「ポカリスエット」の理想的な事例とは?
「ブランドメッセージ × ソーシャルメディア上のコンテクスト × トライブニーズ」の掛け合わせが理想的な形で実現されたのが、高校生のダンスコミュニティを巻き込んで大反響を呼んだ大塚製薬「ポカリスエット」のプロモーションです。

大塚製薬の「ポカリスエット」は、「青春に汗を流す若い世代の人々の応援」をテーマに30年以上にわたってTVCMを行っています。2016年は、新人タレントの八木莉可子(やぎりかこ)さんを起用し、総勢300名のダンサーと本格的なダンスに挑戦するTVCMを実施しました。
その後、このCMをきっかけに、夏には「ポカリガチダンス選手権」をMixChannel上でスタート。2017年2月には「#ポカ動 すごい!青春一発動画」、5月には再度ダンスのレベルを上げた「ポカリ鬼ガチダンス選手権」を実施しました。
参加者の意欲を上手に煽りながら、TVCMと平行してこれらのデジタル施策を打ち続けたのです。各施策を行う際には「ダンスの見本動画」をアップしており、ダンサーとして中高生に人気のインフルエンサーを多数起用していました。

「ソーシャルメディア上のコンテクスト」は、ダンス(踊ってみた)
この時のブランドメッセージは、「自分は、きっと想像以上だ。潜在能力をひき出せ。」でした。このメッセージを商品のメインターゲットである中高生に届けるために大塚製薬が掛け合わせた「ソーシャルメディア上のコンテクスト」が、“ダンス(踊ってみた)”です。
昨今、ダンスをきっかけにしたコンテンツがソーシャルメディア上で話題になることが良くありました。たとえば、2013年にはAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」、2016年には「恋ダンス」を企業の社員や一般人が“踊ってみた”動画が話題となったように、施策当時「踊ってみた動画」は人気の動画カテゴリーとしてすでに確立されていました。
これらの動画はすでにソーシャルメディア上に多数アップされており、ダンスの話題はエンゲージメント(いいね!、シェア、リツイートなど、投稿に対する生活者のアクション)しやすい状態にありました。
また、それゆえ、ダンスを取り巻く若者のトライブも規模、質ともに十分に充実していました。この施策でターゲットとしたトライブは、おそらく、“ダンスに抵抗がなくイベントごとへの参加に積極的な一般的な中高生から、激ムズダンスにチャレンジしたくなる中高生ダンサー”まで幅広いものであったと想像されます。
そして、このトライブのニーズは「より難易度の高いダンスを他の人よりも上手に踊りたい」「その姿を多くの人に向けて発表したい」などが考えられます。こうして見ると、ブランドメッセージである、「自分は、きっと想像以上だ。潜在能力をひき出せ。」をターゲットである中高生に伝えるための「コンテクスト」と「トライブ」として、ダンスがいかに最適だったかわかります。
直近で行われた「鬼ガチダンス選手権」だけを見ても、募集期間わずか8日にして700以上の応募が集まっており、数字からも相性の良さが明らかになっています。