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MA・SFAはBtoBマーケの「部品」にすぎない。日本のマーケと営業が「気合」を卒業するために必要なこと

CMOは営業職のキャリアパス?BtoB企業のマーケ部門が「マーケティング」を強化するために


デマンドセンターの作り方

 デマンドセンターの担うビジネスプロセスは、マーケティング部門のなかでも、いわゆる「リードを集めるための施策を打つ」機能の後工程となる。

 山田氏は「デマンドセンターは接点を作ってから案件化させる仕組みであり、そのパーツとして、電話によるインサイドセールスやマーケティングオートメーション(MA)がある」と整理する。端的にいえば、「リードを生み出してから、営業部門に渡すまで」ではなく、「リードを生み出してから、案件を創出するまで」のプロセスを担う組織だ。

 デマンドセンターの中核となるのが、インサイドセールスと呼ばれる専門部隊だ。インサイドセールスといえば、ともすればコールセンターの販売員や電話サポート担当と思われがちだが、その認識は改めたほうがよいかもしれない。

 海外で主流となっている「売る仕組み作りとしてのマーケティング」においては、インサイドセールスとはマーケティングの立場から商談化直前までのプロセスを電話やデジタルのチャネルでサポートするプロフェッショナルを指す。まさに、営業の前段階のスペシャリストなのだ。

 このデマンドセンターを作っていくには、当然ながら、マーケティング部門と営業部門の組織体制も変えなくてはならない。両者の間で通時的に全リードを管理しそのステータスを把握するためには、MAツールのようなITも使いこなす必要となる。

 そのため、デマンドセンター立ち上げは、マーケティング部門や営業部門だけでなく、経営層やIT部門なども巻き込んだ大きなプロジェクトとして考える必要がある。

 こんな大変なこと、いったいどんなポジションの人材なら指揮できるのだろうか。「海外の先進事例を見るとデマンドセンター立ち上げを推進するのは、CMOであることが多いです」と山田氏は説明する。

CMOは営業職のキャリアパス?

 デマンドセンター構築におけるCMOは、これまで意思疎通が困難だったマーケティング部門と営業部門の間を取り持ち、共通するゴールとそれに基づくKGIやKPIを設定し、さらにそれを管理するためのツール導入・運用を担う役割を負っている。

 CMOにはどんな資質が必要だろうか。いくらマーケティングの知識や経験が豊富でも、商談がクロージングに至るまでの過程に対するイメージを持っていないと営業とうまく連携できない。逆に、営業側にありがちな「すぐ売れるリード」至上主義でマーケティング目標を立てても、いたずらにマーケティング側の負担が増えるだけで機能しない。

 山田氏によると、海外では、商談をクロージングするフィールドセールス(外勤営業)経験者が、マーケティング経験を経てCMOに就く例が多いというが、それは「自分がやってきた属人的なやり方を、仕組み化して展開する」という問題意識が高いから、と説明する。

 単に自分の業務を切り分けるのではなく、「マーケティング活動を最適化させるために、どの程度の段階まで案件を成熟させたら、売上につながる商談ができるか」という視点でプロセスを整備し、ITをや営業部門と、部門を超えた連携を行い、ゴールを設計、機能する仕組みを構築することが求められる。

 こうしたことから、山田氏は「あえて言うなら、CMOは、必ずしもマーケティング部門出身である必要はありません。営業・マーケティング部門をまたいだ一気通貫の有機的な連携を実現させるためのリーダーとしては、キャリアパスの中で営業部門を経験してきた人材の方がふさわしいという考え方もあります」と語る。

 そもそも、CMOとは、マーケティング機能のトップであり、マーケティング部門のトップという意味ではない。つまり「売るための仕組み」を統括する最高役位と考えると、マーケティング部門内だけの経験ではなく、実際の営業活動、つまり「選び、買っていただく」ための活動経験が重要なのである。

 国内で「売るための仕組み作り」の経験があるCMOはほとんどいない。こうした場合、BtoBマーケティングに詳しいベンダーやコンサルタントを第三者としてプロジェクトに参加させることも選択肢の一つだという。客観的な視点が加わることで、部門間のボトルネックも見えやすくなるし、豊富な実績からひも解いた共通ゴールの設定やプロセス作りが進められるからだ。

 変革の原動力となるのは志を秘めた社内「マーケター」だ。それは、マーケティング部門のリーダーかもしれないし、営業部門から出てくる人かもしれない。マーケティングプロセスを変革するのは、必ずしも「マーケティング部門にいる人」でなくてもよいのだから。

 次回は、BtoBマーケターがビジネスで「売るための仕組み作り」を推進している実例を山田氏と共に探求していく。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/05/17 16:23 https://markezine.jp/article/detail/27748

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