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オンライン動画広告の最前線

「レスポンス広告」から「ブランディング広告」へ  従来のデジタル指標だけでは広告効果は測れない

パーチェスファネルを活用しよう

 ブランディング動画広告を実施する際は、「広告接触を通して、誰に対して、どのような態度変容(ブランドリフト)を期待するか」、その目的を明確にすることが大切である。その際、ユーザーの購買に至るまでの心理段階を漏斗(ろうと)になぞって構造化した「パーチェスファネル(図1)」は、ターゲット別に段階的に目的とKPIを設定する上で有効なツールである。

 ブランディングの第1歩は、まずはブランドや商品の存在を知ってもらうこと。つまり、ブランド認知を獲得するところから始まる。知ることで興味関心を持ち、理解を深め、好きか嫌いか別れる。好きになったユーザーはさらにファネルを下に進み、比較検討を経て購買行動を取る。ダイレクトレスポンス型広告の効果がいまいち見えない場合は、ファネルの上から課題がないか振り返ってみよう。多くの場合はブランドや商品名すら知られていない、“認知度”に大きな課題がある。

図1.広告目的とKPI設定
図1.広告目的とKPI設定

広告の目的を整理するためのリスト

  • 認知:商品・サービスの存在を知ってもらう(非認知層→潜在顧客層)
  • 興味関心:商品・サービスに対する理解・共感を深める(潜在顧客層→顕在顧客層)
  • 比較検討:商品やサービス価値を訴求して購入検討につなげる(顕在顧客層→見込顧客層)
  • コンバージョン(CV):購入や問い合わせなどの具体的なアクション促進

従来のデジタル指標とブランディング指標を組み合わせる

 では、ブランド広告効果を測る指標(KPI)にはどんなものがあるのか。視聴回数や視聴時間、クリック率といったデジタル指標の他、直接ユーザーにアンケートを実施し、その回答に基づいて、認知度や好意度を数値化するブランディング指標が有効である。

「認知」が目的

 認知を目指す場合、漠然としたニーズやウォンツを持った幅広い「潜在層」に、広告がどれだけ届き、商品・サービスの存在を認知してもらえたのかを把握したい。よって、インプレッション、視聴回数と合わせて、ブランド認知、広告想起のブランドリフトをKPIとして設定できる。

「興味関心」が目的

 興味関心を惹き起こしたいときは、購買意欲はあるがまだ決め切れていない「顕在層」に対して広告がどの程度興味を喚起しているのかを把握したい。よって、視聴完了数(率)、視聴時間の長さと合わせて、メッセージ想起やブランド好意のリフトアップをKPIとして設定できる。

「比較検討」から「コンバージョン」までが目的

 この場合は、購買意欲の高い「見込層」に対して、広告が検索やブランドサイトへの誘導など、何かしらの行動を取る一押しとなったかどうかを知りたい。よって、クリック数(率)、サイト訪問数、問い合わせ件数と合わせて、行動変容や購入意向のリフトアップをKPIとして設定できる。

 このように、広告目的ごとに適したデジタル指標をさらにブランディング指標で裏付けできれば、より確かな効果計測結果に基づき、次の施策に向けた良い意思決定が可能となる。

視聴“率”から視聴“質”へ

 デジタル指標のみでなく、ブランディング指標も合わせて確認するメリットは、もう1つある。従来のクリック数、コンバージョンなどのみなし指標がテレビCMでいう視聴“率”だとすると、ブランディング指標は、その先にある視聴“質”を検証する材料となる。

 スマートデバイスやソーシャルメディアの普及に伴い、ユーザーのコンテンツ消費スタイルが大きく変わる中、広告を含む様々なコンテンツの中から、ユーザーが何を、いつ、どこで視聴するか、自分の好みに合わせて取捨選択できるようになり、興味ないものはスクロール・スキップして飛ばすし、動画を見始めたとしても、視聴“質”は人それぞれだ。

 本当に興味を持って視聴している人もいれば、居間のテレビや外出先で他に注意力をとられ、画面から目を離してしたまま再生する人もいる。このような状況下では、視聴“率”を計測する従来のデジタル指標だけでは、ブランド広告主が本当に知りたいユーザーの反応と広告効果を反映し切れなくなってきている。

 マーケターは、データの数字の背後には人間がいることを忘れてはならない。人間は、クリック数、視聴完了率といった指標よりも複雑にできている。

 よって、デジタル技術が進化し、広告表示回数、動画視聴数、視聴時間など動画広告のパフォーマンスを細部まで計測できるようになっても、動画広告がうまくいっているかどうかを知るための一番いいやり方は、やはり、ブランド認知・ブランド好意度・広告想起率といったユーザーの態度変容を観測することではないだろうか。

ブランドリフト調査

 ここまで、ブランディング広告を評価するためのベストな方法は、デジタル指標と合わせて、広告配信前後のユーザーのブランド認知、広告想起などブランディング指標を計測することだと述べてきた。

 それを可能にするのが、ユーザーアンケートに基づく"ブランドリフト“という調査手法だ。

 ブランドリフト調査は、ブランディング広告に接触したユーザー(接触者)と接触していないユーザー(非接触者)を比較し、接触者における、企業・ブランド・商品の認知、好意、購買意欲などが向上(リフトアップ)したかどうかを計測する手法である。

 従来の調査会社のパネル調査との違いは、実際の動画広告視聴者にアンケート配信されるため、よりリアルな消費者のフィードバックが得られる点。そして、リアルタイム集計のため、圧倒的なアウトプットスピードでタイムリーにキャンペーンのPDCAが回せる点でメリットがある。

 なお、広告接触者に対して、非接触者は(接触者と同じ)キャンペーンターゲットセグメントに含まれる一部のユーザーであり、比較対象群として設定され、キャンペーン広告主の動画広告ではないダミー広告が配信される仕組みになっている。

ブランドリフト調査で得られるブランディング指標を整理しよう

  • 広告想起:どのくらいのユーザーが広告を覚えていたか
  • ブランド認知:広告によってどの程度ブランドの認知度が高まったか
  • ブランド好意:広告によってどの程度ブランドの好意度が高まったか
  • メッセージ想起:ブランドと広告のメッセージを連想できるか(「お、ねだん以上。」ニトリ、「カラダにピース」CALPISなど)
  • 購入意向:広告によってどの程度購買意欲が高まったか
  • 動画視聴後行動:誰に話す、ブランドWebサイト訪問、ブランドについて検索するなど
図2.ブランドリフト計測_アウトプットイメージ
図2.ブランドリフト計測_アウトプットイメージ
参考資料.ブランドリフト調査の質問票(一部抜粋。リードバナー形式)GlassView Japan提供
参考資料.ブランドリフト調査の質問票(一部抜粋。リードバナー形式)GlassView Japan提供

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評価されるブランディング動画広告を行うために

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この記事の著者

岩本 香織 [GlassView Japan](イワモト カオリ)

GlassView Japan合同会社COO。ニューヨークに拠点を置きグローバルでブランディング動画広告配信ソリューションを提供するGlassViewに、2015年における日本支社立ち上げメンバーとして参画。2016年より副代表に就任し、デジダル動画マーケティングで課題を抱える広告主・マーケティング担当者の支援をミ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/03/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/27613

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