定性的なデータを基に、マーケの基礎力を向上
――マーケティング部と現場で連携による効果は、実際に感じられますか?
笠:ええ。ターゲットとして設定しているお客様像を全部署で理解することの大切さは実感しています。こういう人が来るはず、と狙った通りのお客様が実際にいらっしゃると、劇的に成約に結びつく可能性が上がりますね。
――ターゲットとするお客様のセグメントは、どのように探っていますか?

笠:先月このワードを使って成功したから、今月もこれで行こう! みたいな小手先のやり方も大事ですが、我々はそういった定量的なデータだけでは考えません。それより先の「なぜお客様はこのワードに惹かれたのか」という定性的な部分まで考えることが大事だと考えています、
キャンペーンに関しても同じように考えていて、キャンペーンでの成功事例をそのまま応用することもしません。キャンペーンで成果が1.5倍になったとか、短期的な売り上げ目標を達成したというような事例は沢山ありますが、それをそのまま応用するのは本質的ではないと思います。
じゃあ、なんのためにキャンペーンを行うのかというと、「検証」のためです。キャンペーンを実施すると沢山のデータが集まるので、まずそれを解析に回します。その中で成果が出た要素を抽出して、また検証を繰り返し、どれがレギュラーで使えるかを探っていきます。このPDCAでマーケティングの基礎力を向上しています。
もちろん短期的に数字をリカバーする必要がある時もあるので、そういう時にも行いますが、麻薬みたいに依存してしまうようなことは避けなければなりません。キャンペーンはあくまでキャンペーンで、マーケティングの本体ではなく、たまにやるからスタッフの士気も予算もぐっと高められるのではないでしょうか。
業界の最先端のさらに先を追いかけるのがベスト
――ブライダル以外のレストラン・宿泊事業ではどのようなマーケティングを行っているのですか?
笠:レストランと宿泊の事業は、リピーターがいるという点で、ブライダル事業とは明確な違いがあります。ポータルサイトでは、一休やぐるなび、食べログ、ヒトサラなどに出稿していますが、こういったサイトは一見さん向けの施策です。そこからリピーターを増やし、最終的にはアンバサダーのようなお客様を増やしたいですね。

ですが、我々は集客をゴールとして設定していません。レストラン事業では、マーケティング部とサービススタッフ、シェフが同じ目標を共有することが大事なので、「顧客満足度の先に売り上げがある」というキーワードを全員共通で掲げています。全員の目標が一致するように、レストラン事業でもマーケティング部・サービススタッフ・シェフが月に1度集まってミーティングを行います。
――レストラン事業でも、ポータルサイトの運営は現場のスタッフがやられているのでしょうか?
笠:はい。その店舗の次次世代マネージャークラスのスタッフに担当してもらっています。レストラン事業のキャリア展開としては、まずはお客様と相対してサービスレベルの向上を、次にマーケティングを通して外の世界を知ってから、現場を統括するマネージャーになってほしいと考えています。
――今後の展望について、お聞かせください。
笠:自社の業界の最先端ではなく、自社の事業よりも進んでいる業界の最先端を追いかけていきたいですね。よくブライダル業界のデジタルシフトは遅れていると言いますが、レストラン業界はそれよりもさらに遅れています。業界の最先端ではなく、もっと先のテクノロジーを活用して事業に当てはめながら、マーケティングの基礎力を向上させていきたいです。
そしてもうひとつ、インバウンド向けの施策展開にも注力したいです。これはオリンピックに向けた国策でもありますし、弊社の施設は京都・大阪・六本木と海外旅行客にとってのゴールデンルートを抑えているので、今後力を入れていくべきところだと思います。また自社だけでなく一緒に盛り上げていけるような人や外部の企業さんとも一緒にお仕事していきたいですね。