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検索の弱点をチャットボットで克服 AIで地域の「お困りごと」の解決に挑む横浜市の取り組み

 昨年、「旦那の捨て方」への回答で話題になった横浜市のごみ分別案内システム。このユーモラスなシステムの裏側を支えるのが、「Repl-AI(レプルエーアイ)」である。Repl-AIはNTTドコモがインターメディアプランニング社と共同開発したチャットボット作成サービスだ。お堅いイメージのある市役所がユニークなサービスを提供するに至った経緯を横浜市の江口氏と宗像氏、NTTドコモの小林氏に聞いた。

AIチャットボットをごみ分別のデータベース検索に

横浜市 資源循環局 政策調整部 3R推進課 課長 江口洋人氏(写真中央)同 3R推進課 宗像献氏(写真左)NTTドコモ イノベーション統括部 クラウドソリューション担当 小林拓也氏(写真右)
横浜市 資源循環局 政策調整部 3R推進課 課長 江口洋人氏(写真中央)
同 3R推進課 宗像献氏(写真左)
NTTドコモ イノベーション統括部 クラウドソリューション担当 小林拓也氏(写真右)

――最初にそれぞれのお仕事内容について教えてください。

江口:我々が所属する3R推進課は、ごみの3R(Reduce、Reuse、Recycle)を進めていく組織です。広報や啓発の視点から、ごみを減らし、物を大事にし、繰り返し使ってもらうことを、様々な場面で市民の皆様に呼びかけていくことを仕事としています。

小林:私が所属しているイノベーション統括部は、研究開発の部署の一つです。しかし、技術の研究開発というよりも顧客視点での技術を活用した新規ビジネスの創出を行う組織であり、横浜市が採用したプログラミングなしでチャットボットを作成できるサービス「Repl-AI」も開発しています。

 横浜市と接点ができたのは、イノベーション統括部の中の企業連携担当を通じてでした。イノベーション統括部が持つ技術の紹介を兼ねて、横浜市に対していくつかの提案をしたところ、チャットボットの技術が使えそうとなったのです。

――横浜市がチャットボットを選んだのはなぜですか。

江口:横浜市には、民間事業者との連携を仲介する「共創フロント」という窓口があります。NTTドコモとの接点は、2016年8月にその窓口を通してAI活用に関する提案を頂いたのが最初になります。

 Repl-AIと何を組み合わせればいいかを考えた結果、ごみ分別辞書「MIctionary(ミクショナリー)」に登録されている20,000語超のデータベースと連携させればうまく使えるかもしれないとなり、活用に向けた取り組みに着手しました。

宗像:MIctionaryは、横浜市の資源循環局が採用しているごみの分別方法を検索できるシステムです。一般的な検索システムなので、登録している用語にヒットしないと機械的な回答しか返せません。言葉の揺らぎに弱く、間に「・」があるだけで、検索0件になってしまうこともありました。

今までのMIctionaryの弱い点

  1. 表記ゆれの吸収が苦手
  2. 検索結果に不要な情報まで表示される
  3. 検索疲れを起こしやすい(検索ボックスに入力 → 目的の情報を検索結果からスクロールして探す → ページ遷移してコンテンツを読む)
横浜市サイトのごみ分別ページ。右下のキャラをクリックするとRepl-AIを活用したチャットサービスが立ち上がる
横浜市サイトのごみ分別ページ
右下のキャラをクリックするとRepl-AIを活用したチャットの入力フォームが立ち上がる

江口:たとえば「ラック」と入力すると46件の結果が出ますが、この中には「ブラック」「スラックス」「リラックス」のように、一部の文字列が一致する結果も含まれていました。ユーザーにとっては、探している「棚」の分別方法を46件の中から探さないといけないのは不便です。柔軟な用語での検索に対応する仕組みを模索していたので、ドコモさんからの提案は渡りに船でした。

「やれるものはやろう」の組織風土が背中を押した

――ユーザーから見て違和感のある回答に対し、チャットボットが有効と考えたのでしょうか。

江口:その通りです。いかに簡単に、わかりやすくごみの分別に協力して頂ける形を作れるかと考えたことが大きいです。横浜市は毎年約14万人の転入者がいます。

 市には大学が28もあり、若い世代の転入者が多いという特徴があります。ごみの分別のルールは、自治体によって違うので、転入者には分別ルールを理解して頂かないといけませんが、若い人たちはごみの分別を家の中で意識していないことも多いのです。

 また、横浜市では、ごみ集積場所できちんと分別されていないごみは、啓発のためにシールを貼って残していくようにしています。結果、家の前や歩道にごみが残ることになり、地域としてはごみの取り残しに対して、皆が分別するよう、わかりやすく、しっかり広報などをしてほしいといった意見を頂いていたので、地域の「お困りごと」の解決に役立つのではないかとも思いました。

小林:チャットボットの活用例で多いのはゲームやFAQで、検索の代替としての活用は珍しいと思います。また、私自身が少し前は横浜市に住んでいて、取り残しで注意をされたことがあり、「自分ごと」として横浜市の悩みを実感できたこともありました。自治体がチャットボットを活用することも珍しいと思います。

江口:チャットボットには可能性を感じました。市民サービスの向上につながるため、取り組みへの行動は早かったのです。

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「旦那」の捨て方にまで回答を用意

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2018/03/28 10:00 https://markezine.jp/article/detail/27903

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