YCD活用には、高精度なPDCAが不可欠
デジタルガレージのWeb広告代理事業において広告運用を行うアドオペレーション部では、多くの代理店が採用している媒体専任チームではなく、媒体を横断した広告手法ごとにチームを分けている。
YCDの運用は、SNS媒体やニュース媒体を中心に運用を行っているインフィード広告チームが担当。さらに、インフィード広告チームとコンテンツ制作チーム、クリエイティブチームという3つのチームが連携し、1つの案件に対してそれぞれのチームがノウハウを共有し合い、改善策を検討していくのだという。
「YCDを展開していて何か課題があるとき、まずはそれぞれのチームで改善策を探ります。たとえば、コンテンツ制作チームは読了率を上げるために訴求軸の再考を、インフィード広告チームはCTR・CVRが高い他社事例の分析結果を基に運用面での改善を図ります。またクリエイティブチームは、業種に特化したノウハウを蓄積しているので、その知見を基に新たなクリエイティブを提案します。最終的に各チームの専門性を掛け合わせることで、効率的かつ高精度での運用が可能になるのです」(岩松氏)
媒体ごとに特性が異なるため、媒体専任チームで運用をしていると、媒体を超えたノウハウのスピーディーな横展開は難しい。しかし複数媒体を横断できるチームであれば、あらゆる媒体での実績を事例として活用することができる。実際にSNS広告で反応が高かったキーワードを別の広告のクリエイティブに採用することにより、好結果が出ることも少なくない。チーム間や部署間での連携を重視したデジタルガレージ独自の体制により、媒体を最大限活用した高いパフォーマンスを出すことができている。
「YCDは、そのボリュームゆえ、他媒体よりも効果が持続する傾向にあります。そのため1種類のコンテンツで成果が出ると、次の手を打たないというケースも見受けられます。
ですがYCDはレコメンドエンジンで自動的に広告を配信するので、効果を出し続けるためにはPDCAを回すことが必要不可欠です。成果が出ないのであれば、コンテンツの内容や切り口を考え直して、配信ターゲットを変更する必要があります。効果が出ていても、コンテンツ制作はある程度時間がかかるため、次の一手を準備しておく必要があるのです。クライアントには、新しいユーザーの獲得やリーチを広げるために、コンテンツ運用はマストであると伝えています」(岩松氏)
このようなデジタルガレージの運用体制には「PDCAの回し方が的確で、効果が維持されている」と武田氏の評価も高い。
コンテンツの切り口で成果が激変したプロジェクト事例
では実際に、デジタルガレージではYCDをどのように展開しているのだろうか。岩松氏は、広告配信からコンバージョンまでのフェーズを3つに分けてYCD活用のポイントを説明した。
具体的には、第1フェーズで広告のCTRとCVRに、第2フェーズで記事(コンテンツ)の読了率と記事からLPへの遷移率に、最後にLPのCVRに注目するという。
たとえば、CPAが目標に達しないのであれば、自動でレコメンドされるYCDの場合、記事が適切なターゲットに配信されていない可能性がある。よって広告のクリエイティブを変えて自動配信先を変更することで改善を図ることができる。一方で、記事の読了率が悪いのであれば、コンテンツそのものを改善しなければならないだろう。
以上を踏まえた上で、ある企業のサプリメントの広告事例を基に、具体的な活用法を説明する。
デジタルガレージでは、「腸内環境の改善」に効果のあるサプリメントのマーケティング施策をYCDで展開していた。施策を開始した当初は、腸内環境への良い効果がイメージできる「お腹スッキリ」や「菌が働く」など、定番の訴求を行っていたが、思うように結果が出なかったという。
そこで新たな切り口として同社が提案したのが「口臭対策」を切り口にしたコンテンツだった。なぜ同社は、「腸内環境」からかけ離れた「口臭対策」へコンテンツのコンセプトをガラリと変える提案を行ったのか?
「初動の数値状況から、抜本的にコンテンツの訴求軸を変更する必要があると判断したため、即座に運用・コンテンツ・クリエイティブの3チームで、各自のノウハウを基に改善方法を話し合いました。その際に、運用チームから他媒体で『口臭ケアサプリ』の案件の出稿が大幅に伸びているとの報告がありました。
そこで口臭に対して関心の強いユーザーが多く存在しており、かつ広告からアクションを起こしやすいユーザーが多いのではないかという仮説を立て、商品を調査したところ、胃腸と口臭には関連性があり、該当の商品にはそれらを良くする成分が含まれていることが判明しました。そこで『口臭』にコンセプトを変えてコンテンツを作成しました。
腸内環境を整えるという、元々の商品の訴求テーマとは離れてしまいましたが、結果的にCPAは当初の2分の1まで改善し、予算は5倍に増加しました(※)」(岩松氏)
また該当の商品は、当初から認知度が高いものであった。この事例は、認知度の高い商品であっても、コンテンツの切り口を変えることで、新たなセグメントの顧客を獲得できることを示す好例である。
(※)YCD出稿後にコンテンツ内容を変更した場合は、再度入稿審査が必要です。