創業20年、再度「投資フェーズ」へ突入
クックパッドは、動画事業の本格参入に伴い、今後10年の成長戦略をラウンドテーブルにて発表した。ラウンドテーブルには、同社 CEOの岩田林平氏と、マーケティングプロダクト開発部 部長 兼 料理動画事業部 部長の今田敦士氏が登壇した。
会見で岩田氏が繰り返したのが「圧倒的ナンバーワン」という言葉。1997年の創業時より築いてきた事業基盤とユーザー規模、ブランドを活かし、レシピ検索サービスだけでなく、料理動画事業においても圧倒的ナンバーワンを目指すという。ラウンドテーブルの冒頭で岩田氏は、同社のこれまでを振り返り、今後の戦略の大枠を説明した。
クックパッドは長期的な戦略により、料理に関するCtoCプラットフォームを築き「料理の作り手を増やす」ことに集中してきた。2016年12月時点での国内の月間利用者数は、約6,000万人(同社調べ)。2014年には海外展開もスタートし、2016年12月末時点で58ヵ国15言語にサービスを展開している。
創業より10年間は“事業の基盤創り”に、その後の10年間は“事業化”に注力してきた同社だが、これからの10年は改めて“投資フェーズ”に突入するという。その投資先が“動画領域”だ。
クックパッドと料理動画の違いは「ユーザーニーズ」
kurashiru(以下、クラシル)とDELISH KITCHEN(以下、デリッシュキッチン)がテレビCMの放送を開始したのが今年3月。これ以降、料理動画のSNS配信は一般化し、これまでレシピを自ら検索していなかった人もレシピに触れる機会が多くなった。ヴァリューズによる調査では、クックパッドのユーザー数は若干の減少傾向にあることが判明している(参考リリース)。
しかし同社は、レシピ検索サービスは料理動画の影響を受けていないと主張する。その根拠として、クックパッド内のレシピ検索数が、昨年比で減少していないことを示した。レシピ動画の流行が、レシピの検索数には影響していないというのは、一体どういうことなのだろうか?
料理動画とレシピ検索を比較する際に、同社が注目しているのは「ユーザーニーズ」だ。クックパッドが静止画とテキストで提供しているレシピ「クックパッド」は、そもそも“今日何作ろう”という料理の作り手の課題を解決するためのサービスだ。よってユーザーは、冷蔵庫の中身や季節、スーパーの特売などの条件に合わせて、“能動的”にレシピを検索する。
実際、同社がFacebook上で配信している料理動画「cookpadTV_Facebook」と通常のテキストベースの「クックパッド」の時間帯別アクセス推移を示した下記のグラフからも、買い物前後の「クックパッド」利用率が突出していることがわかる。このことから、“今日何作ろう”という課題を解決するサービスとして、「クックパッド」へのニーズに変化はなく、現状このニーズを解決できる代替のサービスは存在しないと岩田氏は説明した。
さらに上記のグラフを見ると、早朝~出勤・昼休み・就寝前のそれぞれの時間帯で、「cookpadTV_Facebook」の利用率が高くなっていることもわかる。そこで同社は、スマートフォンで利用するサービスのカテゴリーを時間帯別で調査。その結果、買い物前後以外の時間帯(早朝~出勤・昼休み・就寝前)では、メッセージサービスやニュース、SNSなど“受動的”に流れてくるコンテンツや、エンターテインメント性が高いものが好まれることが判明した。
これらの結果を踏まえて岩田氏は「料理動画は我々がこれまで表現できなかった美味しさであったり、簡単さを伝えることができます。また、“これだったら私も作れる”というように、新しいエントリー層にも訴求することも可能です。しかしあくまで料理動画は“受動的”なコンテンツ。『クックパッド』というサービスに上乗せするイメージで、動画は新たなインスピレーションとして活用できるものだと我々は理解しています。
また料理動画でなら、普段レシピを検索しないユーザー層とも出会える可能性があります。料理へのエントリー層が増えることで、料理の作り手も増える。これを狙いとして、動画事業へ本格参入します」と話した。