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スモールスタートからMAを成功路線に 地に足のついたTSI ECストラテジーの事例に学ぶ

 自社アパレルブランドのECサイトMIX.Tokyoを運営するTSI ECストラテジーは、チーターデジタルのMA「CCMP」を導入。スモールスタートを実現し、MAを活用したPDCAサイクルを早期に定着させた。導入からの約1年を振り返り、ツール選定の理由から具体的な施策運用までの成功ノウハウを10月25日に行われたチーターデジタル主催のセミナー「Marketing Forward 2017 Autumn」で語った。

進むアパレル業界のデジタルマーケティング

 「TSI ECストラテジーが実現したMA運用の自走化 ~導入・運用においてスモールスタートを成功させた秘訣とは?」と題した講演に登壇したのは、株式会社TSI ECストラテジー デジタルマーケティング部 オムニチャネル推進課の飯田祐紀氏だ。同社は総合アパレル企業、TSIホールディングスのグループ会社である。

株式会社TSI ECストラテジー デジタルマーケティング部 オムニチャネル推進課 飯田祐紀氏
株式会社TSI ECストラテジー デジタルマーケティング部 オムニチャネル推進課 飯田祐紀氏

 TSIホールディングスは、2011年に東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合し設立。「nano・universe」「JILL STUART」などを代表する34のブランドを持ち、国内に約1,400店舗を展開する。

 その中でTSI ECストラテジーは、グループ直営のショッピングモールMIX.Tokyoの運営と、各ブランドのEC事業およびデジタルマーケティングを統括している。

 2017年2月期におけるグループ全体の売上は1,591億円。そのうちEC売上は255億円で、EC化率は16%となっている。

 ユーザーの好みが多岐にわたり、また扱う商品数も多くシーズナリティが重要視されるアパレル業界では、ECの強化とマーケティングオートメーション(以下、MA)を導入したデジタルマーケティングの事例が目立つ。しかし飯田氏は「当初、MAを導入する予定ではなかった」と語る。

2つの課題解決に適したCCMP

 では、TSI ECストラテジーはどのようにしてMAの導入に至ったのだろうか。飯田氏はまず同社の抱えていた2つの課題を語る。

 「一つは、これまで使っていたメール配信システムの配信到達性に問題があったこと。もう一つは、お客様ごとの最適なコミュニケーションをメールで実現できず、その結果顧客ロイヤリティが向上できていなかった点です」(飯田氏)

 配信到達性とは、遅延なく不達(迷惑メールBOX入りを含む)なく、マーケターの意図通りに、メールを届けるために必要な性能である。同社ではメール会員数の増加にともない、全体の4分の1のメールが配信しても意図したとおりに届かないという状況に陥っていた。そのため配信基盤のリプレイスを考え、当初はチーターデジタルが提供する、配信到達性に定評のあるメール配信システム「MailPublisher」の導入を検討していたという。

 さらに、当時配信していたメールマガジンは一律のコンテンツだったため反応率が下がっていた。お客様の定着化とロイヤルカスタマー育成を実現するためには、お客様ごとに合わせたコンテンツを配信していく必要があると考えていたのだ。いくつかツールの検討をしていく中で、飯田氏はチーターデジタルのCCMPを知る。

 「CCMPはMAの基本的な機能に加えて、高い配信到達性を保持しています。MA導入後もシナリオ配信だけでなく、ブランドメルマガなどの一斉配信を同時に運用していきたかったため、運用をワンプラットフォームに集約できるイメージが持てました。それが決め手となりCCMPを選定しました」と話した。

 また、同氏は自社が持っていた課題が解決できること以外にもCCMPを選ぶ決め手となった理由を2つ挙げた。1つ目は、データ活用が容易にできるということ。導入後、部署内で定着させるためには「マーケティング部門の中で運用できる」という視点を重要視した。

 中にはデータを抽出するために、SQLなど特別な知識を要するものもある中で、CCMPはそれが管理画面の操作だけで完結する。データ活用のハードルを下げることで、コミュニケーションの最適化やお客様の定着化・ロイヤルカスタマーへの育成といった課題の改善が期待できると考えたのだ。

 そして2つ目は、チーターデジタルのサポート体制だという。

 「チーターデジタルさんは、いつでも問い合わせができるサポート体制が整っています。問い合わせはメールでのみ、時間を超えた場合は有償といった制約もなく、不明点があった場合は電話で気軽に相談することができます。そうすることでスピーディーにPDCAを回す体制を整備できると思いました」(飯田氏)

ECの鉄板シナリオ5つを実装、その内容とは?

 続いて飯田氏は、CCMPの具体的な運用体制について語った。

 運用は2つの体制に分かれ、お客様のリアクションに合わせてシナリオが実行されるような自動化施策は飯田氏が担当。マニュアルをもとに一斉配信を行うブランドごとのメールマガジンについては、各ブランド窓口とマーケティング部門の担当者2名で運用しているという。

 さらにシナリオについては次の5 つを紹介し、それぞれの内容も語られた。

MIX.Tokyoが活用しているメール会員向けシナリオ

1.会員登録後フォロー

2.2回目購入促進

3.お気に入りブランド新着

4.レコメンドメール

5.休眠防止

 まず、会員登録後フォローのシナリオは、サンクスメールから初回の購入まで見据えた内容となっている。

 「メールマガジンの会員登録後、翌日にサンクスメールとMIX.Tokyoの使い方を配信しています。3日後にはアプリの紹介メールを配信し、ダウンロードと購入を促します。それでも初回の購入がなかったお客様へは、7日後にファッションスナップとインセンティブをつけたメールを配信しています」(飯田氏)

 続いて会員のリピート購入を目的とした2回目購入促進のシナリオでは、初回購入から14日後にメールマガジンを配信。そのアクションで購入がない場合は、さらに14日後(初回購入から28日後)、送料無料のインセンティブをつけたメールを配信している。

 また離反を防ぐ休眠防止シナリオとしては、最終購入日から未購入が45日・60日・90日と続く場合、メール配信を行っている。購入がないまま90日が経過した会員に対してのメールマガジンでは、購入ランキングとインセンティブをつけ、会員の離反を防いでいるという。

PDCAを回し、施策を3段階で成長させる

 続けて、導入から運用のPDCAがしっかりと回せるようになるまでの経緯を飯田氏は明らかにした。同社がCCMPの運用をスタートしたのは、2016年の12月。そこから2017年9月までの期間を3つのフェーズに分け、具体的な施策が紹介された。

 第1フェーズでは、施策の実行を最重要視し、3つのシナリオで運用を開始。設定したシナリオは「お気に入りブランド新着」と「2回目購入促進」、「レコメンドメール」。「最小限で課題の解決に必要だと思われるシナリオを選別した」と飯田氏は話す。

 運用5ヵ月後となる2017年4月からは第2フェーズに移行し、シナリオの見直しが図られた。

 「レコメンドメールの配信母数が想定を大幅に上回ったことから、見直しが必要と考え一旦停止することにしました。また2回目購入促進も反応が薄かったため、分岐を追加して2ステップでメールを配信するように改修を行いました」(飯田氏)

 さらに、新規の施策として登録後フォロー、休眠防止のシナリオを追加。ユーザーの定着化・ロイヤルティを課題とし、施策の「見直しと強化」を重視したのである。

 第3フェーズとなる2017年の8月には、売り上げに直結しやすいレコメンドメールを再開。レコメンドメールとお気に入りブランドの新着メールは配信母数が多くなる。そのためメール内のリンクをクリックしている、もしくは購入履歴のある場合はアクティブユーザーと定義し、セグメントを設定した。そこには効率的にサイトへの流入・売り上げを向上させる狙いがあった。

 また、一斉配信のメールについても、開封履歴の有無でセグメントを設定。全体配信とセグメント配信でA/Bテストを行いながら、施策の効率化を図った。

MA導入・運用が成功した4つのポイント

 CCMPを導入し、スモールスタートから着実な運用を続け、課題を解消してきたTSI ECストラテジー。あらためて飯田氏は、MA成功のポイントを4つにまとめた。

 1つ目は、「運用担当者が実際に運用できるツールを選定する」こと。CCMPを選んだ理由についても、「複数の担当者が利用するため、特別な知識を必要とせずどんな人でも使える操作性を重視した」と語るほど、重要なポイントとなっている。さらに運用に関わる現場スタッフとともに、ツールの使用感などを確認しておくことが大切だとした。

 2つ目は、「スモールスタートが目的化してはいけない」ということだ。できることや最小限の工数でスタートすることではなく、当初の目標に対して考えられた施策に優先順位をつけ、できる範囲で実行することが重要だという。

 そして、3つめのポイントとして飯田氏は「拡充を見据えた上で必要なデータを用意していく」ことを挙げ、その理由を解説した。

 「たとえば、初期の施策を初回購入促進とカート放棄のフォローメールを行う場合、必要なデータは会員マスタ、購買データ、カートデータ、商品データとなります。スモールスタートを優先させた場合、連携するデータも最小限にという考えに陥りがちですが、今後実施する予定の施策を実行する上で、別のデータ連携が必要になるのであれば、最初の段階でそれらを加味したデータの要件定義をすべきです。」(飯田氏)

 そして最後、4つ目に飯田氏は「ベンダーの適切なサポートを受ける」ことを挙げた。先述したように、CCMPの選定理由の1つにチーターデジタルのフルサポート体制が入っていた。将来的にはサポートに頼らない体制の整備も考えていると飯田氏は前置きしたが、そのためにも、自社でナレッジを蓄積できるようなサポートの活用が必要だとも示した。

MA運用は次なるステップへ

 最後に飯田氏は、TSI ECストラテジーのようにMA運用を拡大させる方法として「自社の目的や課題解決にあったシナリオを必要最低限で実装し、PDCAを回すことで効率化していきましょう」と語った。施策を実行し、見直しと強化を重ね、効率化するというサイクルには、手応えを感じているようだ。

 そして今後の課題として、さらに効率性やLTVの向上に注力し、中長期的な顧客とのつながりを強くしたいとするTSI ECストラテジー。飯田氏は「CCMPを活用し、どのようなユーザーコミュニケーションが実現できるのかチャレンジしていきたい」と話し、講演を締めくくった。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/01/22 10:00 https://markezine.jp/article/detail/27477