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なぜUXは「広告以前」に大切?SBI証券がグッドパッチと挑む経営ゴトとしてのデザイン


他チームのメンバーと協働して、経営層の心を動かす成果物を作る

土屋:今まで、カスタマージャーニーマップを社内で作ったことはあったんですか?

阿部:2年前に入社したときに、当時は一人だったので自分で作って上長に見せたんですけど、うまく伝わらなかったので「なかったことにしよう」と(笑)

 それからは、グッドパッチさんのようなパートナーをずっと待っていたように感じます。今回作ったカスタマージャーニーを取締役に見せると結構反応が良くて。経営を巻き込んだアウトプットができたと思っています。

土屋:今回のジャーニーマップは、他のメンバーも関わって作られたんですよね。

阿部:はい。社内の口座開設チームや、開発ベンダーさんに入ってもらい共同作業することができました。

ユーザーインタビューでUIは180度変わった

土屋:結局、デザインスプリントは4周やって、デザインをブラッシュアップしていきました。元のデザインは「ネット証券会社としての総合力」推しだったんですよね。そして、他業界でもよくうたわれているように「口座開設数No.1」「売買代金シェアNo.1」「手数料No.1」などと数々の「No.1」を強調していました。「No.1」を強調されていたのはどういった経緯だったんでしょうか。

阿部:「No.1」がユーザーに響くだろうと単純に考えていたんです。でも、実際にスプリント回す前にユーザーに聞いてみたら、全然響いてなかった。◯◯がNo.1と言われても、自称かもしれないし、結局、自分にとって良くなければ意味がないと。

土屋:ターゲットに近いユーザーに実際にインタビューをした結果、「総合力」と「NO.1」はまったく刺さらないという事実がわかったんです。じゃあどういう方向性なら刺さって口座を開くのかを、スプリントを元に検証していきました。次のフェーズではまだ、証券会社を選ぶ基準として「総合力」は残していましたね。

阿部:そうですね。あとは、男性がスマホを見て、それを女性がのぞきこんでいる写真も候補にあったんですが、インタビューで「のぞきこまれてるのが不快」「そもそも投資って、一人でやるんじゃないの」と指摘されまして、ボツにしたこともありましたね。

土屋:結局、最終的なデザインでは、「学びながらはじめよう」という構成にして、情報もめちゃくちゃ削りました。結果として口座開設率がかなり上がりましたね。

阿部:そうですね。2%も上がりました。

土屋:最終コンバージョンである口座開設に至るまでの間では、この口座開設フォーム突破が最も重要なんですが、これが元のデザインよりも2%アップしたと。だから、ユーザーテストから立てた「総合力とNO.1は刺さらない」という仮説が実証されたと考えました。

AARRRモデル、KPIツリー、カスタマージャーニーマップをやりきる

江川:たしかな手応えがあったために、その後はUX改善に対してさらに根本的に取り組むようになったとお聞きしました。

阿部:グッドパッチさんに支援してもらい、3つのフレームワークで改善に取り組んでいます。

 1つ目のAARRR(アー)モデルでは、収益のボトルネックがどこにあるのかを大まかな軸で考え、仮に「初回稼働のところが改善の余地がある」などとわかれば、具体的な改善企画を立てて進めます。

 次にKPIツリーで見たときに、改善ポイントがどこのKPI要素に貢献するのかを構造的に明らかにして、最後のジャーニーマップでは「この改善は、ユーザー行動におけるどのタッチポイントに関わる施策で、全体の流れを良くするのか」と確認する。

 この3つをセットで進めることで、経営陣への説明時にもこれだけ収益が上がると意識を持ってもらいやすくなりました。今はこれを、下部組織に根付かせる活動もしています。

土屋:どれも、ある意味では当たり前なプロセスなのですが、フレームワークとしては知っていても実際にはやらない企業が多いんですよね。でもこれをやらないと、経営陣への説明が「デザイン変えたいんですけど」みたいな曖昧な感じになり、「それで本当に売上上がるの?」と言われてしまう。

 そうではなくて「売上はこういった要素に分解されて、その中のこの要素を改善するには、この部分のデザインを改善しなければならない。今回はその企画です」と言うべきなんです。

江川:ありがとうございます。では最後に阿部さんから、これからUX改善に取り組むマーケターの方へメッセージをお願いします。

阿部:マーケターは、顧客とのタッチポイントになりうるところすべてをケアすべきで、その根幹になるのがUXという考え方だと思っています。たとえば、我々が今回作成したカスタマージャーニーマップは、認知がない潜在層の方にコンタクトするところから始まっています。つまり、広告もUXの一部と考えるべきです。広告を含めたすべてのタッチポイントに対して、これらのフレームワークを用いて改善していければと思っています。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/02/15 13:37 https://markezine.jp/article/detail/27563

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