡しし合うことも面倒くさいですよね。この面倒くさい「おつり」という現象をどう工夫・解決すれば、顧客体験を向上させられるか、というのが発想の根幹です。
将来的には、お店で買い物をすると、自動的におつりを投資に回せるようなると面白いと思っています。レジの仕組みや、オペレーションを変えるハードルは高いですけれど。
さらにいえば、「お客様が気楽にコンビニで金融サービスを使える」という未来像をTORANOTECさんから頂いたときに、ビビッと共感したのが大きいですね。
セブン銀行として自社の金融商品に誘導するつもりは100%ない
――普通の人にとって金融商品は「証券会社か銀行で売っている、よくわからないもの」です。それがコンビニで気軽に投資できるものになると画期的ですね。「トラノコ」をきっかけに、投資商品の扱いを拡大していくご予定はあるのでしょうか。
松橋:我々が投資商品を扱うということはないですね。そもそもセブン銀行は、証券などの運用商品を扱っていません。投資信託もやっていないので、「トラノコ」さんの簡単に始められる投資信託商品をステップに、最終的にセブン銀行が運用管理する金融商品に誘導しようという意図はまったくないんです。
むしろ、お客様の投資に対するハードルを下げて、日々のお買い物の場で投資できればすばらしいのでは、という単純な考えが中心にあります。
セブン銀行を、お客様が簡単・便利にお金を投資に回す場に
――具体的にはお客様の目線から見たときに「お買い物をしながら投資できる」というのは、どういったサービスになるのでしょうか? どのようにして、「トラノコ」で投資する仕組みなのでしょうか。
松橋:現時点では、デビットカードやnanacoでの決済を起点に、「トラノコ」に投資できる仕組みとなっています。最終的にはお店で買い物をしたときに、どんな決済手段でも、お客様が要望すればおつり分が投資に回るというのが理想です。
まだ具体的な目処はたっていませんが、たとえば、レジがセルフ決済対応になれば、ボタンを押すだけでおつり相当額を「トラノコ」に回すことも可能です。さらには、硬貨のおつりを電子マネーにチャージする仕組みができたら、チャージしたあとに「トラノコ」にお金を移すこともできるようになります。こちらは、実験段階での実現を検討しています。
他にも、「今日給料が多かったから、セブン銀行のATMで『トラノコ』に千円入れて帰るかな」という体験も考えられます。「これはせっかくもらった1万円だから、これは『トラノコ』だ」なんてことも考えられますよね。そうするとお客様の中で、セブン銀行のATMという場所が、今とは違った意味を持ってくる。まだアイデアの段階ですけれど。
結局、「ATMやお店で現金の出し入れ、電子マネーへのチャージが、その人のやりたいやり方で、スマホでもカードでもできるようになる未来を作ろう」というビジョンのもと、様々な議論をしているんです。