YCDは、コンテンツを「読んでもらう」ことに適した広告枠
「Yahoo!コンテンツディスカバリー(以下、YCD)」は、Yahoo!ニュースと、そのメディアパートナーへ配信されるコンテンツレコメンドソリューションである。掲載位置は、記事の直下にある「おすすめコンテンツ」のレコメンドモジュール。自然な流れでコンテンツを読んでもらうことに適した広告枠として、企業が発信するオウンドメディアの記事や動画のほか、他メディアとのタイアップ記事へも配信されている。
今回は、YCD活用におけるコンテンツマーケティングの可能性について、ヤフー株式会社 コンテンツマーケティング事業本部の武田祐太朗氏と、株式会社デジタルガレージ マーケティングテクノロジーカンパニー アドソリューション本部 アドオペレーション部のグループリーダーである岩松泰平氏に話を伺った。
「読ませる」を可能にするYCDの3つの特徴
初めに、YCDのサービス概要として、次の3つの特徴を説明する。
1つ目に大きな特徴として挙げられるのが「掲載位置」。YCDでは、モジュールが記事のすぐ下に掲載されるため、コンテンツに対して消費意欲の高いユーザーが接することになる。つまり、ユーザー体験と広告との接触に齟齬が起きにくいのだ。コンテンツはしっかりと読まれるため、サービスへの理解や態度変容が生まれやすく、ユーザーと広告の親和性も高くなるのだという。
2つ目は「リーチの量」。月間約280億インプレッションを誇るYahoo!ニュースに支えられているため、YCDでは膨大なリーチ量を獲得することができる。最後3つ目の特徴は、YCDを支えるTaboola社のレコメンドエンジンにある。YCDならではのレコメンド技術について、武田氏は以下のように話した。
「Taboola社のレコメンド技術によって、閲覧するユーザーと該当ページとの関連性やデバイス、視聴タイミング、行動履歴など、100以上の要素を組み合わせてモジュール内にリンクを表示できます。またこのレコメンドエンジンは、機械学習を重ねますので、時間が経過するほど最適なユーザーに最適なタイミングで配信されやすくなります」(武田氏)
ターゲティングなどのプロモーション手法を続けていると、顕在層にリーチしつくしてしまうこともある。そのような場合は新たなターゲットにアプローチする必要が出てくるが、YCDはコンテンツの内容や切り口によって潜在層にもリーチすることができるため、新しいユーザーとの接点を創出することができる。そしてこのように持続的な広告効果を期待できる掲載枠だからこそ、鍵となるのが「コンテンツの運用」である。
YCD活用には、高精度なPDCAが不可欠
デジタルガレージのWeb広告代理事業において広告運用を行うアドオペレーション部では、多くの代理店が採用している媒体専任チームではなく、媒体を横断した広告手法ごとにチームを分けている。
YCDの運用は、SNS媒体やニュース媒体を中心に運用を行っているインフィード広告チームが担当。さらに、インフィード広告チームとコンテンツ制作チーム、クリエイティブチームという3つのチームが連携し、1つの案件に対してそれぞれのチームがノウハウを共有し合い、改善策を検討していくのだという。
「YCDを展開していて何か課題があるとき、まずはそれぞれのチームで改善策を探ります。たとえば、コンテンツ制作チームは読了率を上げるために訴求軸の再考を、インフィード広告チームはCTR・CVRが高い他社事例の分析結果を基に運用面での改善を図ります。またクリエイティブチームは、業種に特化したノウハウを蓄積しているので、その知見を基に新たなクリエイティブを提案します。最終的に各チームの専門性を掛け合わせることで、効率的かつ高精度での運用が可能になるのです」(岩松氏)
媒体ごとに特性が異なるため、媒体専任チームで運用をしていると、媒体を超えたノウハウのスピーディーな横展開は難しい。しかし複数媒体を横断できるチームであれば、あらゆる媒体での実績を事例として活用することができる。実際にSNS広告で反応が高かったキーワードを別の広告のクリエイティブに採用することにより、好結果が出ることも少なくない。チーム間や部署間での連携を重視したデジタルガレージ独自の体制により、媒体を最大限活用した高いパフォーマンスを出すことができている。
「YCDは、そのボリュームゆえ、他媒体よりも効果が持続する傾向にあります。そのため1種類のコンテンツで成果が出ると、次の手を打たないというケースも見受けられます。
ですがYCDはレコメンドエンジンで自動的に広告を配信するので、効果を出し続けるためにはPDCAを回すことが必要不可欠です。成果が出ないのであれば、コンテンツの内容や切り口を考え直して、配信ターゲットを変更する必要があります。効果が出ていても、コンテンツ制作はある程度時間がかかるため、次の一手を準備しておく必要があるのです。クライアントには、新しいユーザーの獲得やリーチを広げるために、コンテンツ運用はマストであると伝えています」(岩松氏)
このようなデジタルガレージの運用体制には「PDCAの回し方が的確で、効果が維持されている」と武田氏の評価も高い。
コンテンツの切り口で成果が激変したプロジェクト事例
では実際に、デジタルガレージではYCDをどのように展開しているのだろうか。岩松氏は、広告配信からコンバージョンまでのフェーズを3つに分けてYCD活用のポイントを説明した。
具体的には、第1フェーズで広告のCTRとCVRに、第2フェーズで記事(コンテンツ)の読了率と記事からLPへの遷移率に、最後にLPのCVRに注目するという。
たとえば、CPAが目標に達しないのであれば、自動でレコメンドされるYCDの場合、記事が適切なターゲットに配信されていない可能性がある。よって広告のクリエイティブを変えて自動配信先を変更することで改善を図ることができる。一方で、記事の読了率が悪いのであれば、コンテンツそのものを改善しなければならないだろう。
以上を踏まえた上で、ある企業のサプリメントの広告事例を基に、具体的な活用法を説明する。
デジタルガレージでは、「腸内環境の改善」に効果のあるサプリメントのマーケティング施策をYCDで展開していた。施策を開始した当初は、腸内環境への良い効果がイメージできる「お腹スッキリ」や「菌が働く」など、定番の訴求を行っていたが、思うように結果が出なかったという。
そこで新たな切り口として同社が提案したのが「口臭対策」を切り口にしたコンテンツだった。なぜ同社は、「腸内環境」からかけ離れた「口臭対策」へコンテンツのコンセプトをガラリと変える提案を行ったのか?
「初動の数値状況から、抜本的にコンテンツの訴求軸を変更する必要があると判断したため、即座に運用・コンテンツ・クリエイティブの3チームで、各自のノウハウを基に改善方法を話し合いました。その際に、運用チームから他媒体で『口臭ケアサプリ』の案件の出稿が大幅に伸びているとの報告がありました。
そこで口臭に対して関心の強いユーザーが多く存在しており、かつ広告からアクションを起こしやすいユーザーが多いのではないかという仮説を立て、商品を調査したところ、胃腸と口臭には関連性があり、該当の商品にはそれらを良くする成分が含まれていることが判明しました。そこで『口臭』にコンセプトを変えてコンテンツを作成しました。
腸内環境を整えるという、元々の商品の訴求テーマとは離れてしまいましたが、結果的にCPAは当初の2分の1まで改善し、予算は5倍に増加しました(※)」(岩松氏)
また該当の商品は、当初から認知度が高いものであった。この事例は、認知度の高い商品であっても、コンテンツの切り口を変えることで、新たなセグメントの顧客を獲得できることを示す好例である。
(※)YCD出稿後にコンテンツ内容を変更した場合は、再度入稿審査が必要です。
CTRを5倍に改善!成果を出すには「柔軟な組織体制」が必要
もう1つ、PDCAを回すスピードと運用体制の柔軟さが活きた事例を紹介する。広告主によっては、社内審査などの要因でPDCAを回せるだけのコンテンツを作成するのが難しい場合もあるだろう。これから紹介する事例元のクライアントも同じく、複数のコンテンツを作成できない環境にあった。
そこでデジタルガレージは、自社で裁量権のある広告テキスト(コンテンツのタイトル)にフォーカス。月に50本のテキストを制作・運用し、PDCAを繰り返したのだ。
「PDCAを回し、圧倒的に効果の高いテキストを導き出しました。ひとたび最適なターゲットへ配信が行われると、レコメンドエンジンの自動最適化が働き、一気に軌道に乗りました。みるみるうちに獲得件数が伸びましたね。CTRは0.01%から0.05%と5倍になり、当初29,000円だったCPAは、目標値の8,000円まで改善しました」(岩松氏)
クライアントの体制に応じて、柔軟な提案や運用ができる点は、デジタルガレージの大きな強みだ。またYCDだけでなく、Yahoo! JAPAN全体の広告・サービスを総合的に理解し、実績を上げていることから、デジタルガレージは「Yahoo!マーケティングソリューション ゴールドパートナー」と「コンテンツマーケティングパートナー」に認定されている。岩松氏は「ヤフー様と密な連携ができているからこそ、スピーディーかつ柔軟な対応ができ、運用成果の向上につながっています」とヤフーとの強い協力体制を説明した。
ブランディング施策にも。YCD活用の広がりに期待
最後にこれからの展望について伺うと、岩松氏、武田氏ともに「クライアントソースを広げたい」と語った。ブランディング施策にもYCDを提案していきたいという。
「現状はダイレクトレスポンス系の広告主に活用していただくケースも多いのですが、やはりYCDの強みはコンテンツを読んでもらえることにあります。知らなかった商品を知っていただくという、認知やブランディング施策にも、大きな可能性があるのです」(岩松氏)
ブランディング施策の場合、KPIの設定が懸念されるが、Yahoo! JAPANでの指名キーワードの検索数の増減から認知拡大への貢献度を計れると岩松氏は話す。また武田氏は、メディアとしての観点から「ユーザーのニーズに対応できるよう、出稿コンテンツの業種バランスを取りたい」と語る。
「認知や比較検討層といったファネルの中・上層部にアプローチしたいクライアントにもぜひYCDを活用いただきたいです。ユーザーのナーチャリングをコンテンツで行うことに積極的に取り組んでいきたいですね」(武田氏)
企業のコンテンツマーケティングにおける効果を倍増させるソリューションとして、今後も期待されるYCD。その活用方法や業種の広がりにも注目したい。