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日米の最新メールマーケ手法を大紹介!うまいセグメント・メール専用CMS活用から動的コンテンツ生成まで

 自社に対する顧客からのエンゲージメントを確立する上でコミュニケーションの重要性は強調しても強調しきれない。コミュニケーションのチャネルは増えたものの、多くの企業がなおも最重視しているのはメールだ。本稿では2017年11月14日に都内で開催されたチーターデジタル主催「メールマーケティングアカデミー2017」の様子をレポート。顧客とのコミュニケーションを円滑にするメール戦略や、効率的なメールコミュニケーション運用のノウハウ、そして最新メール技術を紹介していこう。

メールの受け手の興味・関心に合わせるには?

 現在、ほとんどの企業が顧客とのコミュニケーション手段としてメールを活用している。特にBtoCの場合、誕生日などのタイミングでキャンペーンメールを送る企業は多いし、誕生日のようなパーソナライズメールではなくとも、セールや季節イベントの告知メールを一斉配信するケースもある。

左から、チーターデジタル株式会社 マーケティングアウトソーシング部 事業推進グループ ビジネスアーキテクト 吉澤和之氏、コンサルティング部 齋藤紀行氏
左から、チーターデジタル株式会社 マーケティングアウトソーシング部 事業推進グループ
ビジネスアーキテクト 吉澤和之氏、コンサルティング部 齋藤紀行氏

 こうしたメール施策の効果を最大化するにはどうすれば良いか。チーターデジタル コンサルティング部の齋藤紀行氏は、「顧客の興味・関心に合わせたコミュニケーションを取ることで、メール施策の効果を高めることができます」という。

 では、顧客の興味・関心を惹くにはどうすれば良いのか。それを考える上で重要なポイントが、メールを送る「相手」の像をしっかり描くことだ。齋藤氏は次のように説明する。

 「メールを送る時には、『目的・誰に・何を・いつ・どのチャネルで』の5項目を明確にし、その上で、どういう人が、どういうことに興味・関心を持っているかを洗い出すことが必要です。その際に必要となるのが、配信先である顧客を適切にセグメントすることです

セグメント分けはシンプルがベスト

 セグメントの切り口は、下記の図のように大きく5つある。なお齋藤氏は、セグメント分けに際し、「セグメント分けには、まとまった顧客件数が必要です。母数が100件など非常に少ない場合、効果はほとんど出ません」と注意を促している。 

セグメントの切り口と活用方法
セグメントの切り口と活用方法

 セグメントに分けてメールを送った方が、どの顧客にも一律に同じ内容のメールを送るよりも効果は高くなる。そうかといって、セグメントを細かく分け過ぎるのも考えものだ。なぜならセグメントのサイズが小さくなればなるほど、One to Oneに近くなるため、効果は高くなるものの、施策やメール配信数が膨大になるリスクがあるからだ。

 また、セグメントが重複するようなことがあると、同じ人にメールが複数届いてしまうことにもなり、オプトアウトにつながる可能性も出てくる。これを避けるには、セグメントの切り口が重複しないように注意しなくてはならない。一方、セグメント分けにこだわり過ぎ、分析に時間がかかって施策に落とせないケースもある。「まずは大枠で捉えた上で、シンプルなセグメントで施策を回すことが重要です」と齋藤氏は説明する。

 実際、齋藤氏が関わったあるアパレル会社では、お得な値引き情報のメール件名で一斉メールを配信していたが、男性ニーズに沿ったメールを配信したところ、開封率が1.4倍もしたという。単純な男女別というセグメントでメールを配信しただけでも、これだけの効果が出ているわけだ。

メールに反応しない層にもメッセージを届ける方法

 とはいえ、どんなに有益な情報を提供しても、「企業からのメールに反応しない」という顧客層は必ず存在する。こうした顧客層に対しては、「顧客とのコミュニケーションを実現する様々なチャネルの特性を理解し、メール以外のチャネルによるアプローチが効果的です」と齋藤氏は説明する。

 具体的にどういうチャネルがあるか。たとえば携帯電話のSMSなら、電話番号をもとにしているので、確実にメッセージを届けられる非常に重要なチャネルであり、重要性の高いメッセージを伝える手段として有効だ。一方、LINEは気軽に使うことができ、開封率も高いが、ユーザーとのつながりは薄いので、新規会員獲得やキャンペーンの告知に適している。

 アプリはいろいろな情報を送ることができるが、エンゲージメントが低くてアプリのインストールに至らないユーザーや、プッシュ通知をオフにするユーザーには伝わらない。ダイレクトメールはレスポンス率が高いがコストも高く、パーソナライズの自由度が低いので、優良顧客や重要施策に限ることが有効だ。同じように、電話のコールもOne to One対応ができるのできめ細かなコミュニケーションが可能だが、やはりコストが高い。

 齋藤氏が関わった案件では、お気に入り登録商品の値下げ通知メールを送った際、未開封のユーザーに対してLINEで通知するようにしたところ、購買者が増加したというアパレル会社の例や、メール不達のユーザーや会員登録未完了ユーザーにSMSで連絡を取ったところ、会員登録完了ユーザーが数%増えたなど、チャネルを変えてアプローチすることで、コミュニケーションが進んだ例は枚挙にいとまがないという。

 いずれにせよ、受け手の興味・関心を踏まえ、必要な情報を送信するための正しいチャネルの選択なくして「良いコミュニケーション」は実現しない。齋藤氏は以上のノウハウと実例を紹介した上で、「顧客の状態に応じて正しいメッセージを正しいチャネルで送ることで、正しいコミュニケーションが実現します」と締めくくった。

 では、こうした正しいメールコミュニケーションを実現するためのリソースはどこから捻出すればいいのだろうか。

メール業務のリソース不足を解消する唯一の方法

 正しいメールコミュニケーションを進めようとすると、ほとんどの企業で問題になるのは、「メール運用に関わるリソースをどう確保すれば良いか」という問題だ。

 メールに関わる業務を大きく分けると、(1)企画、(2)設計、(3)デザイン、(4)コーディング、(5)検証という5つのプロセスとなる。企画から設計をディレクターが、デザインからコーディングをデザイナーが担当し、最後の検証をディレクター中心に行うという流れが、一般的なメール業務プロセスだろう。

 チーターデジタル マーケティングアウトソーシング部 事業推進グループ ビジネスアーキテクトの吉澤和之氏は「メール施策の理想と現実にギャップが生じるのは、リソース不足が原因です」と言い切る。

 たとえばディレクターの場合、メール1本に付き、企画を考える時間が8時間、設計に5時間、検証に8時間を費やすとすると、合計して21時間の業務時間を費やすことになる。デザイナーの場合、デザインとコーディングで20時間程度かかることは普通だろう。当然、メール以外の業務も抱えているケースが多いため、1ヵ月の業務時間は190時間以上に上ると考えられる。

 吉澤氏は「この状況で『メールの本数を増やしたい』『有意義な企画を立てたい』『分析をしっかりしたい』などの目標を達成するためには、残業を減らして効率化するしかありません」と断言する。

 この課題に応えるのが、メール専用CMSの活用だ。

大手出版社やアパレル企業もメールCMSを導入

 実はチーターデジタルは、国内で初めてメール専用CMS「Lynx(リンクス)」をリリースした企業だ。Lynx自体、そもそも「リソース不足だけど、メール業務をしっかり進めたい」というニーズに応えるために開発された製品だという。

 メール専用CMSを使えば、メールのコンテンツ設計やコーディング、検証作業は大きく削減できる。CMSにはあらかじめメルマガ用のテンプレートが備わっている上、自社のメールテンプレートを保存しておけばメールの作成業務はほとんどゼロになるからだ。また配信前の表示確認やテスト送信などの機能も標準装備されている。

 吉澤氏の試算によると、こうしたメール専用CMSの活用により、ディレクターとデザイナー合わせて27時間分の業務時間削減が可能だという。時給を3000円と仮定すれば、「1ヵ月でコストは8万1000円下がり、同リソースで記事を1〜2本追加したり、分析や議論に丸3日割り当てたりすることができます」と吉澤氏は語る。

 実際、「週刊プレイボーイ」を発行する集英社では、同誌のメルマガ作成にCMSを利用したところ、HTMLの知識がない担当者でも30分程度でHTMLメールを制作できるようになり、月4回の配信を実現した。今後は、購買履歴などと組み合わせてメールの配信回数を変え、反応を見るなど新たな施策にも挑戦する方針だという。

 また、アパレル大手の株式会社ユナイテッドアローズでもCMSを活用し、各ストアブランドで共通テンプレートを使ったメールを送る一方、デジタルコミュニケーションチームがメール作成のレギュレーションを整備し、各ストアブランド担当者にHTMLメールの作成を委託したことで、管理工数を大幅に削減しながら、きめ細かいコミュニケーションを可能にし、コンバージョンも1.5倍向上したという。

 チーターデジタルが提供するLynxは、メール運用の効率化を求める企業のニーズにはまり、100社に迫る勢いでユーザー数を増やしている。メールの目的定義やコミュニケーション設計がおろそかになりながら、時間を捻出して配信を続けるより、一度足元を見直してメール業務の効率化を図ることも、顧客とのコミュニケーションを改善する1歩につながるのだ。

メールのクリエイティブをおろそかにするな

 ここまで「コミュニケーションの設計法」と「メール業務の効率化」の2つの視点で、顧客との正しいメールコミュニケーションの進め方を見てきたが、コミュニケーションをより良くするには、もう1つ大切な要素がある。それが表現力だ。

 吉澤氏は、「メールコミュニケーションというと、マーケティングオートメーション(MA)を使い、ユーザーの行動ログを時間軸でつむいでコミュニケーションプロセスを設計していくのが最近の流れですが、もう1つ忘れてならないことがあります。実は、メールクリエイティブが受け手に与える『感情』は非常にインパクトがあるのです」と説明する。

 クリエイティブがフックとなって湧き上がるユーザーの感情に関し、いま米国で注目されているのが「Surprise + Delight」というキーワードだ。

 MAがつむぐストーリーが、ユーザーのエンゲージメントを徐々に高めていく効果があるのに対し、クリエイティブは、ユーザーがメールを受け取った「瞬間」に走る「感情」を左右する。メールはユーザーのメールボックスの中でどんどん流れていくものだが、吉澤氏によると、このクリエイティブによって「もう1回メールを見ようか」という効果が生まれるそうだ。そして日本と欧米のメールでは、このクリエイティブに大きな差があるという。

 「Surprise + Delight」は、メールを見た瞬間の驚き、そして喜びを意味する。米国の事例では、「Surprise + Delight」を実現する方法論として3つあるという。

メールを見た「瞬間」にインパクトを与える3つの手法

 第1に、視認性を上げるデザインテクニックを使えばすぐ実現できる「ジェネラル」な手法だ。

 たとえば最初にロゴで注目を集め、下にある画像で注目を抱かせ、最後に行動に結びつける「購入」ボタンなどを配置した、Inverted Pyramid Methodと呼ばれるピラミッド型のデザインがある。一方、何も語らず「Go」ボタンだけを配置するという「Less is more」(より少ないことは、より豊かなこと)という手法も、「Surprise + Delight」を促す表現方法だ。

 Inverted Pyramid Method
Inverted Pyramid Method

 もう少し動きがある表現でいえば、テキストをGIFアニメで動かしたり、特定部分だけにGIFアニメを挿入した「シネマグラフ」という表現もあり、これだけで十分、感情に訴えるメールを作成できる。

 第2の方法として有効なのが「インタラクティブ」だ。いまCSS 3.0では、Webバナーの動きをタブやアコーディオン、スライダーなど様々に表現することができるようになっているが、同じことをメールでも実現できるようにするのがCSS 3.0の考え方だ。

 もちろん、CSS 3.0については今後のWebブラウザの対応が待たれるので今後の話になるが、こうした新しい技術を使ってインタラクティブな表現をメールに盛り込み、ユーザーのエンゲージメントを高めるのも有効な手段だ。

 なお吉澤氏は、「あまりにインタラクティブな表現が過剰だと、かえってユーザーの気が散るリスクもあるし、また新しい技術は『将来どうなるかわからない』というリスクも含んでいるため、十分気を付けて活用しなくてはなりません」と忠告する。

 第3の表現方法として注目されているのが「ダイナミック(動的)」だ。具体的には、メールコンテンツに、ユーザーの名前や性別、今日の天気や開封したデバイスの種類など様々な変数を組み込むことで、その人に応じたOne to Oneのコミュニケーションを行うメール手法だ。「これまでテキストと画像でしか表現できなかったメールが、多様な表現力を得たことで、多くのユーザーに衝撃と喜びを与えることになります」と吉澤氏はいう。

 たとえば、セール情報の告知メールの場合、通常なら「何月何日何時まで!」と強調して表現するところ、米国のあるECサイトではダイナミックメールでカウントダウンタイマーを付けることで焦燥感をあおり、行動を促すことができた。また、指でメールをなぞることで、裏にある画像を表示するスクラッチ処理を施すことで、「当たり」「外れ」のメールを送るなどの施策も可能だという。

 ダイナミックメールのこうした活用例は、米国では枚挙にいとまがないそうだ。そして、このダイナミックメールを実現するツールとして注目されているのが、インテリジェントコンテンツ・プラットフォームである「Movable lnk(ムーバブル インク)」だ。

 「Movable lnk」はコンテンツ、ビジネスロジック、あらゆるデータを組み合わせることで、ユーザーがメールを開封した瞬間に、どのような感情を引き出すべきかにフォーカスしてクリエイティブをデザインし、コンテンツ制作~実行~効果測定を自動で実行するという。

 チーターデジタルは11月よりMovable lnkと販売代理店契約を結び、日本航空(JAL)のメールプラットフォームにMovable lnkを導入した。「たとえばメールにダイナミックに名前を差し込んだり、朝・昼・夜で表示する画像や内容を変えたりといった工夫をすることで、より親近感が増し、ユーザーのエンゲージメントが高まるという効果が期待できます」と吉澤氏は説明する。

 最後に吉澤氏は、「『メールはもう古い』『ユーザーに見られなくなった』といわれますが、実はそんなことありません。実はメールは重要なチャネルだからこそ、日々進化しているのです。どうせメールを送るのであれば、つまらないものではなく、おもしろいものを送りましょう。クリエイティブで差を付けることで、よりユーザーとのエンゲージメントを強化するメールを送ることができます」と語り、講演を締めくくった。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/01/26 10:00 https://markezine.jp/article/detail/27523